働き詰め女性が念願のFIRE→「あまりに暇で…」意外な結末 “再就職”は驚異の週3勤務・年収600万
経済的自立を実現させて早期リタイアする「FIRE」は、多くの人にとっての“夢のまた夢”。だが、バリバリの現役世代の女性がいざ達成してみたら、「あまりに暇で、半年で戻ることを選択」。意外な結末が待っていた。専門職ながら今は週3程度の時短勤務で、驚異の年収を実現させているという。一緒になって人生設計の道筋を考えたライフプランコンサルタントの奥井まゆさんは仰天しながらも、改めて実感したことがある。「やっぱり、働くことは社会と関わるための最大の接点なんですね」。人生において、働く意味は何か。メッセージを聞いた。

週4稼働で実績 働く女性向けの社会人塾を運営
経済的自立を実現させて早期リタイアする「FIRE」は、多くの人にとっての“夢のまた夢”。だが、バリバリの現役世代の女性がいざ達成してみたら、「あまりに暇で、半年で戻ることを選択」。意外な結末が待っていた。専門職ながら今は週3程度の時短勤務で、驚異の年収を実現させているという。一緒になって人生設計の道筋を考えたライフプランコンサルタントの奥井まゆさんは仰天しながらも、改めて実感したことがある。「やっぱり、働くことは社会と関わるための最大の接点なんですね」。人生において、働く意味は何か。メッセージを聞いた。
奥井さんは、働く女性向けの社会人塾やコンサル事業を経営し、不労所得だけで年間約1000万円を稼ぐ投資家でもある。講演会など人前ではサングラス姿がトレードマークだ。
紆余曲折の人生。大手企業役員の父を持ち、「箱入り娘」として育ちながらも、自活しようと家を出て社会人生活をスタート。商社営業・銀座ホステスのダブルワークと、イベント企画運営の個人活動を頑張り過ぎて26歳でうつ病になった。1年間働けなくなった経験から「他人と話して、社会との関わりを持つこと」「もしもの時の自分の稼ぎ以外の収入」の重要性に気付いた。心身の回復と共に起業。30歳で投資を始め、39歳の現在、同じ経営者でうつ病克服を経験した夫と共に、週4の稼働で、数年にわたって年商1億円以上の会社経営を行っている。
投資は「将来働きたくない」から始めるものではない。病気や事故などで働けなくなった時でも生活できる基盤作り、本当に自分がやりたい仕事を選べるようにするためのツールの一つ。これが奥井さんの考え方だ。
キャリアプラン設計を一緒に考えて投資を学ぶ、奥井さんの社会人塾。塾生のほとんどが女性で、「普通のOLで資産形成に成功している方も何人もいますよ」。ある上場企業勤務の女性は、日本株と不動産投資を運用しており、複数の不動産を持っている。「株式と不動産の利益は、年間200~300万円は回る状態」。2025年4月のトランプ関税ショックによる暴落時に、“底値買い”のチャンスを見いだし、会社員年収の5倍の利益を上げた女性会社員もいるとのことだ。
最も印象的なエピソードがある。「クライアントの会計分野で働く女性が、会社を辞めたんです。彼女はあまりに多忙すぎて仕事を続けられるかと不安になっていました。長年一緒にライフプランを考えてきて、念願のFIRE生活を選択しました」。ペットの犬と過ごすことがこの上ない喜び。ブラック勤務の激務から解放され、好きな時間に犬と散歩ができる。理想を手にした半年後のことだ。「彼女から社会復帰しますという報告をもらったんです」。
塾生たちと“FIRE後”の体験談を話し合う機会があったという。「彼女が一番言っていたのが、『会社に行かないと、ランチの相手もいないし、しゃべり相手がいなくない?』ということでした。みんなで『確かにそうだね』と笑い合いました」。人間は、やはり人との会話が必要だったのだ。
条件に合った就職先は、週2~3日出勤、日中の1日4時間が労働時間。それでも年収は額面で600万円近いという。収入うんぬんが目的ではなく、自分のスキル・ノウハウを生かして楽しく仕事をしているとのことだ。これは会社員の時には出会えなかった仕事。余裕ができたことで職業の選択肢が広がった。
FIREによって得られた“もの”とは?
