クマ2000頭駆除「やりたくてやっていることではない」 秋田知事が吐露、現場は「限界に近い」

今年、全国的にクマの出没が相次いだ問題について、秋田県の鈴木健太知事が11日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で行われた会見に出席。県内の深刻な被害状況と今後の対策方針を語った。

会見に臨んだ秋田県の鈴木健太知事【写真:ENCOUNT編集部】
会見に臨んだ秋田県の鈴木健太知事【写真:ENCOUNT編集部】

今年だけで2000頭を超える有害駆除を実施

 今年、全国的にクマの出没が相次いだ問題について、秋田県の鈴木健太知事が11日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で行われた会見に出席。県内の深刻な被害状況と今後の対策方針を語った。

 今年だけで2000頭を超える有害駆除を実施したことや自衛隊派遣に至った経緯について、鈴木知事は「決してやりたくてやっていることではない。市街地に出てきたり人や農作物に危害を与えてしまう、その有害個体の駆除だけでその数になってしまった」と説明。人命優先のためのやむを得ない措置であったことを強調した上で、佐竹敬久前知事がクマ駆除へのクレームに対し強く抗議する姿勢を取ってきたことに触れつつ「全く同じ立場を取っていきたい」と話した。

 今秋は緊急対策として、箱わなの追加調達や学校通学路の安全確保に注力。クマ撃退スプレー1500本を配布し、警察や警備会社による見回り、爆竹による出没抑制などを実施したが、一方で深刻なマンパワー不足も露呈した。

「箱わなを仕掛けても見回りに行く人がいない、もしくはクマが入っていると分かっていても、それを回収しに行く人もいない。夜遅くまでその駆除した個体の解体作業をし、また次の日は朝早くから出動。かなり限界に近い状況になっていた」

 現場のひっ迫した状況を受け、県は10月28日に防衛省に対し自衛隊の派遣を要請。11月30日までの活動期間中、延べ900人を超える隊員が箱わなの運搬や設置、見回りなどの後方支援を行った。要請を巡り、自衛隊の迅速な派遣や警察官によるライフル銃の使用を可能にする規則改正につながったことについては「地方のリソースだけでは対応できないという、悲鳴にも似たようなメッセージになった。そうしたシグナルとして国に伝わったと思う」と振り返った。

 自衛隊出身の鈴木知事は、今回の派遣に県内から感謝の声が多数寄せられたとしたうえで、「自衛隊の本来の任務は国防であり、地域の困り事に毎回対応するべきではない」と指摘。「二度と自衛隊の力を借りなくてもいいように、こうした鳥獣害の対処に関しては、自治体や警察といった従来の対応力を高めていくというのが本質。クマに県境は関係ない。国レベルでぜひ対応していただきたい」と語った。

 クマ被害が急増した背景については、「クマの性質が変わってきたということ。非常に学習能力が高いので、もう最近現場でも人を恐れない『新世代グマ』が非常に増えている。2年前の大量出没の時に市街地に出てきた子連れのクマの中で、人や街というものは恐れるものではないということを学んでしまった個体がかなり増えたのではないかと思っています」と分析。その上で「今年、秋田県だけでなく全国的にクマの出没が増えたわけですが、これは本県における2年前の状況に近い。つまり、他県でもいずれ起こりうる話だと考えます」と警鐘、全国的な対策の必要性をあらためて訴えた。

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