「警察の人をぶっ刺すんじゃないかと」傍聴の女子高生は恐怖 判決直後、ベトナム国籍の男が法廷で窓ガラス破壊

さいたま地裁で17日、ベトナム国籍の男が判決を言い渡された後、法廷の窓ガラスを割り、その場で取り押さえられた。突然の暴挙に法廷は騒然。傍聴席にいた一般人も恐怖に陥れた。

さいたま地裁に衝撃が走った【写真:ENCOUNT編集部】
さいたま地裁に衝撃が走った【写真:ENCOUNT編集部】

法廷で窓ガラス破壊、怒号と悲鳴…傍聴席に緊張走る

 さいたま地裁で17日、ベトナム国籍の男が判決を言い渡された後、法廷の窓ガラスを割り、その場で取り押さえられた。突然の暴挙に法廷は騒然。傍聴席にいた一般人も恐怖に陥れた。

「『刑務所なんか入りたくない』って言ってたからもう絶対逃げようとしたんかなと。たぶん高さ見て死ねないと思って、逃げようとしていたのかな。鉛筆のようなもの持っていましたよね。こんなこと、よくあることなんですか?」

 恐怖の瞬間を語ったのは傍聴席にいた女子高生2人組だ。この日、初めて裁判の傍聴に訪れていた。殺人のような凶悪犯罪ではなく、自動車の窃盗事件だ。「刺激的な感じにはならないだろう」と思って選んだが、まさかの展開となった。

 出入国管理及び難民認定法違反、建造物侵入、窃盗の罪に問われたチャン・ドゥック・ルオン被告。技能実習生として来日し、不法残留の末、組織的犯罪に手を染めた。関東近郊8か所で、合計52台の車と現金約467万円を盗み、2500万円の報酬を受け取っていた。

 反省の言葉は聞かれなかった。この日、裁判官から主文が言い渡される前には、証言台で「執行猶予をもらって帰国させてください。僕は刑務所には行きません。行くなら死んだほうがマシだ」と話していた。

 その後、裁判官から懲役6年を言い渡された。まもなく閉廷というタイミングで、被告はひょう変する。歩いていったのは出口のほうではなく、反対の窓側だった。手錠や腰縄はまだつけられていない状態。片手にはペンのようなものを握り締め、獣が威かくするような目つきになった。「オイッ!」。刑務官の怒号が飛ぶ中、被告がガラスをたたき割ると、法廷内には悲鳴が上がった。

 法廷内にいた弁護士や検察が避難する中、前に出たのは刑務官らだった。被告は数人がかかりで取り押さえられたが、緊迫した空気に包まれた。

 傍聴席には自動車盗難の被害者や報道関係者を含めて6~7人がいた。

 もう1人の女子高生は、尋常ではない被告の目つきに、「私、警察の人をぶっ刺すんじゃないかと思った」と声を震わせた。

 法廷と傍聴席の間には、敷居しかない。被告が飛び越えようと思えば簡単だ。身の危険が自身にも及ぶ可能性があった。

「目がガチだったんで、私もう目見た瞬間、『あっ、やばい。こういう人やばいやつだ』と思って。ただ逃げようとしてるだけじゃない」。この女子高生は被告が取り押さえられる瞬間を見届けることなく、廊下に飛び出し、トイレに身を隠した。それほどショッキングな出来事だった。

「何か火薬のような匂いがしたのは気のせいなんですかね。花火の匂い」。初めての傍聴で、心の整理がつかないほど動揺した。

 被告はなぜガラスを割ったのか。法廷は2階で、地上までは3~4メートルほど。無理をすれば飛び降りて逃走することが可能な高さだった。一方で、判決に不満を持ち、自暴自棄になった可能性もある。

 法廷という、本来は秩序が保たれるべき空間で起きた想定外の暴力だった。

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