FIREによって得られたのは、「もう働かない自由」ではなく、「自分の好きなように楽しく働ける環境」だった。「私は日頃から、働くこととお金を得ることを別に分けられるといいですね、というお話をしています。嫌なことを避けるという行動は結局、それだけだと目的を達成した瞬間に、人生の充実ではなく『何もない状況』になってしまう可能性もあります。目的を達成した、その先の生き方を考えることが大事です。そのためにはそもそも投資を『嫌なことを回避するための選択』ではなく『主体的な選択』であることが必要です。この考え方のほうが、人間の行動心理にもかなっていることなのですから」。
そのうえで、「資産という強力な後ろ盾があるおかげで、無理をしてまで働く必要がなくなり、仕事にのびのびと取り組める。自分が本当にやりたいことを仕事にできる環境を作ることが大切です。女性が自由を得たいなら、この視点を持ってキャリア形成をすることが大事じゃないでしょうか」と語りかける。
長引く不況、止まらない物価高、円安進行。生活は苦しくなるばかりだ。投資の重要性が叫ばれる中で、奥井さんが政府に訴えたいことがある。それは、「若い時から本気でちゃんとお金の勉強をさせること」だ。
「私の投資コミュニティーでちょっと前に、高校生の息子さんを連れてきてくれたお母さんの塾生がいました。投資のことを学んだ後に、息子さんが『勉強しないと』とやる気になったそうです。大学進学や就職といった進路に前向きになったと聞きました。自分で働いて、投資に回す資金を作るということ。若い世代のモチベーションにもつながるのかなと実感しました。多くの人から『もっと早く投資や金融を学んでおけばよかった』という後悔の声を聞きます。それでも、40代後半、50歳を過ぎた女性であっても、投資や資産形成を勉強したら『なりたいおばあちゃんになれるかも』と前向きになってくださっています」。
そして、こう続ける。「15歳ぐらいからお金の勉強を始める。元本は自分で稼ぐことで社会性を育成する。資産形成はさまざまなやり方があって、リスクも十分に考えて判断することで主体的な思考力、設計力も育つ。20代はしっかり働いて、30代になったら投資を中心に生計を立てることを考えることもできる。人生自体の選択肢が増えることで、“自由”の感覚が増すでしょう。そこからさらに人生は面白くなる。そんなことを教えることもいいのではないでしょうか」。
不確実性だらけの投資の世界 「逆説的ですが、暴落などで落ちた時に…」
2024年の年始に新NISAがスタートして約2年。期待に胸を膨らませた投資初心者にとって、波乱が連続した。日経平均株価が大暴落した、24年8月5日の「令和のブラックマンデー」。25年4月の“トランプショック”。怖くなって手放した人もいるだろう。
不確定要素に悩まされるのが、投資の世界だ。「今は短期だけを考えると怖い時期と感じています。基本的には中長期を見据えていますが、例えば私は、中期は米国株、長期は不動産を実践しています。このようにリスクを分散した投資でポートフォリオの設計を学んでいただくのもいいのではないでしょうか」と強調。あえてお金を余らせておくことも重要だという。「逆説的ですが、暴落などで落ちた時に、底値付近、トレンド転換(相場の流れが反対に変わること)後に買うために、すぐに回せる資金を持っておくのも有効ですよね」。
トランプ政権を巡って2026年に行われる中間選挙、高市政権の経済・金融政策の行方によっても、市場が大きく動く可能性があり、注目ポイントに挙げられるとのことだ。
何より大事なのは、「社会との接点」が人生を豊かにするということ。奥井さんは「働くことは社会に関わる最も大事な接点です。私自身、うつ病でダウンした時、周りの人たちが支えてくれたことで復帰できました。人と接することは大切だと実感しています。仕事ですか? 私はずっと続けたいと考えています。時代の変化にも対応して、自分のしたいことで楽しく働いていきたいです」と話している。
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