上谷沙弥、女子初となるプロレス大賞受賞なるか 後世に「語り継がれる」ための2パターン
MARIGOLD年間最大のイベント、両国国技館大会(10月26日)も終了し、年末に向けて、次なる興味はプロレス大賞を誰が受賞するのか。この点が大きく話題になっていく時期に差し掛かった。今回はこれを考える。

STARDOM×MARIGOLDの行方
MARIGOLD年間最大のイベント、両国国技館大会(10月26日)も終了し、年末に向けて、次なる興味はプロレス大賞を誰が受賞するのか。この点が大きく話題になっていく時期に差し掛かった。今回はこれを考える。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
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本題に入る前に、今月に入ってからSTARDOMの岡田太郎社長と、MARIGOLDのロッシー小川代表を連続で取材する機会を得た。岡田社長は、禁断のMARIGOLDとの絡みに関して「やる時が来たら、僕はやりますよ」と、過去にない発言を口にしたのは驚きだった。
しかしながらこの岡田社長の発言は、あくまで現段階の状況においては、あえて言うならリップサービスの範ちゅうにあるもの。なにせSTARDOMは年商15億円以上の売り上げを誇る、日本においては新日本プロレスに次いで国内2番目のビジネス規模の団体であり、女子プロレス団体だけで考えると、2位以下に大きく差を開いてのダントツで第1位。いわばそのシェアは圧倒的だと言っていい。
もちろん、日本においてはかつての新日本と全日本、K-1とPRIDEのように大きな二つの勢力が切磋琢磨しながら競い合っていたように、競争相手やライバルがいるからこそ、そのジャンルの成長度は高くなっていく。
そう考えれば、STARDOMをおびやかす女子プロレス団体の存在が急務ではあるものの、本音を言えば、日本市場がそうなるにはもう少し時間がかかる。
それでもプロレス界は「絶対のない世界」だけに一寸先のことは誰にも分からないが、現時点でのMARIGOLDはSTARDOMにとって、そこまで喉から手が出る存在にはなっていない。それがわかっているからこそ小川代表は「まずはウチの力をつけないと」と答え、その前にやることがある旨を語っていた。
さらに別の角度から論じるなら、例えば視点を「語り継がれる」という部分だけに重きを置いてみる。その場合、この国のリング上には、大きく言って2パターンの「語り継がれる」が存在すると思う。
一つ目は、ジャイアント馬場VSアントニオ猪木に象徴とされるように、最終的に一騎打ちが実現しなかったからこそ「語り継がれる」パターン。
もうひとつは、最近の例で言えば、那須川天心VS武尊(2022年6月19日、東京ドーム)のように、実現までに7年を要した結果、東京ドームで「50億円興行」と言われるまでの規模に成長させて「語り継がれる」パターンになる。
STARDOMとMARIGOLDがこの後、そのどちらに向かっていくのかは予想できないが、いずれのパターンになろうとも、歴史を振り返りながら、今後の行く末を模索していくべきだろう。
消去法ではなく、高いレベルでの争いになっていかなければ本末転倒
さて、そんなところで話を「今年のプロレス大賞は誰か?」に移すと、昭和100年の今年は、自民党の高市早苗総裁が第104代首相に選ばれ、憲政史上初の女性総理が誕生した、歴史的分岐点に当たる年でもある。
そんな歴史的な分岐点にいるなかで、日本のプロレス界でも、これまで男子しか獲得したことのないプロレス大賞を女子が受賞することになれば、それもまた驚くべき話。裏を返せば、それだけ男子のプロレスラーが軒並み年間を通じて活躍できていない、という証拠でもある。
ちなみにロッシー小川代表は、「女子が取るのはいいと思う」と話しながら、「昔、北斗晶とかクラッシュギャルズの時は(男子を含めたプロレス大賞は)取ってないんですよ。彼女たちは業界を超えて、それ以上にまで行っていたけど、それでも取れていない」と言い、STARDOMの二冠王・上谷沙弥がプロレス大賞に選ばれた場合は、全面的に賛同しかねる雰囲気をただよわせていた。
たしかに「女性の時代」が叫ばれて久しいし、「草食男子」という言葉が広まり始めてそれなりの時間がたってしまった昨今、それがどんなジャンルであれ、男子の世界に女子が大手を振って食い込んでくる流れは止めることはできない。
ともあれ、TBSでの「23年ぶりの地上波生中継」や中野たむを引退に追い込んだ一騎打ちを含め、今年の上谷の活躍が大きな話題になってきたのは誰もが認めるところ。
それでも、せっかくの受賞が消去法ではなく、高いレベルでの争いになっていかなければ、たとえ受賞したとしても意味が薄れてしまう。それでも残り少ない日程のなかでプロレス大賞を近づける、最大の方法がある。
それは、プロレス大賞の選考委員が選ばざるを得なくなるような、文句のない「すごい試合」を生み出すこと。これが一番の近道だと考える。
今年は合計3度にわたって、朱里とSareeeが激闘を展開したが、あのレベルの“凄み”が上谷からダイレクトに伝わってくれば、プロレス大賞への距離は一気に近づくことは間違いない。
となれば、11月3日に大田区総合体育館で行われる、5☆STAR GP覇者・渡辺桃との一騎打ちこそ、自然と注目せざるを得なくなってくる。なぜならこの試合に上谷が勝つことはもちろん、どれだけ重厚なインパクトを残せるのかが鍵になってくるからだ。
もしそのハードルをクリアできれば、必ずやその先に、女性初となるプロレス大賞受賞が待っている可能性は格段に高くなっているはず。
上谷に関しては、せっかく取るなら選考委員による満票を目指し、この一年の努力を実らせてもらいたい。そのためにも渡辺桃戦こそが今年最大の大一番。渾身(こんしん)ファイトで、満天下に自身の存在価値を知らしめることを強く望む。
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