「驚き悲しくなりました」インフル感染の外国人が衝撃受けた“日本の助言” 「文化の違いを痛感」

在留外国人にとって日本はどのような国に映っているのだろうか。親切で礼儀正しいという評価がある一方、独特の文化やマナーに戸惑う外国人も少なくない。母国を離れ、日本に長く居住している外国人は、日本人以上に“長短所”を語ることもできる。外国人の滞在経験から読み解く“日本の姿”とは。

来日9年になるM.Hさん
来日9年になるM.Hさん

ミャンマー出身女性が見た日本は“驚きの連続”

 在留外国人にとって日本はどのような国に映っているのだろうか。親切で礼儀正しいという評価がある一方、独特の文化やマナーに戸惑う外国人も少なくない。母国を離れ、日本に長く居住している外国人は、日本人以上に“長短所”を語ることもできる。外国人の滞在経験から読み解く“日本の姿”とは。

 東京・目黒区の制作会社ビット・パークでシステムエンジニアをしているM.Hさんは、2016年にミャンマー・ヤンゴンから来日した。

「もともと海外に行って仕事をすることが私の夢でした。ミャンマーの会社で5年間働き、経験を積みながら海外に行くためのお金を貯めました。当初はシンガポールに行こうと思っていましたが、日本にいる友人から『日本企業の社長がミャンマーに来て採用を行う』という情報を聞いて応募しました。その後、めでたく採用されたことがきっかけで日本に来ることになりました」

 当時は日本語が全く分からなかったため、ミャンマーで約10か月間、日本語の勉強をして準備を整えた。

 日本に到着すると、M.Hさんは、想像していた姿とのギャップに驚いた。

「来日したのが真冬(1月)でとても寒かったです。雨が降るとさらに冷えて『日本はなんて寒いんだろう!』と感じたことを覚えています」

 ヤンゴンは1年を通じて高温多湿だ。さらに気候だけでなく、人々の振る舞いにも衝撃を受けた。

「海外といえば『高いビルが並んでいて、人がたくさんいてにぎやか』というイメージを持っていましたが、日本に着いて最初に電車に乗ったときに乗客がとても静かにしていることにビックリしました。もっとにぎやかな雰囲気で、みんな会話しているものだと思っていました」

 横断歩道での光景も、新鮮に映った。

「横断歩道を渡るときに車がきちんと止まってくれることも最初は驚きました。ミャンマーの場合、交通量が多い場所では車はなかなか止まってくれないので、歩行者が自分のタイミングで渡らなければなりません。それが日常だったので、歩行者のために止まってくれる日本の『歩行者優先』の考え方にとても感激しました」

 日本での生活が始まり、M.Hさんはさまざまな場面で“文化の違い”を実感することになった。

 職場の雰囲気ひとつとっても母国とは大きく異なった。

「日本では仕事中、業務以外の会話をほとんどせず、みんな静かにパソコンに向かって作業しています。ミャンマーでは、同僚と世間話をしたり、時におやつを食べたり、仕事中でもにぎやかに声をかけ合ったりするのが日常でした。日本では静かな中で集中して働くことが大切にされているのだなーと、その姿勢に驚きました」

ヤンゴンの街並み(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ヤンゴンの街並み(写真はイメージ)【写真:写真AC】

インフル罹患…衝撃的だった“隣人への配慮”という習慣

 日本の「謝罪の文化」には考えさせられた。

「ミャンマーでは日常生活で簡単に『ごめんなさい』と言うことはありますが、公共の場や社会全体に対して謝罪がされることはほとんどありません。しかし、日本では電車の遅れや企業の不祥事などに対して、必ず丁寧な謝罪が行われます。テレビのニュースで、企業の代表が頭を深く下げて謝罪する姿を見たとき、とても驚きました。でもそれが相手への配慮や社会的な信頼を守ることの大切さであることを学びました」

 中でも印象的な出来事は来日直後のことだ。

 M.Hさんは流行期の冬、インフルエンザに初めて罹患してしまった。

 日曜日で病院を探すのも大変だったが、さらに戸惑ったのは、同僚からかけられた言葉だった。

「その頃、会社の同僚でもあるミャンマーの友人と一緒に住んでいたのですが、会社の人が友人に『自宅でもマスクをちゃんとつけて。一緒の部屋で過ごさないほうがいいよ』などと話しており、その時は2人ともその言葉にとても驚き悲しくなりました」

 日本では同居人にも感染させない配慮が当然とされる。しかし、ミャンマーでは日本のような「感染を防ぐための隔離やマスク習慣」はほとんど行われていなかった。むしろ病気になった人がいるなら積極的に看病するのが通例だった。

「『あなたが病気になったのが悪いのだ』と責められているように感じてしまいました。今思えば私たちに対する優しさで心配してくれた言葉だったのですが、当時はショックを受けて、これが文化の違いなのだと痛感した出来事でした」

 来日から約9年がたち、「相手に迷惑をかけないようにする」という文化やマナーを理解しているが、当時は「インフルエンザという病気って、そんなに特別な対応が必要なのか……」と面食らったというわけだ。

休日は山登りを楽しんでいる
休日は山登りを楽しんでいる

日本で始めた本格的な登山…ミャンマーの山との違いは

 今ではすっかり日本での生活に慣れ、日常を楽しんでいる。

 会社では、エンジニアとしてウェブアプリケーションの開発に従事。より高度なプログラミング技術を身につけ、システム設計や開発のプロフェッショナルとして成長することを目標に掲げている。「プロジェクトを任せてもらい、自分のやりたい開発言語で自由に進められる環境には感謝しています」と意欲的だ。

 プライベートでは、2021年ごろから登山に熱中。最初は高尾山から始め、北アルプスで本格的にのめり込んだ。「自然や山が好きで、これまでに20以上の日本の山に登りました。特に長野県は山に囲まれ、美しい自然が広がっているので大好きです」。北部にヒマラヤ系の山脈が連なるミャンマーでは日本ほどレジャーとして登山を楽しむ人はいないそうだ。

「日本のような活火山はほとんどありません。また、仏教とナッ信仰(精霊信仰)が融合しており、山頂にはパゴダ(仏塔)が建てられていることが多いです」

 夏山だけでなく、冬はスキーも滑る。

「日本に来てから休日に出かけることが多くなりました。これまでもいろいろなところに行きましたが、まだ日本で訪れていない九州、四国、沖縄を旅行してみたいです。日本各地の自然や文化、食べ物をさらに体験することで、日本の魅力を今よりもっと深く知りたいと思っています」

 働き方改革が進み、オンとオフの切り替えがしやすくなったことも今や日本の強みと言える。

「仕事とプライベートの両方を充実させることで、より豊かな生活を日本で送りたいです」と、M.Hさんは締めくくった。

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