『あんぱん』でつかんだ成長 俳優8年目の鳴海唯、初ドラマヒロインで開く“新たな扉”
俳優の鳴海唯が、1月6日からスタートするドラマ10『テミスの不確かな法廷』(全8回。NHK総合 火曜午後10時)で自身初となるドラマヒロインを務める。念願だった弁護士役。連続テレビ小説『あんぱん』に出演するなど飛躍の2025年を経て、新たなステージでの活躍を誓う胸中に迫った。

『テミスの不確かな法廷』で弁護士役…オファーに「ガッツポーズ」
俳優の鳴海唯が、1月6日からスタートするドラマ10『テミスの不確かな法廷』(全8回。NHK総合 火曜午後10時)で自身初となるドラマヒロインを務める。念願だった弁護士役。連続テレビ小説『あんぱん』に出演するなど飛躍の2025年を経て、新たなステージでの活躍を誓う胸中に迫った。(取材・文=小田智史)
本作は、新聞記者である直島翔氏が描く異色のリーガルミステリー。俳優・松山ケンイチ演じる発達障害を抱える裁判官・安堂清春をはじめ、裁判所職員、検事、弁護士??それぞれが真実を求めてぶつかり合う緊迫した法廷の攻防と、時にかみ合わない会話をコミカルに描き、“普通”とは何か、“正義”とは何かを問いかける。
鳴海が演じるのは、ある事件をきっかけに、東京の大手法律事務所を辞めて前橋にやってきた弁護士・小野崎乃亜。刑事事件において、起訴有罪率99.9%を誇る検察に弁護士の勝ち目はないが、安堂(松山)の特性をうまく利用すれば突破口が開けるかもしれないと近づくも、安堂と向き合ううちに、彼の抱える苦悩や孤独に触れ、いつしか自身も思わぬ影響を受けていく。
2019年に連続テレビ小説『なつぞら』でドラマデビューを果たしている鳴海。弁護士役は、俳優界に飛び込んだ当時からの夢の一つだったという。
「このお仕事を始めた時から、刑事役と弁護士役はきっと難しい分、やりがいがあるだろうなと思っていたので挑戦してみたかったんです。今回、念願がかないました」
弁護士役が決まった瞬間は、「それはもうガッツポーズですよ(笑)」。制作統括の神林伸太郎氏によれば、フジテレビ系ドラマ『時をかけるな、恋人たち』(2023年)の時から鳴海の演技に注目し、今回のオファーに至ったというが、喜びと同時に身が引き締まる思いもあったと明かす。
「『やっと来たーー!』という感じです(笑)。一方で、大変だということはイメージしていたとはいえ、いざ実際に直面してみると、ハードルの高い役だとも感じています。難しい言葉を流暢(りゅうちょう)に喋ったり、普段取り組んでいるお芝居とはまた全く違う脳みそを使うので。自分の中で“新しい扉”を開けて取り組んでいます」

『あんぱん』で学んだ“ゼロ”からの役作り
自称“ダメな弁護士”の小野崎と自身の共通点はあるのか。2人を繋ぐ一つのキーワードは、「正義感」だ。
「東京の大手法律事務所である事件をきっかけに心がポキっと折れて、地元の前橋に戻ってくるんですけど、本当はすごく繊細な女性なんだろうなと思っています。猪突猛進、正義感が強いところ、大人になりきれていない部分も含めて、自分に通ずるものがある気がします。小野崎は、(松山演じる)安堂の特性を利用して、自分の刑事裁判をうまく持っていこうとするしたたかさがあります。でも、私は逆にそういうものに対して『蓋をしなきゃ』と思っているので(笑)。人のことを煽ったりする部分が前面に出ている感じは小野崎とは違うのかなと感じています」
鳴海の根底にある「正義感」――。それは、「自分に対してうそをつきたくない」思いだという。
「誰かに対しての正義感というよりも、曲がったことが嫌いで、真っ直ぐなことをしたいという思いが人より少し強いところがあります。でも、それが故にうまくやれないというか、大人になりきれなくて時に煩わしく感じてしまったり、自己嫌悪に陥ってしまうことも多々あります(苦笑)。ただ、弁護士は正義感が強くないと務まらない仕事だと思うので、この作品はそんな自分を肯定してくれるような気がしてそこに救われています」
鳴海と言えば、2025年は連続テレビ小説『あんぱん』で戦後、女性初の女性記者として俳優・今田美桜が演じたのぶと同期入社の新人新聞記者・小田琴子を好演した。6年ぶり2回目となる朝ドラの経験はどのように生きているのか。
「2025年は『地震のあとで』(4月放送)から始まって、『あんぱん』(鳴海が演じた小田琴子は6月30日放送回から登場)があり、今年こうして再びNHKに戻ってくることができるのはすごく光栄です。『あんぱん』の琴子は高知弁の役で、時代背景も戦後だったので、必然的に勉強しないといけないことがたくさんありました。『あんぱん』を通して初めて、自分の中には全くないものを作り上げていく作業を学びました。その準備の仕方は、今回の『テミスの不確かな法廷』で弁護士という全く自分の中にはないものを一から勉強する上で生きています」

