武知海青の握手拒否に“鬼の形相”、竹下幸之介が明かすDDT凱旋の裏側と感じた後輩の成長
2022年春にアメリカへ旅立った竹下幸之介は、KONOSUKE TAKESHITAとなりDDT・AEW・新日本プロレス三団体に同時所属という快挙を成し遂げた。そして、真夏の最強戦士決定戦『G1 CLIMAX 35』を制覇、そしてIWGP世界ヘビー級王座を奪取し、DDTマットにも里帰りを果たし、11.30後楽園ホール大会では青木真也とのシングルも控えている。インタビュー後編は、そのDDTへの思いを聴いた。

3団体所属になって体のダメージよりも試合のテーマを作る脳みそが…
2022年春にアメリカへ旅立った竹下幸之介は、KONOSUKE TAKESHITAとなりDDT・AEW・新日本プロレス三団体に同時所属という快挙を成し遂げた。そして、真夏の最強戦士決定戦『G1 CLIMAX 35』を制覇、そしてIWGP世界ヘビー級王座を奪取し、DDTマットにも里帰りを果たし、11.30後楽園ホール大会では青木真也とのシングルも控えている。インタビュー後編は、そのDDTへの思いを聴いた。(取材・文=橋場了吾)
11.3両国国技館大会。KONOSUKE TAKESHITAは久々に生まれ故郷であるDDTのリングに戻ってきた。THE RAMPAGEが誇る“ハイブリット・パフォーマー”武知海青と組み樋口和貞・正田壮史組と対戦、強さの裏側にある愛情をも見せつける形で、TAKESHITAが正田に勝利した。
「(DDTに対し)気持ち的にはホームというのはないんですが、新日本プロレスではあくまで敵という立ち位置なので、所属ですけどね。(「どこか優しい表情をしていたが?」という問いに)出る団体によって僕は(キャラクターを)使い分けているので、その一つってことですね。(樋口を指名したのは)僕が最後にDDTで負けているのは樋口ですし、この3年間もDDTの試合は追っていて、樋口の持っている本当に高いポテンシャルを引き出したいなって。DDT一本でやっていた時代の僕とかぶるので、覚醒させたい。ここ数か月は、樋口は覚醒し始めていたんですよ。プロレスの深みが増していましたね、樋口和貞のコクが増していたというか。だからこそ、樋口がどんな選手になっているか戦ってみて知りたかったんですよね」
実際、樋口&正田と戦ったTAKESHITAは「嬉しかった」という。
「正田がデビューしたばかりのときに試合(2023.1.3の後楽園ホール大会)をしているんです、ゴールデンルーキーと対戦みたいな感じで。そこからの伸びしろがどれだけあったかというと、ちょっと見えてこなかったんですよね。結果は残しているんですけど、最初からすごかったよな、そこみたいな。でも、実際に今回戦ってみて、プロレスの技術も気持ちの部分も、二人ともかなり成長していて、何より頼もしかったですよね。DDTの年間最大のビッグマッチで戦う2人は、非常に頼もしかったです。(DDTは)大丈夫だなと思って、嬉しかったですよ」
TAKESHITAのDDTでの戦いには、どこか愛情が感じられるように思った。その話をしてみると……。
「僕は子どものころからプロレスが好きで、なんでプロレスが好きかっていうと、やっぱり人が輝く場所だから好きなんですよ。強くなることももちろん好きですよ、趣味・強くなることなので(笑)。でも、強くなりたいだけ、ただ勝ちたいだけだったら、別にプロレスを選んでなかったなあと。色々なスポーツの選択肢がある中で、やっぱりプロレスが好きなのはそこに魅せられたからなので、本当に3団体関係なく、その試合をより良いものにしたいという気持ちにはブレはないですね。
その中でもDDTで後輩と戦うとなったら、より良い試合をするのはもちろん、勝つのはもちろん、プラス戦う選手の能力を引き上げたいという気持ちはありますよ。3団体所属になって、今のスケジュールで戦いのテーマを作るのは一番しんどくて、体のダメージよりも脳みそが一番大変です。そうじゃないと、こうやって日本までの高い航空券を取ってもらって帰ってくる意味はないですし、今の僕のポジションではお客さんのために、相手選手のために、そして自分のためにも納得いくものを出していきたいですよね」
そしてパートナーの武知は、試合後TAKESHITAの差し出した右手をパンと叩いた。その瞬間、TAKESHITAの形相が“温和なお兄さん”から“鬼”のように変化した。
「素晴らしい、最高だと思います。僕はチームなので、武知君がやられているときもあまりカットに入らず、基本的に見守っていたんですよ。そこで試合が終わるような選手ではないので、やられている姿をコーナーから見守りながら『こいつはすごいな』と改めて思いましたね。配信で見ているときからすごいなと思っていましたけど、実際コーナーという一番近い距離で見ていて『これはすごいわ』と。それで、THE RAMPAGEのゲストとしてリングに上がっているなら、握手をしたと思うんですけど、プロレスラーでもトップに行きたいというメンタリティーだから握手を払ったと思うので、じゃあ俺もそのつもりで行くよと。これからは俺もそのつもりで接するよという風に思った次第です。次はどこかでシングルがあるかもしれないですよね、まあTAKESHITAを味わうならシングルが一番いいですから」

上野勇希とのシングルがあるならDDTの歴史の中で最大の大会で
その両国大会で、高校時代の同級生でもある上野勇希が鈴木みのるを破り、自身の持つKO-D無差別級王座の防衛に成功し、DDTユニバーサル王座をも奪取し二冠王になった。その上野からは「DDTが東京ドームに行く」という言葉も飛び出した。
「(上野との二冠戦が)できたらもちろんベストだと思いますけど、もしそれをやるなら年間最大のビッグマッチではなくて、DDTのこれまでの歴史の中で一番大きい大会でしたいですね。DDTももうすぐ30周年ですからね、東京ドームクラスじゃないと、とは思っていますよ。彼(上野)も結構なビッグマッチのメインやタイトルマッチを経験していますけど、やっぱり上野には感情移入してしまうので他の選手より厳しく見てしまうんです。僕、上野のメインイベントを見て満足したことなかったんですよ、今まで。でもこの間の鈴木みのる戦の上野は、初めて一選手として、あとは一同級生として、初めて誇らしかったですよ。なので、本人が今までのタイトルマッチと今回の鈴木みのる戦というのは“違う自分”だったかを気づいているのかどうか。もし気づいていたら、一気に進化する可能性があるなと。この1か月の平田騒動(平田一喜が『いつでもどこでも挑戦権』を行使し、上野からKO-D無差別級王座を奪ったおよそ1か月間)で、上野勇希わかってきたな、これチャンスだなと思って見ていて、完成形が見えてきたというか、この形を大きくしていけば上野とシングルマッチをする必要性が出てくるなと思いました」
最後にこれからのTAKESHITAの展望を聴いてみた。
「ずっとはできないですよね、今の状況は。やれるだけやってやろうと思っていますよ、ただずっとはできません。(3団体所属の)この時間は永遠には続かないので、僕自身『儚いな』と思いながらやっています。ちゃんと頑張る方向性を見失わないように、やっていかないとなと思っていますね。色々な選手と戦って、より良いものを作ることでより良いプロレス界になると信じていますので、アメリカやメキシコの熱気に負けないようなものを作るためにも僕が一石投じていこうと思っている次第です」
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