多部未華子、母としての経験が芝居につながる 仕事への姿勢は変わらず「毎日楽しい」
俳優・多部未華子が主演を務めるWOWOW連続ドラマW『シャドウワーク』(11月23日スタート、日曜午後10時、全5話)の撮影を終え、改めて感じたのは「時代の変化」だった。映画やドラマの現場に20年以上身を置いてきた彼女にとって、この作品の現場は、確かな変化を感じさせるものだった。

ドラマW『シャドウワーク』で主演
俳優・多部未華子が主演を務めるWOWOW連続ドラマW『シャドウワーク』(11月23日スタート、日曜午後10時、全5話)の撮影を終え、改めて感じたのは「時代の変化」だった。映画やドラマの現場に20年以上身を置いてきた彼女にとって、この作品の現場は、確かな変化を感じさせるものだった。(取材・文=平辻哲也)
本作は、江戸川乱歩賞作家・佐野広実の同名小説を映像化したヒューマン・ミステリー。夫からの暴力に苦しむ主婦・紀子が逃げ込んだ先のシェアハウスで女たちと共闘しながら、ある重大な秘密を共有していく……。重いテーマのドラマだが、撮影現場は予想に反して、明るかった。
「昔は本当に厳しい現場もありました。叩かれたり蹴られたりする助監督さんを見たこともあるし、汚い言葉が飛び交うのが普通の時代でした。でも、今回の現場では助監督の人たちが監督に意見を言ったり、意見を出し合ったりするんです。ネガティブな意味じゃなくて、それがとても良いと思いました」と語る。
山田篤宏監督は、阿部寛主演の映画『俺ではない炎上』(2025年)などで知られる新鋭。穏やかで柔らかい人柄が印象的だったという。
「とても穏やかですてきな方でした。俳優たちがにぎやかな現場だったので、最終日に『どう思っているのかな』と思って聞いてみたら、『僕はとっても楽しいですよ』って言ってくださって。あ、楽しんでたんだ、って(笑)。みんなの意見を聞きながら一緒に作ってくれる監督で、すごく時代を感じました」
そんな環境の中で、多部自身もこれまで以上に自由に意見を言えるようになったという。
「聞いていいのかな、って思うこともなかったです。単純に疑問に思ったことを聞けて、すぐに『そうそう、それでいいんだよ』って返ってくる。そういうやり取りができるのがすごく良かったです。私は取材の場で『撮影が楽しかった』と口に出すことはあまりないのですが、今回は本当に楽しかったんです。みんながこういう現場だったらいいのにな、と思いました」
現在36歳。デビューから20年以上がたち、私生活でも母となった多部だが、「仕事との向き合い方は昔と変わらない」と話す。
「(この数年は)私生活の変化は大きかったけど、仕事としては正直そんなに変わっていないです。毎日楽しく過ごしていますし、どちらかといえば地続きな感覚です」
母になった経験は、演技にも確かな変化をもたらしている。
「今回の役は子どもがいない設定だったので直接は関係ないですけど、今年の頭に母親役(TBS系連続ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』)をやったりして、経験したから分かることもありました。私生活の変化に助けられていることはあると思います」と語るその表情は穏やかだ。
重いテーマを抱えた『シャドウワーク』を演じながらも、多部が見つめていたのは希望と優しさの先にある“今”の時代。厳しさよりも対話を重ねる現場、役を支える日常の変化。彼女の柔らかくも芯のあるまなざしが、令和の俳優としての新しい在り方を映している。
□多部未華子(たべ・みかこ)1989年1月25日生まれ。東京都出身。2002年に俳優デビュー。05年公開の映画『HINOKIO』、『青空のゆくえ』でブルーリボン賞新人賞を受賞。09年、NHK連続テレビ小説『つばさ』のヒロインを務め、翌年の舞台『農業少女』で読売演劇大賞優秀女優賞・杉村春子賞・エランドール賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に、映画『空に住む』(20)『流浪の月』(22)、ドラマ『いちばんすきな花』(23/フジテレビ系)「スロウトレイン」(25/TBS系)『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(25/TBS系)、舞台NODA・MAP『兎、波を走る』(23)などがある。
ヘアメイク:中西樹里
スタイリスト:岡村春輝(FJYM inc.)
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