吉高由里子「私は何も変わってない」 俳優活動21年、大切にしたい他者への違和感
吉高由里子主演、蓬莱竜太氏作・演出の舞台『シャイニングな女たち』が、12月に東京、来年1月に大阪、福岡、長野、愛知で上演される。大学時代の過去と社会人となった現在とを行き来しながら、人間関係のもつれ、SNS時代の光と闇を描く女性たちの群像劇だ。ENCOUNTは、蓬莱作品への出演を熱望していた吉高と蓬莱氏による対談を2回に渡って掲載。今回は「後編」で、吉高が作品のテーマに関わる自身のエピソードを明かしている。

『シャイニングな女たち』で3年ぶり舞台出演 作・演出の蓬莱竜太氏と対談【後編】
吉高由里子主演、蓬莱竜太氏作・演出の舞台『シャイニングな女たち』が、12月に東京、来年1月に大阪、福岡、長野、愛知で上演される。大学時代の過去と社会人となった現在とを行き来しながら、人間関係のもつれ、SNS時代の光と闇を描く女性たちの群像劇だ。ENCOUNTは、蓬莱作品への出演を熱望していた吉高と蓬莱氏による対談を2回に渡って掲載。今回は「後編」で、吉高が作品のテーマに関わる自身のエピソードを明かしている。(構成=Miki D’Angelo Yamashita)
蓬莱「『シャイニングな女たち』は、『戦う女性』をテーマにしたかったんです。男性社会の中で、女性は自分の居場所とかアイデンティティーを見つけないと、不幸だと思われてしまうんですよね。女性は常に外部から戦いを強いられている。そういう意味で、日常にドラマが眠っているのは女性のほうだと感じています。一人ひとりがいろいろな戦い方をしている。それが一番書きたかったことです。吉高さんのあり方は、戦っているようで実は泳いでいる。そんなしなやかさを感じるんですよ。多分、異性同性含めて、吉高さんに魅力を感じる大きな要因だと考えています」
吉高「一番いい言葉で飾っていただいてるだけで、本当は、のらりくらりやってるやつだって思われてるのかもしれない(笑)。でも、女性として『戦ったな』という実感はあります。男尊女卑を目の当たりにしてる世代ではないんですけど、男性を立てないといけない場面も見てはいるし。でも、旦那さんが亡くなってから輝く女性もいるので、『結局、最後は女か』と思っちゃう。そこで輝く、『シャイニングな女たち』になるんです」
蓬莱「今回の舞台は、ほぼ女性の出演者で占められていますが、女性同士の怖さを経験したことが物語のベースとして役立っています。うちの母親が3人姉妹なんです。子どもの頃は親せきが集まるとその3人が、延々としゃべっていました。でも、全員が話を聞いてないんですよ。そのすさまじさは、女性同士ならではのものですね(笑)」
吉高「うちの母と食事に行った時もそうでした。話を聞かないのに質問してくるし、答えた時にはもう違う話をしている。『何で聞いたんだろう』『どこまで私は真剣に答えてあげたらいいんだろう』と(笑)」
蓬莱「学生時代、デザイン科だったので女性も多くて、女性同士の微妙なけんかを見たりして、『男性とは違うあり方だな』と感じたりしていました。女性同士の友達とか親友感は興味深いですよね」
吉高「学生時代の女友達って一種の依存でもあると思うし、派閥でもあると思うし、何か恋愛にも見えましたね。それで自分の今、存在している立ち位置とか、求められてる感覚とかを実感してるんでしょうね。いびつだなと思います。美しさを求めれば求めるほど、いびつになっていったりするんだろうな。その小さな世界の中で、『シャイニング』を探しているんじゃないんですかね」
蓬莱「それと、今の時代を描く時にSNSは外せないです。大学時代にフットサルチームで輝きを作れたと思っているその裏で、また違う現実が作られていく。その主観と客観が当事者も分からなくなっていく。そこに、SNSが登場人物たちをある種苦しめる一つのツールとなって出てくるんです。そういったことを作品に盛り込んでみたいと考えました」

15分あれば有名になる時代「怖い」
