教習所料金は母国の25倍 それでも日本へ 移住した外国人が語る“当たり前じゃない快適さ”
クーデター後の混乱から逃れ、子どもの未来を守るために再び日本へ――。一度は日本を離れた外国人は、なぜ日本に戻ることを決意したのか。日本の安全と便利さの素晴らしさについて、ミャンマー出身の女性が語った。

「日本への再移住を決断」その裏に急変した母国
クーデター後の混乱から逃れ、子どもの未来を守るために再び日本へ――。一度は日本を離れた外国人は、なぜ日本に戻ることを決意したのか。日本の安全と便利さの素晴らしさについて、ミャンマー出身の女性が語った。
栃木・宇都宮市のオリオンコンピュータ株式会社で外国人材サポート部門に所属するミャンマー出身のH・Wさんは、日本に9年間にわたり在住後、一度母国に戻った経験を持つ。
「2012年に留学のため来日し、日本で就職を経験した後、21年に帰国後に結婚しました。もう日本には戻らないと決め、母国で家庭を築くつもりでした。ところが、帰国直後にクーデターが起こり、治安の悪化や物価の急騰、教育環境の停滞が進みました。23年には子どもが生まれ、喜びの一方で『この環境で本当に育てられるのか』という強い不安に襲われました。夫婦で何度も話し合いを重ね、子どもの将来を守るため、日本への再移住を決断しました」
昨年春、先にH・Wさんが入国。家族滞在の申請を経て、夫と子どもを呼び寄せた。
外交面においてロシアや北朝鮮など複数の問題を抱えているとはいえ、母国に比べれば、日本は平和な国そのものだった。
「とにかく『安心』『安全』だと感じました。安心、安全な日本で家族と一緒に不安なく生活できていますので、大変満足しています」
初来日したときから変わらず感じているのは、日本の便利さだ。インターネット環境ひとつとっても、質の高さに驚きを隠さない。
「とにかく、安定したネット環境があることが便利です。例えば、旅行に行くときです。事前にスケジュールを立てておくと、旅行を問題なく楽しむことができます。電車も時間通りに動き、遅れることもありません。宿泊するホテルや食事場所なども、すべて家でゆっくり考えながら計画できるのが素晴らしいと思います」
日本人は“当たり前のこと”と捉えるかもしれない。しかし、海の向こうから見れば、洗練された文化だと受け止められることがある。
生活に溶け込むコンビニエンスストアもしかり。24時間営業が可能なことは、治安の良さを物語っている。
「食べ物もすぐレンジでチンして食べられたり、お湯だけあれば食べられたり。コンビニがたくさんあって自分の行きたいタイミングで行くことができるのも素晴らしい。とにかく、いきなりなくなるものがない」
ミャンマーでは突然、ガソリンがなくなったり停電になったりすることがある。また、レストランに行くと水は有料だ。
「話し出すと止まらないほど、日本はとても便利です」と、H・Wさんは力を込めた。
携帯電話で入手できる情報の豊富さにも目を見張っている。
「携帯は母国でも使えたけど、日本で活用すると調べたらなんでも答えが出てきて驚きました」
自分が分からないことや知りたいことも、誰かに聞かずに完結することができる。
「例えば、買い物だけでなく、市役所などの行政手続きに関する情報も、自分で調べることができます。実際に、夫と娘を日本に呼ぶための手続きも、入国管理局のホームページで確認しながら、自分で申請しました」
もちろん、“文化の違い”を実感することもあった。日本人の働き方や勤勉な姿勢には、驚きとともに戸惑いも覚えた。
「日本人が何でも『頑張る』ことに違和感を感じました。なんでそんなに頑張れるの? 疲れないの? と思いました」

日本で運転免許取得「思ったよりも難しく感じました」
コミュニケーションの習慣も大きく異なった。
「ミャンマーではまったくないわけではないのですが、日本のように朝は『おはよう』、昼は『こんにちは』など、毎日のようにあいさつするのは、なかなか珍しいです。『ありがとう』を言う習慣もありません。何に対してもあいさつや感謝の気持ちを伝えていて不思議な感覚でした。それと同時に日本の素晴らしさを改めて感じました」
物価については、極端に高いとも安いとも感じていない。
「すごく高いと感じることはありませんが、安いと思うこともありません。いただいているお給料がありますので、それで生活していけるので現状に不満はありません」
最近、H・Wさんは教習所に通い、普通自動車第一種運転免許(AT限定)を取得した。通学で短期21日間、総額36万円だった。ミャンマーでは、学科は最短で7日間(1日90分)で修了でき、費用は仮免を取るまで日本円で7000~1万5000円ほどだ。日本で仮免を取得するまでの費用が半分の18万円だったとしても、ミャンマーと比べると約10倍~25倍程度の費用がかかる計算だ。
「少し高いと感じました。しかし、人生で一度だけの取得と考えれば、それほど高くはないと思います」と受け止めている。
試験については率直な感想を抱く。
「最初は実技が少し難しく感じました。運転に慣れてくると、学科試験のほうが難しいと感じました。学科試験は100点満点中、合格は90点以上です。母国語で運転知識がある方であれば、比較的難しくないと思います。しかし、私の場合、母国語で運転知識が全くなかったため、日本語で学ぶことになり、思ったよりも難しく感じました」
ミャンマーでは教習所のようなところに行くこともできるし、先生が自宅に来て自宅の車で練習することもできる。仮免をもらって3か月たたないと本免許が取れない仕組みだ。日本同様、マニュアルとオートマを選べる一方で、初心者や高齢などのマークは一切ない。そのため周りから見ると誰が初心者、高齢者なのか分からないという。「日本はそういったルールがしっかりできているので安全で素晴らしいですね」と、付け加えた。
現在、H・Wさんは特定技能・技能実習生の生活や就労を支援する仕事に従事している。日本企業を訪問して人材不足の課題を抱える企業に外国人材を紹介する営業活動も担当し、安心して働ける環境づくりに力を注いでいる。
外国人材の需要が高いのは、介護、外食、建設、食品製造の分野だといい、「特に介護業・建設業では、長期的に安定した人材ニーズが高い状況だと感じています」と話した。
今後の目標については、「免許を取得したので、家族とドライブをして日本のまだ行ったことのないすてきな場所に行きたいです。また、私と同じように留学してくる学生、仕事のために来る外国人財に対してしっかりしたサポートをして日本との架け橋になれればと考えています!」と意欲を示した。
クーデターで失われた母国での平穏な暮らし。H・Wさんは家族との未来を第一に、日本でこれからも挑戦を続けていく。
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