渡米から3年…異例の日米3団体所属となった竹下幸之介がオカダ&中邑真輔から受けた刺激と学び

2022年春。一人の将来有望なレスラーがアメリカへ旅立った。DDTの最高峰であるKO-D無差別級王座を遠藤哲哉に奪われた竹下幸之介は、自らチャンスを掴みに行った。そして、その後の活躍は誰もが認めるところだろう。前代未聞のDDT・AEW・新日本プロレス三団体に同時所属し、真夏の最強戦士決定戦『G1 CLIMAX 35』を制覇、そしてIWGP世界ヘビー級王座を奪取。KONOSUKE TAKESHITAインタビュー前編は、AEWと新日本プロレスで戦う彼の思いを聴いた。

AEW参戦から新日本プロレスでの活躍について語ったTAKESHITA【写真: 橋場了吾】
AEW参戦から新日本プロレスでの活躍について語ったTAKESHITA【写真: 橋場了吾】

10年のプロレスキャリアをリセットしてよかった

 2022年春。一人の将来有望なレスラーがアメリカへ旅立った。DDTの最高峰であるKO-D無差別級王座を遠藤哲哉に奪われた竹下幸之介は、自らチャンスを掴みに行った。そして、その後の活躍は誰もが認めるところだろう。前代未聞のDDT・AEW・新日本プロレス三団体に同時所属し、真夏の最強戦士決定戦『G1 CLIMAX 35』を制覇、そしてIWGP世界ヘビー級王座を奪取。KONOSUKE TAKESHITAインタビュー前編は、AEWと新日本プロレスで戦う彼の思いを聴いた。(取材・文=橋場了吾)

 KONOSUKE TAKESHITAは2022年3月のDDT・両国国技館大会で、遠藤哲哉にKO-D無差別級王座を奪われた。その直後、TAKESHITAはアメリカ行きをファンに報告、彼の言うところの“遅れてやってきた海外武者修行”に旅立った。

「当時はコロナ禍で、お客さんの数は少しずつ戻ってきたけれども、まだ声援がだめで拍手だけ……僕のプロレスの考え方がすごく洗練された磨かれた時期でした。自分たちがお客さんを盛り上げたいという気持ちはあるけれども、それ以上に自分たちが形にしたいものをリング上で見せないといけないんだという気持ちが固まったんです。やっぱりアメリカはエンターテインメントが戻ってくるタイミングが早くて、盛り上がっているのを見たときに、自分が何年プロレスをやるかわからないけれど、行くなら今なんじゃないかなっていうのが頭によぎって。それからは、どうやったら(アメリカへ)行けるかを考えていました。

 これ、ちゃんと話したことがないかもしれないですけど、実は高木(三四郎)さんに相談したんですよ。僕はプロレスラーになって10年になる年だったので、『10年やったのでアメリカ行きたい』と。そうしたら『行ってきていいぞ』と、否定的なことはまったく言うことはなくて。それで、ある意味、僕のプロレスの師匠でもあるケニー・オメガに何年かぶりに連絡を取って、ダークマッチでいいのでAEWで試合をさせてもらえないかと。そうしたらケニーは『ちょっと掛け合ってみるよ』と言ってくれて、『いきなりTVマッチは無理だけど、ダークマッチでいいなら勝負してみたらどう?』と後押ししてくれて、アメリカに行くことを決めました」

 AEWは1軍・2軍・3軍の住みわけがはっきりしているそうで、TAKESHITAは3軍からスタートする形となった。2022年4月からの4か月間、TAKESHITAはアメリカに渡る。

「4か月間は短いですけど、“遅れてやってきた海外武者修行”みたいなことだったんですよ。(2022年)8月のDDTのビッグマッチに帰ってくるなら、という感じでOKをもらっていたので、この4か月でダメだったらもう一回後から行くというのは考えていなくて、この4か月で3軍から1軍のスタメン契約までもぎ取れるかという勝負でしたね。やっぱり4か月後というゴールが決まっているので、必死でした。

