「お守り余ってしまった」千葉の神社、異例の“正直投稿”に反響 その裏にある「潔斎」と「手作り」の真心

初詣シーズンでにぎわう神社・仏閣。その裏側で、SNSで必死に呼びかけたにもかかわらず「お守りが余ってしまった」と嘆く地方の神社が話題になっている。「【悲報】」と自虐する投稿には、地方神社ならではの切実な事情があった。宮司に詳しく話を聞いた。

約800年の伝統を誇る千葉・吉保八幡神社【写真:X(@kphm829)より】
約800年の伝統を誇る千葉・吉保八幡神社【写真:X(@kphm829)より】

投稿をきっかけに、千葉市内から足を運んだ参拝客も

 初詣シーズンでにぎわう神社・仏閣。その裏側で、SNSで必死に呼びかけたにもかかわらず「お守りが余ってしまった」と嘆く地方の神社が話題になっている。「【悲報】」と自虐する投稿には、地方神社ならではの切実な事情があった。宮司に詳しく話を聞いた。

 千葉・鴨川市、長狭(ながさ)地域の守護神として約800年の伝統を誇る「吉保(きっぽ)八幡神社」。同神社の公式X(@kphm829)が投稿した「お正月にたーくさんお頒ちできると思ってお作りしたお守りたち。こーんなに余りました(笑)」という報告が、26万件以上のインプレッションを集めた。

「令和8年用(※現在の奉仕期間分)として、当社の御札やお守りはすべて手作りしております。私がこの神社にご奉仕を始めてからまだ1年余り。初めての年越しだったので、どれくらい準備すれば良いか分からず、『たくさん作ろう!』と意気込んで用意しました。結果、作ったよりは余ってしまったので……(笑)」

 そう語るのは、同社の宮司だ。実はこの宮司、以前は東京の神社に奉仕していたが、2016年に一度職を離れた経歴を持つ。その後、前任の宮司が90歳と高齢で後継者を探していた縁から、この地に赴任した。

「余ってしまった」と明るく語る宮司だが、その制作過程は極めて厳格だ。

 10月から始まった準備期間中、宮司はほぼ毎日、早朝から水をかぶって心身を清める「潔斎(けっさい)」を行い、お守りを奉製した。

 同社の授与品は御朱印のほか、「的板(まとい)守」や、カラスウリの種を内符とする「玉章(たまずさ)守り」があり、お守りも含めて「値段」は決めていない。

「授与品は神聖なものであり売り買いするものではありません。神社に対してお志(初穂料)をお納めいただいた方に、お持ち帰りいただくスタイルです」

 そのため、郵送などは一切行っていない。参拝者が自ら足を運び、神職と対面し、封筒に初穂料を入れて納める。この「基本に忠実」な姿勢を貫く一方で、SNSではあえて「柔らかい表現」を心がけているという。

 2日には、「吉保八幡神社から朗報です!! 正月なのに誰もいません(笑) 祈りたい放題です! 神主はいますので、話しかけて下さい(寂しいので)」と閑散としている境内の写真を添えた投稿も。

「神社のツイートって、どうしても堅くなりがち。でも、少し砕けた表現にすることで、より多くの方に神社の存在を知っていただける。案の定、多くの反応をいただけたのは良かったです」と狙いを語った。

 一部からは「神社が軽い表現を使うのはけしからん」という声も届くというが、宮司は「投稿だけでなく、ホームページや日々の活動を見ていただければ、私たちが伝統を大切にしていることは伝わるはず」と、揺るぎない信念をのぞかせた。

 今回の投稿に対し、ネット上では「潔斎して作られた貴重なお守り、ぜひ受けに行きたい」「郵送をせず、文化を守る姿勢に頭が下がる」「なんだかとても素敵な御守りに感じた」と、多くの温かい声が寄せられた。実際に投稿をきっかけに、千葉市内からわざわざ足を運んだ参拝客もいたという。

「一人いらっしゃいました。千葉市内の方みたいですよ。喜んで帰っていただけたので良かったです」

 丹精込めて作られ、余ってしまったお守りたちは、来年に持ち越されることはなく、お焚き上げされる運命にある。効率化やビジネスライクな対応が求められる現代において、「手作り」「対面」「価格を決めない」という伝統を守り続ける吉保八幡神社。SNSでの“悲報”は、そんな古き良き神社の真心を、多くの人の心へ届けるきっかけとなったようだ。

次のページへ (2/2) 【写真】神職がほぼ毎日朝を水をかぶって潔斎して作ったお守り
1 2
あなたの“気になる”を教えてください