「世界に圧倒的に負けている」英国王室の前で踊った上西隆史が痛感した日本と世界の決定的な差

「エアダンス(鉄棒ダンス)」のAIRFOOTWORKS(エアフットワークス、以下AFW)が昨年11月下旬、英国王室主催のパフォーマンスイベント「Royal Variety Performance 2025」に招待され、出演していた。同公演での日本人出演は14年ぶりで、メンバーはウィリアム皇太子との謁見も果たした。彼らによる唯一無二のパフォーマンスが海外でも評価されている証しであり、東京大卒のリーダー・上西隆史(じょうにし・たかし)がENCOUNTに、24年から経験した「世界挑戦」と今後のビジョンを語った。

世界進出した「鉄棒ダンス」について語った上西隆史【写真:AIRFOOTWORKS】
世界進出した「鉄棒ダンス」について語った上西隆史【写真:AIRFOOTWORKS】

AIRFOOTWORKS・上西隆史インタビュー、「鉄棒ダンス」で世界を驚かせたグループの次なる挑戦

「エアダンス(鉄棒ダンス)」のAIRFOOTWORKS(エアフットワークス、以下AFW)が昨年11月下旬、英国王室主催のパフォーマンスイベント「Royal Variety Performance 2025」に招待され、出演していた。同公演での日本人出演は14年ぶりで、メンバーはウィリアム皇太子との謁見も果たした。彼らによる唯一無二のパフォーマンスが海外でも評価されている証しであり、東京大卒のリーダー・上西隆史(じょうにし・たかし)がENCOUNTに、24年から経験した「世界挑戦」と今後のビジョンを語った。(取材・文=よもつ)

 空中を歩いているかのように、重力を感じさせない鉄棒ダンス。このパフォーマンスを生み出したAFWは、24年5月27日放送の日本テレビ系『THE DANCE DAY』に出演し、審査員、観客、視聴者に大きなインパクトと感動をもたらした。あれから1年半が経ち、彼らは英国王室の前で踊ったのだ。招かれたのは「Royal Variety Performance」。1912年から続く権威あるチャリティー・パフォーマンスイベントだ。音楽、ダンス、演劇、サーカスなど多彩な分野のアーティストが選ばれ、これまでビートルズ、エルトン・ジョン、エド・シーランらそうそうたる面々も出演してきた。そんな大舞台への出演オファーがAFWに届いたのは、昨年5月だった。

「AFWのホームページ問い合わせフォームに直接メールが来ました。『こういうイベントがあるけど興味ない?』という内容でした。メールのリンクを開いて詳細を見て『これはすごいイベントだ』と分かり、お受けしました。おそらく2024年に出場した『America’s Got Talent』を見て知ってくれたのではと思います」

 公演は11月下旬に行われた。グループはその直前にフランスのテレビ番組『France’s Got Talent』に出演。準決勝が終わり決勝進出を決めた翌日に、英国に向かった。

「チャリティーイベントということもあり、航空代が出るかどうかという問題がありました。フランスからなら主催側が出してくれることになったので、フランスでの結果次第で飛行機代がどうなるかという状態でした(笑)」

 会場は、150年以上の歴史を持つロイヤル・アルバート・ホール。キャパシティは約5000人と、客席数は日本武道館よりも少ないが、上西は「今まで見てきた中で最も立派で、格式の高さがあふれ出ていました。ステージ上からの客席の光景は壮観でした」と振り返る。リハーサルは1回のみ。1時間もないタイトなスケジュールだった。

「リハーサルでは床が想定以上に滑るという事態も発覚しました。床が滑る場合、キューブ(鉄棒)にゴムを付けて対応することもありますが、今回はそれをしてもあまり意味がないと判断したので、動き方を変えました。でも、その変更を確認するリハはできなかったので、ぶっつけ本番で挑みました」

 照明などの演出を担当した現地スタッフ陣との打ち合わせ時間も十分にはなかった。だが、演じ終わって「歴史あるイベントのすごさ」を感じたという。

「打ち合わせが不十分だと、照明や背景のLEDの動きが激しくてダンスとけんかすることがあるんです。でも、今回は(演出が)シンプルだけど、きちんとダンスとも合い、エフェクトとして機能していました。照明もスタイリッシュでありながら、会場の格調高い雰囲気を壊さない。伝統とテック(テクノロジー)の調和の取り方が素晴らしかった。『この公演がこれまで伝統的なものから現代的なものまで扱ってきたからこそだ』と感じました。本番は観客も盛り上がっていて、アフターパーティーでも多くの人から『最高だった』と声をかけられました」

