高校生でRIZIN出場から一転…顎に全治1年の重傷「もうやめよう」 竹林愛留、“伊澤星花チャレンジ”で懸けた再起

DEEP・RIZIN王者の伊澤星花が始動させた、格闘家の発掘・育成プロジェクト「伊澤星花チャレンジ」。8月に選考が行われ、竹林愛留、成本優良、岡美紀の3人が1期生に選ばれた。9月からは千葉・松戸を拠点に本格的な練習がスタートしており、ENCOUNTでは将来を嘱望される2選手にインタビューを実施した。第2回は、RIZINにも出場経験がありながら、2023年に全治1年の重傷を負いブランクを経た竹林愛留。

インタビューに応じた竹林愛留【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた竹林愛留【写真:ENCOUNT編集部】

伊澤星花チャレンジ連載・第2回

 DEEP・RIZIN王者の伊澤星花が始動させた、格闘家の発掘・育成プロジェクト「伊澤星花チャレンジ」。8月に選考が行われ、竹林愛留、成本優良、岡美紀の3人が1期生に選ばれた。9月からは千葉・松戸を拠点に本格的な練習がスタートしており、ENCOUNTでは将来を嘱望される2選手にインタビューを実施した。第2回は、RIZINにも出場経験がありながら、2023年に全治1年の重傷を負いブランクを経た竹林愛留。(取材・文=島田将斗)

 22歳にして7戦のキャリアを持つ竹林は、かつて“女子高生ファイター”として注目を集めた。転機となったのは高校2年の冬、RIZINでの試合出場だった。

「当時は本当にびっくりしました。高校生でRIZINに出られるなんて思っていなかったです」

 しかし、2023年9月の試合中、顎を骨折。キャリア最大の試練が訪れた。

「試合中にどの場面で折れたかは分からないんですけど、感覚はありました。3年前にも練習中に折れていて、そのときと同じ感じで。顎の中心から右側にずれた部分と耳の横の骨が“ガコン”って外れて。歯のかみ合わせもずれ、水も食事も摂れなかった。場所がずれていたら気道がふさがっていた可能性もあったみたいです」

 救急搬送されたものの、新型コロナ禍の影響で搬送先が決まらず、1時間半ほど救急車内で過ごした。

「アドレナリンが出ていたので『このまま帰ります』って言ったんですけど、スタッフに止められて。なんとか病院に運んでもらって、すぐ手術でした」

 手術後に全治1年と告げられ、格闘技を続けるか悩んだ。

「ちょうどジムを辞めて、東京に行こうと思っていたタイミングだったんです。“折れて東京に行っても意味ないな”って思って。福井の地元には総合のジムが1つしかなくて、そこも辞めたので、行き場もなくて……」

 両親も、そんな姿をそっと見守っていた。

「ずっと応援してくれていたけど、私がけがをしてから気持ちが落ち込んでいたので、格闘技の話をしないようにしてくれていたんです。だからこそ、このチャレンジが決まったときはすごく喜んでくれました」

約2年ぶりの試合は“仕切り直し”と“再出発”

 前戦から2年のブランクがある。その間に同世代の選手たちは階段を駆け上がっていた。

「同じ時期にデビューした選手が、どんどん上に行っていて。レベルもすごく上がっているなって感じて、焦りもありました」

 一時は試合を見ることもできなくなっていたというが、徐々に気持ちが戻ってきた。

「最初はもう格闘技をやめようって思っていて、興味もなくなっていました。でも、YouTubeで試合のトレーラー動画を見たりして、“こんな選手出てきたんだ”って思うようになって。少しずつ、また見るようになりました」

 格闘家としての“見せ方”にも変化を感じている。ビジュアルが先行するファイターも以前よりは増えた。

「私は別にそれでいいと思ってます。キャラクターや見た目も、ひとつの強みだと思うのでそれがうらやましい。優良ちゃん(成本)もキャラが確立されていますよね。自分も格闘技だけじゃなくて、表現力も含めてチャレンジ生期間に学びたいなって思っています」

 チャレンジに応募したのは、復帰を決意した今年初め頃。タイミングがすべてだった。

「今年の1月か2月ぐらいに、また格闘技を再開し始めて。2年前より考え方も少し大人になったと思いますし、また頑張りたいって思っていたときにチャレンジの告知を見て。お父さんとお母さんが“東京で頑張ってほしい”って思ってくれていたのも感じていたので、応募しました」

 このプログラムを始動させた伊澤は同じ階級だ。間近にいる王者の姿が常に背中を押す。

「私がアマチュアの試合に出ていた頃に、伊澤さんはプロデビューしていて。練習の質や動きのキレが本当にすごい。ずっと尊敬しています」

 約2年ぶりの試合に向け、心境は“仕切り直し”と“再出発”の両方だ。

「プロ1戦目という気持ちでもあるし、8戦目という気持ちでもあります。理由も分からずやっていた動きに、今は“こういうときにこう動くんだよ”と説明がついて、ちゃんと理解して動ける。今までの経験にプラスで意味づけができるようになったのが大きいです」

 現在の自分は「打撃でも寝技でも突出していない」と語る竹林だが、目指す理想は明確だ。「全部のレベルを少しずつ上げていって、どんなタイプの相手にも極めたり倒したりできる選手になりたい」と再起へ向け誓った。

次のページへ (2/2) 【写真】「はやく審判止めてくれ」 顎に全治1年の重傷を負った瞬間の竹林愛留
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