3分間に10回も…斎藤元彦知事が会見で連発「これまで申し上げてきた通り」に抱く危機感
兵庫県・斎藤元彦知事の21日の定例会見は異様な展開となった。公益通報者保護法に関する質問に斎藤知事が「これまで申し上げてきた通り」という答弁を連発し、それ以上回答がなされない場面が続出したのだ。この事態に元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は「説明責任の放棄ではないか」と指摘する。

元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士が指摘
兵庫県・斎藤元彦知事の21日の定例会見は異様な展開となった。公益通報者保護法に関する質問に斎藤知事が「これまで申し上げてきた通り」という答弁を連発し、それ以上回答がなされない場面が続出したのだ。この事態に元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は「説明責任の放棄ではないか」と指摘する。
それは3分たらずの間に起きた。この日の斎藤知事会見で最後の質問者となった著述家・菅野完氏が、公益通報者保護法について質問した時の出来事だ。
2024年3月、斎藤知事らは自らの疑惑が報道機関など県庁外部に告発されたと知ると、法が防止しているはずの「通報者探し」を実施。停職処分となった元県民局長は自殺した。この通報対応は県第三者調査委員会によって違法と認定されたが、斎藤知事は昨年3月、法が定める「通報者探しの防止」の対象に元県民局長が行った外部通報は含まれず「内部通報に限定されるという考え方もあります」と発言。第三者委の結論を受け入れないまま現在に至っている。
そこで菅野氏は、この斎藤知事発言について「先日、県当局に問い合わせた」と明かした。そして、県側から「知事の発言は『そういう考え方があるという事実』を紹介したもの」という回答があったとして、「それで間違いないですか?」と質問。すると斎藤知事はこう答えた。
「あの、これまで申し上げてきた通りですね」
「えっ?」。一瞬、耳を疑った。この日の会見でこの点を質問した記者は他にいない。そもそもこの質問は「新たに」県当局に問い合わせた結果を「初めて」確認するものなので、斎藤知事が質問より先に「既に回答を申し上げた」という事態はありえないはずだ。そこで菅野氏は「いや知事、何もその点については申し上げておられません」と指摘。すると斎藤知事はこう答えた。
「あの、これまで申し上げてきた通りですね」
同じ答弁の繰り返しだ。そこで菅野氏が、「知事発言に訂正の必要はないという考えか」を質しても斎藤知事は「その点もこれまで申し上げてきた通りですね」と答弁。「会見の発言の内容は訂正する必要ないということですね」と重ねて聞かれると、斎藤知事は「その点も、これまで申し上げ……」と述べ始め、菅野氏にこう指摘された。
「その点『も』って、僕、それしか聞いてない。その点『は』です」
しかし、これに対する斎藤知事の答えも「これまで申し上げてきた通りですね」。これに対して「そうだったらそうだって答えてくださいよ」と促されても、答えはやはり「これまで申し上げてきた……」だった。
定型文の朗読に記者が制止「ありがとうございました。結構です」
その後も斎藤知事が質問に「これまで申し上げてきた通り」と答える場面が何回か続く。最後、一連の問題を「最終的には司法で解決される問題」とする斎藤知事に対して「その場合の(裁判の)原告は誰になるんでしょう?」という質問が飛んだ。これに対して斎藤知事が行ったのは「この問題については最終的には司法が判断すべきです。はい」という答えになっていない答弁。そこで「その司法の判断をあおぐ裁判の『原告は誰になるんですか』って聞いてるんです」と繰り返し問われると、斎藤知事は手元に目を落とし、資料を確認するような仕草を見せた。だが、その末に出された答弁は次の通りだった。
「あの、これまで申し上げてきた通り」
ここまでのやり取りの所要時間は3分弱。この間に斎藤知事が「これまで申し上げてきた通り」という答弁をした回数は10回だった。単純計算すると約18秒に1回の頻度で「これまで申し上げてきた通り」という言葉が発せられたことになる。これが記者会見のあるべき姿なのか。
この日の会見では、竹内英明元県議が亡くなってから今月18日で1年になったことを受け、「文書問題に関する対応が発端となって竹内元県議が命を落とすことになったと思うことはないか」という質問もなされた。斎藤知事は「あの、まあ、竹内県議が亡くなられたことについては大変残念で改めてお悔やみを申し上げたいという風には思っています」と述べた後、おもむろに手元の資料を凝視。「文書問題に関しましてはこれまで申し上げた通り……」と定型文を朗読するような姿勢を見せ始め、質問者が「いいです。いいです。ありがとうございました。結構です」と制止する一幕もあった。
斎藤知事会見での問いと答えの食い違いは回を追うごとに深刻となり、ついに多くの質問に「これまで申し上げた通り」という言葉しか返ってこなくなった。このままでは、知事が答えたくない質問は事実上すべて「回答拒否」にされかねない。だが、それは民主主義の前提である説明責任の放棄ではないか。
この事態を放置するのは危険だ。その危機感は会見ごとに増している。
□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。24月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。
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