 公演にはウィリアム皇太子とキャサリン妃が臨席。アフターパーティーでウィリアム皇太子に謁見した。

「パフォーマンス後に客席とロイヤルファミリーボックスに向けて礼をします。その時は、遠くて王室の方の反応は見えなかったのですが、オンエアされた映像を見たら、ウィリアム皇太子が力強く拍手をしてくれていました。謁見では握手するくらいかと思ったら、『体力的に大変でしょう』とか『体操選手だったの』などと質問していただき、数分ほど話しました。『体の強さや技のすごさも大事だけど、一番大切なことは音楽を聞いてその世界観をどう表現していくか』ということを英語でお伝えしました」

ウイリアム皇太子(右)に謁見したAIRFOOTWORKS。左から4人目が上西隆史【写真:ITV / Lifted Entertainment提供】
ウイリアム皇太子(右)に謁見したAIRFOOTWORKS。左から4人目が上西隆史【写真:ITV / Lifted Entertainment提供】

評価されて感じた「対応力も必要」

 大きな経験をしたAFWは、24年には『America’s Got Talent』に挑戦し、ゴールデンブザー賞を獲得して決勝まで進出。翌年にはその作品が「歴代最高のゴールデンブザー賞」の1つに選出された。彼らのパフォーマンスが、世界で評価されている証しだ。だからこそ、「世界と日本の差」も感じている。

「技術や演出という点では、日本はヨーロッパや北米に比べて圧倒的に負けています。それは環境の問題も大きい。世界は、シルク・ドゥ・ソレイユのようにサーカスの文化があるけど、日本にはありません。僕たちはそのような国の人達から『次世代のサーカス』と言われることもあるのですが、それはただ『目新しい』だけで終わらず、振り付け構成や演出、作品の内容、完成度が彼らの目からみてもクオリティーが高く、かつオリジナリティーが評価されているからだと思います」

 その状況下、AFWが評価されている理由について、上西は「オリジナリティー(独創性)」「完成度の高さ」「作品性」と自己分析した。

「オリジナリティーは大事ですが、目新しいだけではいけない。チーム立ち上げ初期の頃にSNSでパフォーマンス映像がバズった時に『目新しさだけで行けるところはたかが知れている。賞味期限付きのことしかできなくなる』と直感的に感じました。そこで自分が大事にするべきものは、完成度の高さやアーティストとしての作品性だなと思い立ち、新しさだけでなくショーとしてのメッセージ性、作品性を突き詰めました。その結果、世界の人々にも評価してもらえました」

 そして、「自身の表現したい世界を突き通すことはもちろん大事なのですが、その上で現場での対応力も必要です」と実感を込めた。

「例えば、作品で映像やレーザーなどの特殊な演出を用いる場合、それらの設定値は日本、アメリカ、ヨーロッパなど地域によって違ってくるので、パフォーマンス以外の専門的な知識も知っておくことが重要ですし、専門的な内容は通訳を介さず直接話さないと伝達ミスにもつながるので英語力は必須です。世界で戦うには『変えないこと』と『対応力』が求められます」

 この流れでAFWにはさらなるグローバルな活躍が期待されるが、上西は「今年は国内での活動に力を入れたいです」と言った。

「世界で戦ったからこそ、そこで培ったスキルやパフォーマンスを日本の一般の方にもっと見てほしいです。そして、『世界に挑戦したい』と思っている日本のパフォーマーにも、実際に戦ってきた自分たちの経験、リアルな体験を伝えていきたいです」

 26年は始まったばかり。上西が率いるAFWは、まずは国内で「エアダンス」への注目度を高めることに重きを置いている。その活動自体にも、世界は注目している。

□AIRFOOTWORKS(エアフットワークス)2018年結成のダンスパフォーマンスグループ。世界初の鉄棒を使ったエアダンスで注目を集める。日本テレビ系『THE DANCE DAY』には、24年から2年連続出演。海外番組出演も24年からで、同年『America’s Got Talent』でゴールデンブザー賞を獲得した。昨年は『France’s Got Talent』で決勝進出、イタリアのバラエティー番組では鉄棒の回転技「シンクロ合体前回り」で38周を記録。ギネス世界記録保持者となった。

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