比嘉愛未が体現する「軽やかな生き方」 20年のキャリアと素顔に戻るための“習慣”
俳優の比嘉愛未が、12月26日に配信スタートのFODオリジナルドラマ『にこたま』で、同僚との一夜の関係をきっかけに、生き方を繊細に模索する女性を演じる。沖縄から上京後、今年で俳優デビューから20年。これまで培った“表現の引き出し”とともに、原作漫画にも寄り添った細かい役作りに取り組み、役柄に深みをもたせている。今回、ドラマに込めた思いや忙しくも充実した日々からのリフレッシュ法を明かした。

FODオリジナルドラマ『にこたま』で男性主人公の浮気相手
俳優の比嘉愛未が、12月26日に配信スタートのFODオリジナルドラマ『にこたま』で、同僚との一夜の関係をきっかけに、生き方を繊細に模索する女性を演じる。沖縄から上京後、今年で俳優デビューから20年。これまで培った“表現の引き出し”とともに、原作漫画にも寄り添った細かい役作りに取り組み、役柄に深みをもたせている。今回、ドラマに込めた思いや忙しくも充実した日々からのリフレッシュ法を明かした。(取材・文=大宮高史)
作品は、漫画家・渡辺ペコ氏原作の同名コミックを実写ドラマ化したラブストーリー。出会って12年・長年同棲しているカップルが、仕事や結婚など、さまざまな事態に直面する中、ある一人の女性の人生も絡み、それぞれの思いが交差していく様子を描く。橋本愛と瀬戸康史がダブル主演し、カップルを演じる。比嘉は、瀬戸が演じる男性主人公の職場の同僚役に挑む。
浅尾温子(橋本)と、弁理士の岩城晃平(瀬戸)は長年同棲しているカップルで、以心伝心の関係を築いていた。だが晃平は同僚の高野ゆう子(比嘉)とたった一度関係を持ってしまい、高野に打ち明けられた事実が、3人を翻弄。人生の岐路で3人が選ぶ道とは……という展開に。原作は漫画雑誌『モーニング・ツー』に連載(月刊誌当時の2009~12年)された作品だが、比嘉は「今の時代に当てはまりすぎていて、すごく新鮮に読めました」と素直に思いを明かした。
「渡辺さんの作品は、昨年ドラマ化された『1122 いいふうふ』(Prime Video)を拝見して、世界観が素敵だなと思っていました。だからお話が来た時はうれしかったですし、面白いチャレンジができるなと思いました。ただ、漫画のしっかりした原作がある分、作者の方の世界観とファンの思いを絶対に壊さないように、リスペクトを持ってやりたいと気を引き締めました」
今回演じる高野ゆう子はドラマのキーパーソンであり、一見、主人公カップルの敵に映る存在。弁理士で理知的な性格という設定だが、脚本と原作からその人柄を丹念に考察していった。
「最初はハードルが高い役だなと思いましたが、彼女は完璧そうに見えて意地っ張りなだけで、自分にも周りにも嘘がつけない筋の通った人だと分かってきたら、どんどん愛おしくなって。掘り下げればすごく人間味があるのではと思いました。無表情でも言いたいことは言いますし、不思議なところと矛盾したところがあるのが魅力ですね。だから、原作を読んだ時から一番好きなキャラクターになりました。私自身も仕事が大好きで、割とがむしゃらに走ってきましたが『もっと人に甘えられるようになりたいな』『完璧じゃなくていいんだな』と教えられた気がします」
一方で、原作という土台がある分、リアルな身体で芝居をすることに一抹の不安もある。
「原作らしさを守りつつ、私たちがドラマ版ならではの個性をつけることが難しいなって思います。小説や漫画は、読者次第で自由に作品を解釈して想像を広げられるのが良さだと思いますが、そこに私たちが声や肉体を使って表現すると、自分の個性も出てしまって、ファンが抱くイメージを損ないかねないかなって……。なるべくそこの世界を守りつつ、でもあまり迎合しすぎない、というバランスがすごく難しいんです。自分の感性だけではできないので、冷静に俯瞰しながら、瀬田なつき監督と話し合って作っていきました」

リフレッシュに不可欠な“旅行と沖縄”
2005年に映画『ニライカナイからの手紙』で俳優デビュー。07年にはNHK連続テレビ小説『どんど晴れ』のオーディションで朝ドラヒロインを射止め、その後は、ドラマや映画などで着実に実績を積んでいる。今年俳優生活20周年を迎え、「セリフをただ読めばいいわけじゃなくて、例えば原作が、そのキャラクターの魂だとしたら、ドラマなど作品で血肉をつけて目鼻を作り、人にしていく。そうやってキャラクターを立体化させていく作業です」と“俳優論”を熱く語る。精魂を込めた分、一つの現場を終えた疲労感はすさまじいという。
「演じることって、思っている以上に精神も体力も、五感全部を使います。自分とは違う人物を作り出す難しさと楽しさに向き合うことは、挫折も成功もあります。でも、それを自分の中に溜めないようにしています。役の人物の魂は毎回自分と違いますから、クランクアップすれば『ありがとう』と感謝して、なりきった魂を一度、昇華させないと次に行けないですね。器用な方でもないので、こうして切り替えてきました」
素顔の自分に戻るためのリフレッシュ法は、趣味の旅、そして故郷・沖縄の自然と家族だ。インスタグラムでも飾らない旅の模様をしばしば投稿している。
「自分を取り戻すのってすごく大変なので、撮影が終わったら必ず自然に触れるようにしています。仕事だけをしていると気づいたら自分が分からなくなってしまうこともあるので、旅が一番無理なく自分を取り戻せる活動です」
沖縄で健在の祖母、“おばあ”の言葉にも気づかされることが多い。
「人生で悩んだりおじけづいたりすることもありますが、そんな時に一番効力があるのは、沖縄の“おばあ”です。98歳なんですが、帰ったら何でも相談しています。そうすると最後に必ず『なんくるないさ(なんとかなるさ)』って言うんです。困難な時代を乗り越えて子どもを育てて、今でも畑仕事をして自給自足で生きている人です。そんな人から『何があっても大丈夫だよ』と言われたら、もう何も言えないですよね(笑)。『命があれば大丈夫』を誰よりも体現している人なので、私は『なんでこんなことでくよくよしていたんだろう』と雑念を振り切って、こっち(東京)に戻って来られます」
そんな、おばあの助言を胸に、今では自身の人生を軽やかに見つめている。
「人生は壮大なゲームだと思っています。調子が良い時もあれば、突然壁が現れたりしますが、明日何が起きるか分からないからこそ面白いと思っています。大きな変化がやってきても悲観しないで状況をどうクリアするかが、生きることの醍醐味なんだと思います」
故郷を愛する“ナチュラルビューティー”は、自分らしさを大切に、これからも表舞台で進化し続ける。
□比嘉愛未(ひが・まなみ) 1986年6月14日生まれ、沖縄県出身。2005年に映画『ニライカナイからの手紙』で俳優デビュー。07年にNHK連続テレビ小説『どんど晴れ』のヒロインに抜てきされ、脚光を浴びる。以降、ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍。主な出演作に、ドラマではフジテレビ系『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ、テレビ朝日系『DOCTORS~最強の名医~』シリーズ、NHK大河ドラマ『天地人』など。22年と24年にNHK夜ドラ『作りたい女と食べたい女』シリーズに主演した。25年はABC・テレビ朝日系の1月期ドラマ『フォレスト』、日本テレビ系7月期『放送局占拠』ほか、映画『劇場版「緊急取調室 THE FINAL」』(12月26日公開)などに出演した。
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