「あのやり方は日本人じゃない」自動車盗難、生々しい現場の痕跡…犯人と鉢合わせは命の危険「指示役は相当怖い」
自動車盗難の撲滅を訴え続ける2人の民間人の活動が、少しずつ国を動かし始めている。「車両盗難を厳罰化にする会」代表で金属部品製造会社「K's machine factory」を経営するKUNさんと、ホンダカーズ野崎の松本正美店長だ。2024年8月、松本さんは店舗から一夜にして11台を盗まれた。事件はSNSで拡散され、これをきっかけにKUNさんと出会う。2人は国会議員への要望書提出や法改正を求める活動を展開。昨年12月には国民民主党がヤード規制法案(盗難自動車等の処分の防止に関する法律案)を国会に提出するなど、政治に変化の兆しが見えている。盗難阻止の最前線に立つ2人が、新春対談で被害の実態と問題の核心を語り尽くした。

「盗難はこんなに多いんだ」被害に遭って分かった実情
自動車盗難の撲滅を訴え続ける2人の民間人の活動が、少しずつ国を動かし始めている。「車両盗難を厳罰化にする会」代表で金属部品製造会社「K’s machine factory」を経営するKUNさんと、ホンダカーズ野崎の松本正美店長だ。2024年8月、松本さんは店舗から一夜にして11台を盗まれた。事件はSNSで拡散され、これをきっかけにKUNさんと出会う。2人は国会議員への要望書提出や法改正を求める活動を展開。昨年12月には国民民主党がヤード規制法案(盗難自動車等の処分の防止に関する法律案)を国会に提出するなど、政治に変化の兆しが見えている。盗難阻止の最前線に立つ2人が、新春対談で被害の実態と問題の核心を語り尽くした。
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KUN代表「松本店長と知り合ったきっかけは、盗難被害の投稿を見たことです。すごくお忙しい状況だろうとは思ったんですけど、まずは電話をさせてもらいました」
松本店長「SNSでメッセージをもらって、投稿をシェアしてくれたのが最初でしたね」
KUN「厳罰化の活動の話をして、『こういう運動をしているので、何か協力できることはありませんか』『国に対して言いたいことはありませんか』と話しました」
松本「私もSNSはやっていましたけど、そういう活動をしているのは知らなかった。初めて盗難に遭って、KUNさんにシェアしてもらって結構見てもらえたんです。うちの投稿もXで50万回くらいリポストされたかな。YouTubeよりXのほうが反響は大きかった。そこからどんどん拡散して、いろんな人が協力してくれて、すべての車が見つかっていきました」
KUN「昨年9月に国民民主党の浜口誠議員のところへ行く予定があったので、『ご一緒しませんか』と松本店長に声をかけました。自動車盗難対策要望書と署名を提出し、松本店長から盗難被害についての現状を伝えていただきました」
松本「法制局にも同行しましたね」
KUN「私が松本店長に声をかけられたのは、『F1店長』(松本さんのニックネーム)という存在が大きかった。クルマ好きでエンジンの設計者としてF1にも関わってこられた方なので連絡しやすいと感じました。私のいとこが同じ時期にホンダの研究所でF1を担当していて松本さんのことも知っていました。松本さんが無限で、いとこがホンダで」
松本「被害に遭って、盗難はこんなに多いんだというのを初めて知りました。車が盗まれているというニュースをどこか他人事として見ていたところがあった。うちの事件の2週間前にはホンダの沼田南でも盗難があった。『これはやばいな』ということで、うちも鍵の管理を見直したんです。それまでは鍵を壁にかけて管理していたんですけど、毎日大型金庫に鍵をしまうようにしました。まさかその直後にうちがやられるとは思っていなかった。金庫も開けるんだっていうのはちょっと想定外でしたよね。犯人たちは2時間ぐらい店内にいたわけで、それを許してしまったのは会社の体制。自宅など他の場所には全部セキュリティーを入れていたのに肝心の会社が一番手薄だった」
KUN「防犯カメラはついていたんですよね」
松本「8か所ぐらいについていました。一番重要な事務所のカメラは線を切られて映っていなかったけど、高い位置にあるカメラはどうしようもなかったからそこには映っていた。犯人の動きや逃走方向が解析できたのはよかったですね」
KUN「鍵を金庫に入れていたことで犯行に2時間かかった」
松本「金庫がなければもっと簡単にやられていたはずです」
KUN「松本店長の事件の前に成田の有料パーキングで大量盗難があったじゃないですか。販売店、それもディーラーから盗むのかとまずそこに驚きました。金庫を破って鍵を出してという手口も分かってきて、これは普通の自動車窃盗犯とは違うなという印象でした。もし現場で鉢合わせしたら最悪殺されることもあるんじゃないかと思いました。大勢で来ている犯人グループに、1人や2人で遭遇したら危険度は相当高い。そういう危機感を持ちましたね。例えば、犯人が外国人なら傷害事件を起こしても今の流れだと重い罪にならないのではないか。最悪、捕まる前に自国へ逃げてしまえば終わりではないか。本当に恐ろしい時代になったなと感じました」

