原田優一、ミュージカルの“裏”を描いた異色舞台は「みんなエンジン全開」 思い出した初心とは
子役の時から舞台で活躍し、大作ミュージカル『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』のメインキャストなどでも知られる俳優・原田優一が、27日に東京・浅草九劇で開幕する舞台『ミュージカル「ajabu(アジャブ)」~歌詞検討会の影猛者達~』(作・演出:福田転球、12月14日まで)に出演する。ミュージカル作品を影で支える“猛者達”(プロアンサンブル)に焦点を当てた本作で、キャリア30年を超す実力派が見つめ直した「初心」とは――。

27日開幕の『ミュージカル「ajabu(アジャブ)」~歌詞検討会の影猛者達~』
子役の時から舞台で活躍し、大作ミュージカル『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』のメインキャストなどでも知られる俳優・原田優一が、27日に東京・浅草九劇で開幕する舞台『ミュージカル「ajabu(アジャブ)」~歌詞検討会の影猛者達~』(作・演出:福田転球、12月14日まで)に出演する。ミュージカル作品を影で支える“猛者達”(プロアンサンブル)に焦点を当てた本作で、キャリア30年を超す実力派が見つめ直した「初心」とは――。(取材・文=猪俣創平)
本作は、一般的にあまり知られていない「歌詞検討会」を題材に、福田氏ならではの視点とユーモアが光る2部構成となっている。1幕は、オリジナルミュージカル「ajabu(アジャブ)」の歌詞検討会の様子を芝居とミニミュージカル要素を交えて描く。2幕では、「ajabu」の本番を上演。「カバとワニの禁断の恋から生まれた奇形動物アジャブ」を主人公に、ストレートプレイを中心に活動する俳優がメインキャストを務め、歌詞検討会チームの原田らミュージカル俳優がアンサンブルとして支えるというユニークな内容になっている。原田がどんな表現をするか、注目される。
――まずは台本を読んだ際の感想をお聞かせください。
「最初に、転球さんから“歌詞検討会を題材にしたミュージカルをやりたい”と伺って、面白い着眼点だなと思ったんです。それがどんなスタイルになるんだろうと考えていたら、まさかの1幕は歌詞検討会そのもので、2幕はその検討会を経た“本番”の上演でした。どちらもオリジナル作品ですし、これはとても面白くなるなと思いました」
――福田氏の作品には今回が初参加となります。
「今までご縁がなくて、スケジュールなどもあって参加できずにいたんですよ。でも周りから“転球劇場は本当に面白い”と聞いていたので楽しみでした! 実際に台本を読んだら、ミュージカルをしっかりリスペクトしつつ、ちゃんとハチャメチャなんです(笑)。転球さんならではの独自の世界観が詰まっていました」
――独特な笑いのセンスとにじみ出る哀愁が持ち味の“転球ワールド”をどう感じていますか。
「笑えるんですが、かなりシュールで、僕はそこがすごく好きなんです(笑)。今回はミュージカル経験者が多いので、“ミュージカルあるある”がたくさん散りばめられていて、振り付けに行き詰まるとこの動きをしがちだよね、とか(笑)、『ああ、これ暗黙の了解でやってたな』と気づかされる部分もあります。稽古場でも、最初からみんなエンジン全開で『こんなのどうですか?』『こんなのできますよ』と、どんどんアイデアが出て、転球さんも『いいんじゃない、やってやって!』とノリノリでした(笑)」
――歌詞検討会チームには原田さんのほか、中井智彦さん、谷口ゆうなさん、大和田美帆さん、高木稟さん、杉田未央さん(ピアノ)が出演します。
「全員知り合いだったので、演じていると、お互いが“どう来るか”となんとなく反応が分かるんです。しかも僕が演出したオリジナルミュージカル(『グッド・イブニング・スクール』)に、中井くんとゆうなちゃんも出てくれているので、2人にどんな面白い引き出しがあるのか知っていたし、美帆ちゃんも飲み友だったので(笑)。“読み合い”ができる面白さがあります」
2幕目では意外な役どころ「すごく楽しい」
――本番チームはミュージカル『テニスの王子様』など2.5次元作品などで活躍する寶珠山駿さんのほか、ストレートプレイを中心に活動する家納ジュンコさん、ピン芸人の守谷日和さん、北川雅さんが出演します。
「いろんなジャンルから集まって、すごく面白いグループです。それぞれが持ち前のキャラクターと、お互いに異なる畑から出てきた空気感があります」
――2幕目ではどのような役どころになるのでしょうか。
「歌詞検討会チームが、ミュージカル『ajabu』本番のメインキャストを支えるアンサンブルをやります。普段ミュージカルをやっている人達が後ろで支える面白い構造になっていて、主要キャストの周りでいろいろな役をやるんです。僕は、歌詞検討会の1幕では主役になるアジャブの代役として歌っています。2幕では、メインキャストたちの後ろにいるジャガーだったり、研究者だったり、いろいろな役をとっかえひっかえ演じるんですよ。カバをやったり、ワニをやったり、『ヒッヒッヒ』と鳴いて舞台からはけていくみたいな(笑)」
――普段のミュージカルでは主役級の役が多いですが、アンサンブルとして複数の役を演じ分ける難しさもあるのでは。
「もちろん難しいです。でも、僕はもともと10代や20代の前半まではミュージカルのアンサンブルをやる機会が多かったので、いろいろな役を演じるのもすごく楽しいんですよね。それに、歌、踊り、芝居の3つができないといけないので、とても技術が必要で、そういった人たちが作品を支えているわけです。だから今回、主役が目立つには、周りがちゃんと反応しないといけないんだよねって再認識しました。“アンサンブル”とひとくくりにしてはいけないんですけど、主役がどう映るかは、周りのアンサンブルがどんなお芝居をするのか、にもかかっているんですよね」
――初心を思い出したということですね。
「それこそ24歳で『レ・ミゼラブル』のオーディションに受かって、青年革命家のアンジョルラス役に抜てきされた時、彼はリーダーなのに、共演者はほとんど年上だったんですよ。その時、周りからの圧に耐えられない自分がいたんですね。当時のプレッシャーはいまだに覚えています。だからこそ、今はメインキャストとして真ん中に立つ時も、常にその初心を忘れないように心がけていますし、今回で言えば、アジャブがステージの真ん中に立つ時に、『大丈夫だよ、いるよ』と“支える側”でいたいんです。今回は群像劇ではありますが、作・演出として作品の中心にいる転球さんを、しっかり支えられるようになりたいですね」
□原田優一(はらだ・ゆういち)1982年9月1日生まれ、埼玉県出身。9歳で劇団若草に入団し、子役としてキャリアをスタート。94年、子役の登竜門と言われたミュージカル『レ・ミゼラブル』のオーディションに合格し、ガブローシュ役を演じた。子役として『サウンド・オブ・ミュージック』、NHK大河ドラマ『秀吉』などにも出演。その後もミュージカルなど舞台作品に次々と出演。2007年には、オーディションで『レ・ミゼラブル』のアンジョルラス役を射止めた。また、オリジナル舞台制作チーム・PAT Companyの一員としても活動し、20年にはオフブロードウェイミュージカル『bare』で演出を担当した。25年は、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』(8月~9月上演)でボブ・クルー役を好演し、12月28日には東京芸術劇場プレイハウスで上演の『愉快なおとこたち ~2025年、心の大掃除~』が控える。
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