「つまらん!」元カリスマ女子プロレスラーが会見で激昂 スマホ読み上げの若手に放った“元カリスマ”の洗礼

唐突ながら、あなたは「悪魔」と聞くと何を連想するだろうか。もちろん「悪魔」よりは「天使」や「神様」に愛されたいと思うのが一般論だとは思うものの、これがリング上の話となると、かなり意味合いが変わってくる。今回はリング上に現出される「悪魔」を考える。

“魂の女子プロレス”を牽引する夏すみれ(左)と紫雷美央
“魂の女子プロレス”を牽引する夏すみれ(左)と紫雷美央

年内最後の“魔族の宴”

 唐突ながら、あなたは「悪魔」と聞くと何を連想するだろうか。もちろん「悪魔」よりは「天使」や「神様」に愛されたいと思うのが一般論だとは思うものの、これがリング上の話となると、かなり意味合いが変わってくる。今回はリング上に現出される「悪魔」を考える。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 結論から言えば、プロのファイターにとって「悪魔」と呼ばれることは称号のようなもの。しかも時としてその言葉は、王者が腰に巻くベルトよりも数段重い呼び名になる。

 本来、リング上とは選ばれし者が雌雄を決する場。そこで現出される「悪魔」の瞬間こそ、非日常の最たるものだ。なぜなら路上でやったら警察沙汰なことが、リング上だからこそ許されるわけだから。

 そう考えていくと、超多団体時代の令和女子プロレスにおいて、“魂の女子プロレス”と呼ばれるSEAdLINNNGは、比較的「悪魔」の出現率の高いリングになるだろう。

 そんな「悪魔」たち魔族が集う、いわば年内最後の“魔族の宴”(12月26日、後楽園ホール)が間近に迫ってきた。メインは夏すみれと紫雷美央の持つ、BTSタッグ王座に、ウナギ・サヤカと花穂ノ利が挑戦するタッグタイトル戦だが、実はこの4人は、それぞれが独自の強烈な色を持つ、と言えば聞こえはいいが、ダイレクトに言うなら狂気じみている。

 まず“戦慄の厚化粧”の異名を持つ、夏すみれが語る。

「SEAdLINNNGに初参戦したのは2、3年くらい前ですけど、最初は招かれざる者と言いますか。なんでしたっけ? 不謹慎、いや、不適切な女子プロレスとしてね、上がらせていただいて、だいぶ違う存在として試合をしてきたんですけども、徐々に私自身も(SEAdLINNNGに)寄っていくというか、逆にお客様も、ちょっとずつ私に歩み寄ってきてくれているような。そんな手応えを感じるんですよね」

 夏が口にする通り、その不適切ぶりは令和女子プロレス随一。見事なまでの厚化粧と大人好みのコスチュームで、己の股間を対戦相手に連打する様は、決して子どもにはオススメできないものの、それを針を振り切って披露していく夏には覚悟を感じる。

 言ってしまえばそんな色物と見られがちだった夏を覚醒させ、一気にタッグ王者にまで登り詰めたのが、10年ぶりに本格復帰を果たした、夏の相方、紫雷美央だ。リングを離れていた10年の間に3人の子どもを設け、SEAdLINNNGでは“帰ってきた子連れ女狐”と呼ばれているが、その攻撃力は魔族そのもの。紫雷的には「他の団体に出る時よりも、SEAdLINNNGに出ているとハードな面が出ている」と自己分析している。

 おまけに会見や試合前後のマイクでも創意工夫を凝らしながらその場を盛り上げ、芸達者な面も見せつける。

 パートナーの夏いわく(引退する前の紫雷は)「女子プロレス界のカリスマ」だっただけに、すべてを知り尽くした魔族の匂いがプンプン漂ってくるが、当の紫雷は、自身が魔族である自覚がなかったのか、「私、あんまり魔族系で語られることはないと把握していたんですけど…」と言い、傍らにいる夏に「あなた魔女系でしょ?」と確認すると、「いやぁ、魔族ですよ」と夏は魔族であることを認識していた。