吉高「最近は、芸能界で仕事をしているからSNSでニュースになるというわけでもなくて、普通の人が発信したことも、『何でこれがこんなにバズっているんだろう』ということもありますよね。アンディ・ウォーホルの『どんな人間でも15分あれば有名になれるだろう』という言葉がありますが、まさにそういう時代だなと。もちろん、私は発言に気をつけなければいけない立場。そう考えると怖いですよ」
蓬莱「うちの劇団は僕と同世代の男の俳優ばかりですが、年齢も50ぐらいになってくると、何のドラマもなくなっていくんですよ。なので、女性や若い世代が、どうやってSNS時代を生き抜いていかなければならないのか。そんなところにドラマを感じています」
吉高「私、実は発信する側だけではなくて、縦動画を見たりする側でもあるんです。夜中にライブ配信をやっている人がいるじゃないですか。どういう人かも分からない人のライブ配信なんですけど、見ているわけですよ。同じ時間に眠れない時間を過ごしているという変な気持ちになりましたね。その人の生活に関わることもないのに、何で私はこの人のライブ配信を夜な夜な見てるんだろう。しかも、たまに質問したりもするんです。ちょっと寒くなってきたからかな。『人肌恋しい』ではないですけど、同じ時間を生きている人たちにすがったんだろうな。会うこともない人なのに、変な質問をしてしまったり」
蓬莱「『どうでもいい人だからできる』ということもありますよね」
吉高「16歳から俳優をしてきて、昨年で20周年。『あっ』という間だった思いはありますが、その間、自分の成長というか、年を重ねていく姿がネット上に増えてくのは、不思議な感じがします。学生のころの同級生たちは、結婚したり、母になったりしていて、いろいろなフェーズを重ねて社会人になっている。そういう姿を見ていると、『私は何も変わってない』という気持ちにもなるし、私がどういう30代になったのか、みんなに全部知られているのに、私はみんなのことを知らない。自身と他者からの視点には必ず差がありますよね。その『違和感』を客観的に見る感覚は大切にしたいと思っています」
□吉高由里子(よしたか・ゆりこ) 1988年7月22日、東京都生まれ。2006年、映画『紀子の食卓』でスクリーンデビュー。08年には映画『蛇にピアス』で初主演を務め、日本アカデミー賞新人俳優賞に輝いた。NHK連続テレビ小説『花子とアン』、TBS系連続ドラマ『最愛』など多くの話題作で主演。24年には、NHK大河ドラマ『光る君へ』で主演。『シャイニングな女たち』は、22年10月の『クランク・イン!』以来3年ぶりの舞台出演となる。
ヘアメイク:中野明海、スタイリスト:申谷弘美
<パルコ・プロデュース2025『シャイニングな女たち』>
作・演出:蓬莱竜太
出演:吉高由里、さとうほなみ、桜井日奈子、小野寺ずる、羽瀬川なぎ、李そじん、名村辰、山口紗弥加(敬称略)
<物語>
金田海(吉高由里子)は、社会人として働く傍ら、他人のお別れの会に紛れ込み、ビュッフェを食べて帰るという行為を繰り返していた。
ある日、入り込んだお別れの会の会場で金田は偶然見覚えのある顔たちに出会う。それはかつて自分がキャプテンを務めていた大学時代の女子フットサル部の仲間たち。親友の山形圭子(さとうほなみ)の姿。敵視していた顧問の川越瑞希(山口紗弥加)の姿まであった。
遺影は同じピッチに立っていた後輩・白澤喜美(桜井日奈子)の姿だった。「私は何故呼ばれていないのか」。お別れの会の会場と輝いていた大学時代が交錯していく。その輝きは本当の輝きだったのか。
<日程・会場>
12月7日~28日 東京・PARCO劇場
1月9日~13日 大阪・森ノ宮ピロティホール
1月16日~18日 福岡・福岡市民ホール 中ホール
1月24、25日 長野・サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホール
1月29日、30日 愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
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