「本当は暗いでしょ?と聞かれます」渡邉美穂、サスペンスドラマで前科者役 本好きが生きた初主演映画での思い出
元日向坂46で俳優・渡邉美穂が、放送中のカンテレ・フジテレビ連続ドラマ『地獄は善意で出来ている』(カンテレは木曜深夜0時15分、フジテレビは同0時45分)で、更生プログラムに参加する前科者を好演している。持ち前の明るいイメージを打ち破る挑戦を見せており、今回、役づくりや俳優として演技を支える読書へのこだわりも語った。

『地獄は善意で出来ている』で前科者役
元日向坂46で俳優・渡邉美穂が、放送中のカンテレ・フジテレビ連続ドラマ『地獄は善意で出来ている』(カンテレは木曜深夜0時15分、フジテレビは同0時45分)で、更生プログラムに参加する前科者を好演している。持ち前の明るいイメージを打ち破る挑戦を見せており、今回、役づくりや俳優として演技を支える読書へのこだわりも語った。(取材・文=大宮高史)
カンテレ×フジの動画配信サービス「FOD」の連ドラ第4弾となる本作は、更生施設を舞台に、前科者たちの運命を描くサスペンスドラマ。謎の男・カトウが主宰する『元受刑者特別支援プログラム』に合格した者には社会復帰のチャンスが与えられるため、参加者同士で力を合わせていこうとするが、実はプログラムの裏には罠が潜み……という展開。渡邊は一流商社で横領を働いた立花理子を演じている。
渡邉といえば、日向坂46時代から太陽のような明るいキャラクターでファンらから愛されている。俳優としても木村柾哉(INI)とダブル主演した映画『あたしの!』(2024年)や、佐藤新(IMP.)とのダブル主演映画『青春ゲシュタルト崩壊』(今年6月公開)など、ラブコメディーや青春群像劇がイメージにピタリと合い、取材の場でも終始ハイテンションで快活ぶりを発揮した。本人は「これが普通です(笑)。昔からずっとこんな感じで、プライベートでもお仕事でも、朝から晩までずっと元気で、裏表がないのが自分の長所だと思います」とサラリ。今回のドラマでは、そんな印象を変える、新境地開拓といった演技を見せている。
――今作『地獄は善意で出来ている』のストーリーにはどんな印象を抱きましたか。
「人の心に渦巻いている黒い感情が前面に出ています。地獄というか登場人物一人ひとりがどん底の経験を抱えていて、それぞれの“地獄”でつながっていく展開は、サスペンスとしてすごく面白いと思います。今回は、ただ仁王立ちでセリフを放つだけでも様になるような、存在感のあるお芝居に挑戦したいと思っています」
――演じる立花理子についてのイメージは。
「理子はもともと学生時代、成績優秀で人気者だったという過去があります。でも、いざ社会に出てみたら、自分より能力が高い人や優れた人がたくさんいる現実を目の当たりにして、そこから生まれる劣等感から犯罪に走ってしまったのかなと思います。そういう負の感情が渦巻いてしまう瞬間って、結構多くの人が体験したことがあるんじゃないでしょうか。だから彼女の葛藤自体は共感してもらえると思います」
――今回は前科がある人物という異色の役ですが、なぜ、ご自身にオファーがあったのかなと思いますか?
「たまに『本当は暗いでしょ?』と人から聞かれます。確かに家を一歩出て、お仕事などで人前に出る時は明るくいられるんですが、家で一人で過ごすのも好きなんです。そういう人に見せない一面って、誰しもが持っているのかなと思いますが、そんな二面性を見出してくれたのだったら、うれしいですね」
そう明かすとキュートな笑顔を見せた。実は、「ちょっとでもスキマ時間があれば本を読んでいます」というほどの読書家。本はタレントとしての自身の感性を豊かにしてくれているという。

読書体験が主演映画での自信の源に
「本が好きになったのは中学生の時です。当時は、自分の気持ちをうまく言葉にできなくて、語彙力がない自分に悔しい思いをしたことがあったんですが、その時に学校の先生から『とにかく本を読みなさい』とアドバイスされたのがきっかけですね」
――どんな本を読みますか?
「もっぱらホラーが多いです。特に、地方の村や集落の伝承や呪いにまつわる、ドロドロした話が大好きなんです。今年映画にもなった『近畿地方のある場所について』とか『廃集落のY家』のような、土着的な怖さがあるジャパニーズホラーはすごく惹かれます」
――ホラーが好きな理由は?
「もともとオカルトが大好きなので、主人公たちと一緒に真相に迫っていく感覚がたまらないですね。それに、本好きなファンの方々が面白い作品をSNSで発信してくださるんです。その投稿を見て『あ、面白そう!』って思ったら読んでみたり、映画を観に行ったりしています。常に動いていたいので、アンテナは張っています」
――そうした経験は、俳優として演技の“引き出し”にもつながっていますか?
「物語を通してさまざまな人生や考え方に触れることで、自分が経験したことのない感情をインプットしていくんです。以前、初めて主演をいただいた映画『あたしの!』の横堀光範監督から『リアルでは言わないようなセリフを、自分のものにする力がある』と褒めていただいたことがあります。お芝居って、ただセリフを言うだけじゃなくて、そこに血を通わせるまでが仕事だと思っているのですが、その時監督が評価してくれたことが自信になりましたし、いろんな物語に触れてきてよかったです」
――では、これから出演してみたいジャンルや作風を挙げるなら?
「やっぱりホラー作品に出るのは夢ですね。でも私のこの、元気いっぱいで天真爛漫なイメージで役をいただけるのもうれしくて、いただいた役柄を全うするのが楽しいです。今回、ダークな作品で光と影がある理子を演じられるのは、夢に近づけた気がします。好きなことを、ちゃんと公にしてきてよかったです」
――最後に、俳優としてこれからどのように歩んでいきたいかを教えてください。
「さまざまな物語との出会いを通して、一人の人間として価値観が変わったり、成長させてもらえたりすることがたくさんありました。今回の『地獄は善意で出来ている』も、きっと私に新たな発見をもたらしてくれるはずです。これからも、自分自身の記憶と心にちゃんと残っていくようなステキな作品に、一つでも多く関わっていけたら幸せです」
□渡邉美穂(わたなべ・みほ)2000年2月24日生まれ、埼玉県出身。17年8月に「けやき坂46」の追加メンバーオーディションに合格し、2期生として加入。19年2月にグループは日向坂46へ改名。17年には、テレビ東京系連続ドラマ『Re:mind』で俳優デビュー。その後も、日本テレビ系連ドラ『DASADA』(20年)、同『声春っ!』(21年)などに出演。22年7月に日向坂46を卒業すると、ドラマや映画などで活躍する。主な出演作に、初のダブル主演映画『あたしの!』(24年)、ダブル主演映画『青春ゲシュタルト崩壊』、NHK連続テレビ小説『虎に翼』などがある。
あなたの“気になる”を教えてください