【麒麟がくる】向井理だからできた最期 演出もうなった「目」

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の第24回が20日に放送された。第24回「将軍の器」では、向井理演じる足利義輝の暗殺シーンが描かれた。第24回の演出を担当した佐々木善春氏が、この一幕に込めた思いを明かした。

様々な「目」を見せて散った義輝(向井理)。室町幕府の終焉も近い【写真:(C)NHK】
様々な「目」を見せて散った義輝(向井理)。室町幕府の終焉も近い【写真:(C)NHK】

第24回「将軍の器」では、向井理演じる義輝最期のシーンが描かれた

 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の第24回が20日に放送された。第24回「将軍の器」では、向井理演じる足利義輝の暗殺シーンが描かれた。第24回の演出を担当した佐々木善春氏が、この一幕に込めた思いを明かした。

 佐々木氏が「歴史研究でも注視されるような史料から言い伝えまで、義輝のこの時の様子は数多く伝えられています」と言うように、「永禄の変」での義輝暗殺には諸説ある。佐々木氏は当初、「剣豪である義輝は名刀を畳に何本も刺しておいてそれを取り換えながら戦った」という説を採用し、実際に美術スタッフに立派な太刀を何本も用意するように頼んでいたという。ではなぜ、当初のプランから変更することになったのか。

「考えていく中で、室町幕府の終わりが義輝の死によって近づいていくことを考えると、むしろ死に際に表現の重点を置きたいと考えるようになりました。また、今回の向井さん演じる義輝のはかなげな感じと、『畳に名刀を何本も刺して』というある種ギラギラした感じとは、少し遠い気がしました」(佐々木氏)

 義輝のはかない印象を、これまで「麒麟がくる」という作品全体で貫いてきたリアリズムをベースに表現することを最終的に選んだという。さらに、畳を障子へと変えることで生と死の“紙一枚”越しのはかなさも表現した。

 向井が「今までにない立ち回り」と胸を張った義輝最期の殺陣も、視聴者の心を打った。佐々木氏は「(動きに目が行きがちな)殺陣シーンであるにもかかわらず義輝の目と表情が印象的」と語る。

「覚悟を決め、文言を唱えたあと。太刀を抜いた時。相手に太刀を突き立てたまま鬼気迫る感じでグイっと押し込む。たくさんの者を相手にして疲れているかもしれないけれど、気合をまき直し外へ出ていくときのその目。槍を突き立てられてもなお、あきらめるというよりは、この世の理を知ったような静かな目。わずかな時間の中に変化豊かなたくさんの『目』が表現されたのは、向井さんのこだわりと芝居のなせる業だと思います」(佐々木氏)

 その中でも、佐々木氏には特に印象に残っている向井の“目”があったそうだ。それは撮影を全て終えた向井がスタッフに「演じるのが当たり前と思っていたけれど、撮影の中断によってそうではない何もしない期間を経て、またカメラの前に立つことが出来て、演じられる喜びをひしひしと感じた撮影だった」と話した“目”。佐々木氏はその目を見た途端、義輝が退場する寂しさが一気にこみ上げたという。

「麒麟がくる」の世界観に基づいた演出を貫いた佐々木氏と、見る者を惹きつける向井の「美しさ」があってこそ、最高の最期が実現したことは間違いない。

次のページへ (2/2) 【写真】向井理のコメント
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