 その必死さというのは多分、プロレスラーになるまでの過程と一緒でプロレスのキャリアが一回リセットされた感じでしたよ。今、海外で勝負したいなって思っている日本人選手もいるはずなんですよ。でも、リセットされちゃうのが怖いからなかなか踏み出せない人もいると思います。僕がそういう人に伝えたいのは、確かにリセットされちゃうんですけど、僕の場合は10年の経験があるんで、ゲームで言うところの攻略方法がわかっている状態でのリセットなんです。人生レベルでリセットされるわけではなく、“経験”と“記憶”があるのでそこからスタートできるよというのを知ってほしいですね」

 TAKESHITAは「リセットした方が良かった?」という問いに即答で「はい」と答えた。

「それでより経験値もゲットできましたから。アメリカと日本では、特にTVマッチですとスタイルが全然違うので、そこで経験値をドバドバもらうと。なので、この4か月は一番成長できた、進化した4か月でしたね」

IWGP世界ヘビー級王者として東京ドームのリングに立つ【写真:(C)DDTプロレスリング】
IWGP世界ヘビー級王者として東京ドームのリングに立つ【写真:(C)DDTプロレスリング】

新日本プロレスのトップは誰か…僕はあくまで敵でいい

 そしてTAKESHITAは2022年11月にDDTとAEWの2団体所属選手となった。さらには今年1月、新日本プロレスにも所属することが発表され、過去に例を見ない三団体所属選手になった。

「80%は一緒なんですけど、残りの20%は上がる団体によってテイストをに合わせるようにしています。僕の中で 3キャラクター……入場したときから違う3キャラクターなので、それほど難しくはなかったですね」

 そのAEWにおいて、やっぱりTAKESHITAにはオカダ・カズチカについて聴きたかった。同じドン・キャリス・ファミリーの仲間ではあるが、両者の間には常にピリピリした緊張感があり、来年1.4の新日本プロレスの東京ドーム大会では同じリングに上がる。

「僕がデビューした2012年8月、その年の2月にレインメーカー・ショック(凱旋帰国を果たしたオカダが棚橋弘至を破りIWGPヘビー級王者になった一連の流れ)を(会場の)2階席から見ていますからね。2010年代の圧倒的日本人レスラーのトップだと思います。戦ったり組んだりする中で、トップを獲った選手だなと感じざるを得ないですよ。試合前・試合中・試合後すべてにおいてトップのあり方が見られますし、逆に言うと自分がどれだけ今成長できているのかの指標にできるレスラーですね。オカダ選手とリングでやり合うことで、自分のステータスがここまで来ているのかという」

 そしてもう一人、WWEの中邑真輔についても聴いてみた。2024年、TAKESHITAが初めてG1 CLIMAXに出場した際、メンターとして中邑の名前を口にしていた。

「(中邑の名前はあえて出したのか?という問いに頷きながら)アメリカでずっと交流がありますからね。これがまた面白いなと思うのは、世界レベルの日本人トップ選手ってオカダ・カズチカと中邑真輔だと思うんですけど、この2人の経験値は半端ないですよ、実績も。だからこそ、僕たちの世代にとってこの二人と接することが何よりも大きな財産になると思うんですけど、接するにはアメリカに来ないといけない。これが2025年のプロレス界ですよ。なので僕は、タイミングも良かったのかなと思いますよね」

 TAKESHITAは来年1.4の新日本プロレスの東京ドーム大会で、IWGPグローバル王者の辻陽太と、自身の持つIWGP世界ヘビー級王座を賭けたダブルタイトル戦を行う。

「(辻は)新日本プロレスがこれから推すべき選手の一人でしょうね。プロレスラーとして戦っていて楽しいのは成田(蓮)選手、テクニックがあるなと思うのは上村(優也)選手なんですけど、今の新日本プロレスで考えると辻選手なんだろうなと。一番完成度が高いですからね、試合運びもコメントも。2020年以降、多くのトップ選手が抜け、棚橋(弘至)選手も引退する。それらの選手に並ぶレスラーは、今すぐにでもほしいはずなんですよ。ドームにたくさんのお客さんが見に来てくれる中で、これからの新日本プロレスのトップは誰かを見せないといけない。僕はあくまで敵でいいですし、その方がやりがいがあるので。そして僕が強くなれば、僕を倒した選手が新日本プロレスを引っ張っていくんだということを見せられる。かといって、僕は負ける気はないですよ」

(15日公開の後編へ続く)

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