2026年も「走り続けたい」
事前準備という意味では、鳴海は2025年から自身が演じる役ごとにノートをつけている。取材時にはノートを持参し、学んだものをかみ砕き、自分の言葉で伝えようとする姿が印象的だ。
「取材をお受けする時は基本的に自分の言葉で喋れたらいいなと思って、お守りのように持っているだけです(笑)。作品に関わらせていただく中で、自分が発する言葉の責任感をより感じるようになりました。できる限り丁寧な言葉選びをして、自分の思いをちゃんと言語化できたらいいなと思いながら取り組んでいます。間違いのないように書いたりしているんですけど、それでもやっぱり、『もう少し違う言葉選びをすれば良かったな』とか反省する日々です(苦笑)」
怒とうの2025年は、どのような1年だったのか。鳴海は「早く感じましたし、とにかく必死でした(苦笑)」と振り返る。
「『あんぱん』をはじめ、ありがたいことにずっと作品に関わらせていただいていた年でした。期間が空くことがなく、ずっとカメラの前に立っているのは初めての経験で、よく聞く『気づいたら1年が終わっていた』という感覚を、初めて少し味わえた気がします。物理的にも、お仕事の量が今までで一番多かったので、何かが成長できてたらいいなと思います」
『あんぱん』期間中、“朝ドラ女優”という肩書きには「今の段階ではまだ言えないです」と苦笑いしていた鳴海。そこから半年の月日が経った今、改めて手ごたえを聞いてみた。
「どうでしょう(苦笑)。でも、確実に人の目に触れる機会が多くなるきっかけになっているはずです。『あんぱん』という作品が本当に素晴らしかった。話題になって評価される作品に出演するということは、確実に自分のステップアップに繋がっていると思います。ただ、“朝ドラ女優”と呼ぶには……まだまだかな(笑)。もし皆さんに言っていただけたらありがたいです」
俳優歴8年目を迎えた2026年には、どのようなビジョンを描いているのか。
「2025年はずっと走っていたような1年だった気がします。このまま止まらず、走り続けたいと思います。ただ、作品を重ねるにつれて、初心に戻って基礎を学び直すというか、一つひとつの作品に対して誠実であることが次の仕事に繋がっていくと思うので、その気持ちを忘れず、いつも通り、私らしく取り組んでいくつもりです」
鳴海唯――。その名前と演技は、観る者の心に確実に刻まれている。
□鳴海唯(なるみ・ゆい)1998年5月16日生まれ。兵庫県出身。2019年に連続テレビ小説『なつぞら』(NHK)でドラマデビュー。POPEYE“ガールフレンド特集”号の表紙や、ドラマ『Eye Love You』(TBS系)、『あのクズを殴ってやりたい』(TBS系)、『わかっていても the shapes of love』(ABEMA×Netflix)、『MISS KING / ミス・キング』(ABEMA)、『シナントロープ』(テレビ東京系)、サントリー「JIM BEAM」をはじめ多数のドラマやCMに出演。昨年は『あんぱん』で自身2回目となる朝ドラ出演を勝ち取り、今田美桜演じるのぶの同期・小田琴子役で強烈なインパクトを残した。身長156センチ。
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