 なおも紫雷は、「野崎渚さんとか美人で強い系の魔女系でしょ。悪魔系っていうのは南月(たいよう代表)さんとか中島(安里紗)さんのような『おらー! ぶっ殺す』ていうタイプだから、私はちょっと違うんじゃないかな」と話すと、これには思わず夏から「(紫雷は魔属性が)滲み出ております。私たちは魔族性の二人ではありますから」と答え、改めて紫雷が魔族であることを指摘されていた。

年内最後の“魔族の宴”で何が起こるのか
年内最後の“魔族の宴”で何が起こるのか

「…つまらん!!! この会見はつまらん!!」

 一方、今回の挑戦者組の一人は“極彩色の傾奇者”ウナギ・サヤカになるが、彼女は令和女子プロレス界における売れっ子の一人。その理由は多岐に渡るが、一説によると「SNSによるストーリー作り」と「ファンのブランド化&可視化」を含めたお騒がせな面が受けているという。

 実際、今年4月には両国国技館で興行を開催したのも驚きながら、1600万円もの借金を背負ったこともネタにしながら話題作りをしていく姿勢や、男子プロレスラーとも臆せずに絡んでいく姿が共感を得ているのだろう。

 興味深いのはそんなウナギの勢いに対し、元カリスマの紫雷が「あの時の私は乳がなくてもあれだけ売れたけど、あいつには乳も喋りもあるから、(同じタイミングで売れっ子だったら)どっちが売れるんだろうって想像する時がありますね」と話していたこと。

 しかも紫雷は「ウナギさんも『パフォーマンスすごいけど、試合は普通』って言われるタイプなので、普通の子だったら、我々のような魔族性の人間からするとイケるかなと踏んでますね」と自信を見せる。これには夏も「本来のウナギの持つ持ち味、面白みが花穂ノ利をカバーしていこうとうするこによって消えている。それは花穂ノ利をお荷物として見ているのではないか」との見解を述べた。

 さらに紫雷は、ウナギとともに王座を狙う“小悪魔”花穂ノ利が、今年の1月に“暴走女王”堀田祐美子に頭突きを食らわせ、顔面を変形させるほどの大きなタンコブをつくった張本人だと聞くや、「どっちが強いかな、私、アジャコングの額を生頭突きで割った女なんですよ」と穂ノ利との頭突き合戦を表明する。

 となればより一層、危険な匂いが漂ってくるだけに、自然と注目せざるを得ない。穂ノ利にとっても本格的な魔族の道を歩む覚悟を迫られる一戦になるに違いない。

 その上で紫雷の言葉に耳を傾けると、昨今の若い選手たちに対し、非常に興味深い見識を口にした。

 紫雷いわく、「若い子たちの国語力が下がっている」と言うのだ。

 たしかに先週あったSEAdLINNNGの会見でも、若手の3人は淡々と意気込みを語り、花穂ノ利は考えてきたことをスマホにまとめながら、それを読み上げる手法を取った。

 この光景に紫雷は「……つまらん!!! この会見はつまらん!!」と激昂すると、続けて「なんやねん、長々聞かされて…ほかの団体の記者会見ラッシュ見た? ドレスで髪の毛引っ張り合いしたりとかさ、机の上で技するんかしないんか!?……とかさ、みんなやってんのよ! なに今のこの時間!?」と感情を露わにしていた。

 紫雷の言う通り、年末年始は各団体の重要な大会が目白押しなだけに、淡々と意気込みを語っているだけで生き残っていけるほど、マット界は甘くはない。

 実際、昨年引退した“悪魔”中島安里紗は、スタッフの一人として会見の様子を見守っていたが、「私も堅くてつまらないプロレスラーだったので美央、夏が言ってる事は教えてあげられない。でも、もっと闘争本能丸出しで行ってほしいとは思うよね!」(原文ママ)とXを通じてポストし、若手選手への改善を促していた。

 今後はリング上での熱いファイトだけではなく、魔族らしい独自のメディア対策も考えていく必要がある。というか、とくに「若気の至り」で済まされるうちは、誰にどう思われようと、やらかさなかったらプロレスラーになった意味がない。

 いずれにせよ、年内最後の“魔族の宴”では何が起こるのか。願わくば、しばらく脳裏に焼き付いて離れない、もしくは思わず道行く人に語らずにはいられないほどの「悪魔」な非日常を体感させてもらいたい。

(一部敬称略)

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