プロレス界きっての怪力男はギャップが魅力の愛妻家 「人生は祭り」頂点に王手【連載vol.9】

全日本プロレス「2020チャンピオン・カーニバル(CC)」優勝決定戦(5日、東京・後楽園ホール)を、宮原健斗と争うゼウス。7年連続7回目の出場で、初優勝を狙っている。

笑ったゼウス。優しい人柄が丸出し【撮影:柴田惣一】
笑ったゼウス。優しい人柄が丸出し【撮影:柴田惣一】

毎週金曜午後8時更新「柴田惣一のプロレスワンダーランド」

 全日本プロレス「2020チャンピオン・カーニバル(CC)」優勝決定戦(5日、東京・後楽園ホール)を、宮原健斗と争うゼウス。7年連続7回目の出場で、初優勝を狙っている。

 4年前にも決勝戦にコマを進めたが、大日本プロレスの関本大介に惜敗。超特大優勝トロフィーを目の前にして悔しい思いをしている。3冠ヘビー級王座は2018年に腰に巻いており、ゼウスにとってCC制覇は悲願となる。

 いかにもレスラーらしい風貌のゼウスは、大阪市生野区の出身。4000グラムで誕生し、すくすくと成長した。力も強く大柄で、学生時代はケンカに明け暮れていた。素行不良で2度も退学処分を受けたが、トレーニングに集中することで、新たな道を進みだした。

 ボディービル、ボクシングを経て「元々、やりたかった」プロレスの世界に、24歳にして飛び込み、15年に全日本プロレスに正式入団。持ち前のパワーを発揮し、すぐにトップ戦線に躍り出た。

 ボクシングで一世を風びした亀田興毅似の顔に、関西弁もあって、一時期「亀田ゼウス」と呼ばれていた。その迫力は誰もかなわない。

 実際、リング上はもちろん、黙っているゼウスにも怖いイメージがあり近寄りがたい。ところが、笑うと人柄がにじみ出る。全力の笑顔なのだ。そして口を開けば、優しさ満点。明るく、礼儀正しく、腰も低い。先輩も立てる。彼ほどの好人物はそうはいない。

 気配りもできる。少しでも、不安がありそうだと「どうかしました?」と声をかけてくれる。一度、話したケガのことをきっちりと覚えていて、次には「その後、いかがですか?」と心配してくれる。

 手首を痛めた知人が「もう、フライパンも曲げられない」と、かつてゼウスが得意とし、封印したフライパン曲げにひっかけて愚痴ったことがある。するとゼウスは、数日後のテレビマッチで久しぶりにフライパン曲げを披露。カメラに向かって「やっときました」と、言わんばかりにニッコリしたこともある。

 愛妻家で有名なゼウス。リングコスチュームにスワロフスキーの飾りをつけてくれるなど内助の功を発揮する素敵な奥様はもちろん、経営するジムの仲間やファンのことも本当に大事にしている。

 人間にだけ優しいのではない。弱った蝶々を保護して「エンジェル」と名付け、飼育方法を調べて傷を治したこともある。

 リング上とのギャップが激しいが、そこがたまらない魅力なのだ。

「人生は祭り」とゼウスは言う。今年はコロナ禍で、数多くの全国の祭りが中止となったが、ゼウスの祭りは絶賛開催中だ。

次のページへ (2/2) 【画像】3冠ヘビー王者時代のゼウス
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