「これ以上は勘弁して」 質問に口を閉ざしたベトナム人
松本「うちの場合も現場の言葉がベトナム語だと分かって、実際ベトナム人が7人捕まりました。国外に逃亡されたら終わりだよねという話もその頃よくしていました。同時期に技能実習生の問題や在留期限切れの問題も取り上げられていましたし、ベトナム人コミュニティーの中で仲間を募集しているという話も耳に入ってきました」
KUN「茨城、栃木、群馬あたりは特に外国人が多いですからね」
松本「外国人労働者の問題なんだなと実感しました。成田の業者さんは、『うちも盗まれたんで』と言っていきなり店まで激励に来てくれたんです。同じ被害に遭った者同士で情報交換をしたくても、相手にしてもらえないこともあった。そういう意味でもKUNさんのような方が情報を集めたり、発信したりしているのは、被害者側からするとすごく心強かったですね」
KUN「ディーラーは1か所に車が集まっているので人数をそろえて押しかければ効率よく盗めると考えたのだろうな、とは思いました。ただ、松本店長のところはプロの窃盗団ではないなという印象も受けました。本当にプロなら一発必中で、なるべく静かに、痕跡を残さずにやるはずです。あのやり方は日本人じゃないだろうなと感じました」
松本「その後、電線ケーブル窃盗とか梨泥棒とか、複数人で入って荒らすタイプの犯罪がいろんな分野で増えましたよね。調べていくとヤードの問題、外国人労働者の問題、不法就労、技能実習制度の問題、そういったものが複雑に絡み合って、こういう事件が起きていることが分かってきた。知り合いの整備工場で働くベトナム人からは、『たぶんSNSで人を集めてやっている。大元の指示役は相当怖い人で誰も逆らえない』という話も聞きました。もっと詳しく聞こうとしたら、『これ以上は自分の身に危険が及ぶかもしれないので勘弁してほしい』と言われてしまって。連帯責任みたいなのがあって、今回の事件でも被告が逮捕後に、取り調べに対して結構しゃべっちゃったじゃないですか。そうすると家族に危害が及ぶリスクがある。ベトナム人って小柄で温厚な人が多くて、本来は暴力的なイメージはあまりない。でも、元締めが怖い人だと周囲も巻き込まれてしまう。多くの人は家族のため、恋人のためなど、真面目に働くつもりで日本に来ているはずなんです。それが技能実習制度の問題で逃げ出したりしてしまう。農業系の知人も『(技能実習生は)突然いなくなる、帰ってこない』と嘆いていた」

税関の問題点「出ていくものには甘い」 不起訴に警察のぼやき
KUN「自動車盗難は厳罰化とヤードを規制するしかない。昨年12月に国民民主党がヤード規制法案を国会に提出したのは大きな前進となりました」
松本「知り合いが2000万円の新車トラックを盗まれて必死で探して茨城のヤードを巡っていたら怖い人たちに追い回されて家に帰れなくなった。俺も行こうかと思ったけど、『絶対やめたほうがいい』と止められて。ここから先は警察の仕事だと。ヤードで盗難車や部品を積み込んで、なぜそれがそのまま輸出されてしまうのか。通関の問題もあって、入ってくるものには厳しいけど、出ていくものには甘いという証言を同級生からも聞きました。警察も『一生懸命捕まえても不起訴なんだよな』ってぼやいてた。いろんな問題が絡み合った結果が今の盗難の多発という現実なんだと思います。だから政治家のところに行って意見を伝えるのも1つの方法だと思います。ただ、車の盗難で執行される刑期について、『最低1年だよね』とおっしゃっていて温度差があることも分かった。情報が集まるほど課題は山積みだなという実感が強くなっています」
KUN「一番の問題は法律が時代に全く追いついていない。私自身、ベトナム人やカンボジア人の友人や仕事仲間もいて、外国人だから悪いなんて全く思っていません。ただ、現にこうした状況がある以上、今後日本に入ってくる人たちの中には、最初から犯罪目的の人間もいると考えざるを得ない。技能実習制度が長く続く中で、『日本は甘いからすぐ逃げ出しても大丈夫』『捕まる前に出国してしまえばいい』と考える人も一定数出てきている。犯罪を犯しても日本の法律できちんと罰することができるのか。ここが大きな問題だと思います。技能実習制度は構造的な問題もある。多額の借金を背負って日本に来て、最低賃金で働かされる。借金の額は同じなのに、収入は地域によって大きく違う。そうすると生活が回らず、職場から逃げ出して犯罪に手を染める人間も出てくる。この悪循環を断ち切らない限り、同じような事件は今後も繰り返されると思います」
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