俳優・仲野太賀が主人公の豊臣秀長（小一郎）を演じるNHKの大河ドラマ『豊臣兄弟！』（来年1月4日スタート、日曜午後8時）の取材会に出席し、共演者への思いやエピソード、さらに八津弘幸氏が手掛ける脚本の魅力などを語った。作品は強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡、夢と希望の下克上サクセスストーリー。秀長の兄で天下人となる秀吉（藤吉郎）を池松壮亮が演じる。

　まずは秀吉を演じる池松とのエピソードを紹介してもらった。

「池松さんとは日頃から、今、戦国時代をドラマの舞台にするならどんな表現がベストなのかをよく話し合っています。小一郎のリーダー像もそうですし、今、この作品をやる意味なども。秀吉をメインに描いた作品はこれまでにたくさんありましたが、今作はナンバー2の秀長が主役。たくさんの人に共感してもらえる兄弟の話であり、エンタメとして熱のある、兄弟の体温がしっかり伝わる物語にしたいね、と。目の前にある課題に対し、どうしたらより良いものができるか、どうしたら人に届く作品になるか、みんなが笑って撮影ができるにはどうすべきか、などを本当に兄弟のように相談しながら日々を過ごしています」

　信長役の小栗旬についても印象も聞いてみた。

「小栗さんは僕が芸能界に入る前から俳優として超トップランナー。我々世代の俳優で、小栗さんに影響を受けなかった人はいないと思います。とても偉大な存在ですが、すごく親身に寄り添ってくれます。小栗さんは挑戦を止めない人だし、一切、手を抜かないんです。どんな状況下でも誰よりも自分に厳しい人で、すごくストイックさを感じ、尊敬しかないです。信長という役を引き受けてくださった時点で覚悟を決め、現場に臨んでくれているのだと思います。僕らにも期待をかけてくれて、我々豊臣兄弟の精神的な柱。その様は、これが小栗さんが積み重ねてきたトップランナーとしての在り方なんだと思いますし、そのすごみや俳優としての厚みを日々感じています。そして本当に信長役にピッタリなんです。今、小栗さんの小栗さんたる由縁をすごく感じています」

　小栗が演じる信長を怖いと感じるシーンもあるだろうか。

「言葉にするのもはばかられるぐらい信長は怖いです。本当に撮影ではひどいめにあっているんです（笑）」

　小一郎と藤吉郎の故郷である尾張中村の土豪の娘・直（白石聖）についても聞いた。直は、小一郎と同い年の幼なじみで男勝りな性格。小一郎にとってどんな存在なのか。

「小一郎は困難が目の前に立ちはだかった時、立ち止まり、悩んだりしますが、そういう小一郎の気持ちを直が瞬時に見抜いて理解し、背中を押してくれます。百姓から侍になり戦の世界に入っていく中で、一緒にいて最も小一郎らしくいられる相手であり、より侍として成長させてくれる人。とても大きな存在だと思います」

　演じる白石の印象はどうだろう。

「毎シーン、これでもかというくらい高い集中力を見せる方。白石さんは雄弁というより、つつましい方ですが、一緒にお芝居をするだけで、いかに誠実に役と向き合っているか手に取るように分かります。伝わるものがすごくて、何度も心を動かされました。白石さんでなかったらこうはならなかったという表情を、僕もたくさん引き出されています。とてもみずみずしく、みんなが好きになれる、最高に魅力的な直を演じてくれていると思います」

　最後に八津弘幸氏が手がける脚本の魅力を訪ねた。

「キャラクターが生き生きと描かれていて、読んでいてワクワクします。史実をたどれば、その人生がどうなるか分かることですが、それでもこの兄弟がこの先どんなことを成し遂げるのか、どんな人生を送って、どんな景色を見るのかと夢が膨らみます。八津さんが描く『豊臣兄弟！』は誰が見ても楽しめる軽やかさがあると思います。それでいて戦国時代らしい生死の駆け引きがある。すごく楽しめる幅が広い脚本です。演じる上でもすごく感情が高ぶり、胸が熱くなります」