斎藤元彦知事「セクシー歌手失神に『いいね』」騒ぎは何を意味するのか 立花孝志氏発信「承知せず」答弁への疑問再燃
斎藤元彦兵庫県知事をめぐる新たな騒ぎが勃発した。斎藤知事のインスタグラムアカウントから韓国人女性歌手が失神する様子の動画に「いいね」マークが付けられていることが、SNS上で指摘されて炎上。斎藤知事の「いいね」は指摘の当日に消去された。この一連の騒動について、元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は、斎藤知事のSNSに関する過去の答弁との「矛盾」を指摘した。

元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士が指摘
斎藤元彦兵庫県知事をめぐる新たな騒ぎが勃発した。斎藤知事のインスタグラムアカウントから韓国人女性歌手が失神する様子の動画に「いいね」マークが付けられていることが、SNS上で指摘されて炎上。斎藤知事の「いいね」は指摘の当日に消去された。この一連の騒動について、元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は、斎藤知事のSNSに関する過去の答弁との「矛盾」を指摘した。
◇ ◇ ◇
たった1つの「いいね」が大炎上する。そんな騒ぎが斎藤知事をめぐって起きた。今月21日、次のX投稿が注目を集めたのだ。
「斎藤知事の『いいね』を、こんな所で発見しちゃいました。知ってた?」
斎藤知事のインスタグラムアカウントが「いいね」マークを付けていたのは、韓国の女性歌手キム・ヒョナさんの中国・マカオでのステージ動画。キムさんは露出度の高いセクシーな衣装で歌い中国語の投稿では「性感女王」と紹介されているが、実はこの動画のポイントはそこではない。動画の中でキムさんは、体調不良のためにステージ上で意識を失い、昏倒してしまうのだ。県提供の写真などを使い、県政情報などを発信している斎藤知事の個人アカウントが「セクシー歌手の失神動画」に「いいね」ボタンを押す。この事態にネット上は騒然となったが、問題はこれだけではなかった。
今月21日にこの件がネット上に広まると、その日のうちに斎藤知事の「いいね」が消されたのだ。これは炎上を知った斎藤知事自身が、「急いで『いいね』を消した」と考えるのが自然。だが、そうなら斎藤知事の場合、大きな問題が浮上する。それはSNS炎上問題が起きるたびに、そのSNSを「そもそも見ていない」「承知していない」と繰り返してきた斎藤知事のこれまでの弁解が、信用性を失うという問題だ。
斎藤知事は、県知事選で「二馬力選挙」を宣言した立花孝志氏らによるSNS投稿が問題となると、「自分はそのSNSを見ていないので分からない」と弁解してきた。それならなぜ、今回のSNS炎上には気付いて「いいね」を消すことができたのか。本当は以前から、自分に関するSNS投稿は逐一チェックしていて、立花氏の問題発信も「知っていた」のではないか。
百条委員会などで斎藤知事の問題を追及し、誹謗中傷を受けて1月に亡くなった竹内英明元県議について、立花氏はSNSで「このくらいのことで自ら命を絶つような人は政治家しちゃいかんと思います」と発信した。これが問題視されて斎藤知事も会見で受け止めを問われたが、斎藤知事はノーコメント。その理由は、立花氏のその発信を聞いたことも見たこともないというものだった。
続く「真相は闇の中」状態
知事会見で斎藤知事を問い質した女性記者に対して、立花氏がそのメールアドレスなどをSNS上で事実上さらすという騒ぎが起きたときも、斎藤知事は会見でこう答弁した。
「個別のXであったりSNSの発信については私は承知してませんので、コメントができない」
ではなぜ、今回の「いいね炎上」だけはその日のうちに気付くことができたのか。今月23日の定例会見でこの騒ぎについて質問された斎藤知事はこう答えた。
「ご指摘の点については、あの、知らないうちに誤ってタップしてしまったということで意図せぬ誤作動、誤操作です。内容自体も見た覚えも認識、承知もしておらず、知人からの指摘を受けて初めて気がついて対応しました。以上です」
この答弁で2つの事実が判明した。1つは「女性歌手失神動画」への「いいね」は第三者によるなりすましではなく、斎藤知事自身がした事実。もう1つは「斎藤知事は、自分に関するSNSの騒ぎを知ることができる環境にある」という事実だ。本当に「知人から聞いた」のか、それとも本当は「自分で見た」のかは別として、いずれにしてもSNS上の炎上を知る手立てがあったことは斎藤知事も認めた。しかも、今回の騒ぎが起きた21日は日曜日。斎藤知事は週末でも自分を巡るSNS炎上を知ることができたのだ。
そうであるならば、立花氏によるSNS上の発信・攻撃が炎上してニュースになった際、斎藤知事はそのことをまるで知らなかったというのは不自然ではないか。とすると、立花氏の発信を「全く承知していない」としてきたこれまでの答弁は、真実ではないのではないか。今回の「いいね」騒動が突き付けたこの疑問の答えは、必ず解明されなければならない。
しかしながら、斎藤知事は不自然と思われる弁明を会見で追及されても正面から答えず、「真相は闇の中」という状態が続いている。23日の会見でも「かきの壊滅的不漁への対策」に疑問を指摘されると、「記者さんの個人的な見解としては承っておきます」と繰り返して質問に答えず、会見場は紛糾した。
質問に正直に答える。そんな最低限のルールを政治家が無視し始めた時、民主主義は崩壊する。しかし、この1年の兵庫県知事会見はその崩壊への道をひた走るものだったのではないか。そんな強い危惧を感じている。
□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。昨年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。
あなたの“気になる”を教えてください