元宝塚トップスター月城かなと、続く連ドラレギュラー「これ以外にできる仕事はない」 ストイックな役者像の裏に本音も

元宝塚歌劇団月組トップスターで俳優の月城かなとが、放送中のカンテレ・フジテレビ系連続ドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(月曜午後10時)に出演。大企業グループ社長の長女でやり手の広報部長を好演している。宝塚時代から確かな演技力とクールビューティーぶりが際立ったが、今回、そのイメージの奥にある本音や、芝居への探求心も明かした。

インタビューに応じた月城かなと【写真:増田美咲】
インタビューに応じた月城かなと【写真:増田美咲】

草彅剛主演ドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』に出演中

 元宝塚歌劇団月組トップスターで俳優の月城かなとが、放送中のカンテレ・フジテレビ系連続ドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(月曜午後10時)に出演。大企業グループ社長の長女でやり手の広報部長を好演している。宝塚時代から確かな演技力とクールビューティーぶりが際立ったが、今回、そのイメージの奥にある本音や、芝居への探求心も明かした。(取材・文=大宮高史)

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 本作は、妻を亡くしたシングルファーザーの遺品整理人・鳥飼樹(草彅剛)が、遺品整理を通して遺族に寄り添い、故人の「最後の声」を届けるオリジナルのヒューマンドラマ。遺品に込められた真実の想いを解き明かされる一方で、愛のない結婚生活を送る絵本作家・御厨真琴(中村ゆり)との、切なくも温かい大人の恋も描かれる。

 月城は、真琴の親友であり、御厨ホールディングス社長の娘で広報部長として働く御厨彩芽を演じている。彩芽は、苗字が示す通り会社の創業者一族に生まれたが、企業の舵取りは兄で真琴の夫・御厨利人(要潤)が担っている。真琴との絆、兄への感情、一見華やかな企業社会を生き抜く姿などを月城がどう演じるかが気になるところだ。さらに、TVer限定のスピンオフドラマ『愛と妄想のロンド』では、彩芽ら御厨家の意外な素顔が描かれる。

――演じる御厨彩芽は、どのような人物だと捉えていますか?

「彼女は複雑な感情を抱えている人ですね。仕事はできるのに、会社の跡取りは長男である兄に決まっているという、自分ではどうしようもない壁があって。予想されるキャリアへの葛藤や、自分が生きたい人生をどこまで貫けるんだろう? という悩みを持っているところは、共感していただけると思います。彩芽自身、その答えが出せないまま生きているので、彼女のこれからの選択にも注目していただきたいです」

――今年4月期のTBS系ドラマ『キャスター』の連続ドラマ初レギュラーに続き、『終幕のロンド』で2作目の連ドラとなります。他にも映像作品に出演される中で、舞台との違いや難しさを感じたことはありますか。

「毎回反省点が見つかって、どのシーンでも『もっとこうすればよかった』と思ってしまいますね。稽古場と違って何度もやり直せないので、限られた時間でベストなお芝居を作る難しさはとても感じています。だからこそ、やり直せないプレッシャーの中で、その1回の撮影にどれだけ力を抜いて臨むかという、バランスが難しいです」

――「力を抜く」というのは、具体的にどういうことなのでしょうか?

「例えば『キャスター』で主演の阿部寛さんも今回の草彅さんも、スッと力が抜けて現場にいらっしゃる印象があります。役として伝えたいことを、シンプルに表現されていました。それが簡単なようで、すごく難しいと思うんです」

――逆に、生の舞台では力がこもる、という感覚はありますか?

「千秋楽まで毎日お芝居を繰り返していると、セリフも身体に染み込んできます。でもだからこそ、お客様に感じてほしいと思ったことなど、役ではない自分の感情も入ってしまう時があります。ドラマはシンプルに、カメラが回っている瞬間を役として生き抜く、が大切ですね。舞台で自分に課していた『もっと深い情感を込めないと』といった責任感を背負いすぎずに、削ぎ落したお芝居をしていきたいです」

「“月城かなと”のイメージを覆していけたら」と語った【写真:増田美咲】
「“月城かなと”のイメージを覆していけたら」と語った【写真:増田美咲】

「苦しいんですが、続けてこられました」

 月城は2009年に宝塚歌劇団で初舞台を踏み、21年に月組トップスターに就任。24年7月に退団した。在団中は端正な容姿と、深い役作りが目を引く芝居心で高い評価を得てきた。インタビュー中、一言ひとこと考えながら丁寧に言葉を紡いでいく。長年向きあってきた演技への真摯な姿勢がうかがえたが、ひとたび自身の内面に話が及ぶと、少し照れたように笑いながら本音を明かしてくれた。

「自分の気持ちを整理して言葉にするのが苦手で、人見知りなんです。楽屋とかセリフを交わさない場所では、もっと自分の人となりを知ってほしいし、皆さんと『お話ししてみたいな』とは思っているんですが(笑)」

――では、そんなご自身の性格は、役作りにはどう影響していますか。

「台本で言うセリフが決まっていますから、俯瞰(ふかん)して考える癖はありますね。よく『この人はなぜ、こう言ったんだろう』『こんな本音、本当は言いづらいかも』とか客観的に考えます。そうやって考えを掘り下げていくと『早く発した方が、自然な会話に見えるだろうな』と考えたりして、お芝居を組み立てていけます。想像したり考えたりするのは、好きですね」

――そのようなストイックに役作りができる原動力は?やはり、お芝居が好きという気持ちでしょうか。

「好きというより……私は、これ以外にできる仕事はないです(笑)。今でも改善点ばかりですが、『芝居でぶつかった壁は、芝居でしか克服できない』と感じてきました。『全然できていないな、向いてないな』と思ったことを、同じ方法で克服しようとしてきて。苦しいのですが、なぜか続けてこられました」

 退団後は、挑戦が続く。昨年11月~12月のソロライブの開催、今年に入るとディズニー映画『白雪姫』のプレミアム日本語吹き替え版で女王役として初の声優業も。そしてドラマやバラエティーにも出演と、表現者として新境地を開拓している。

「“月城かなと”のイメージを覆していけたらいいなと思っています。素顔の自分も思い切って出していって、いい意味でのギャップを感じてもらいたいです」

――退団から1年あまりがたち、宝塚時代とは時間の流れ方も変わったのではないでしょうか。

「これまでは、ずっと先の舞台のスケジュールが決まっていたので、退団してそれがなくなったので、ぽっかり空いた1日があると『休んでる』とちょっと罪悪感を覚えるような時もあります(笑)」

――では最後に、これからの活動のビジョンを教えてください。

「お芝居でも歌でも、ガラっと環境が変わるのかなと想像していたんですが、意外とそんなこともなくて、表現の本質は変わらないと思っています。ただ、現場や作品によって毎回ご一緒する方が違います。その中で自分の心が動いたものをキャッチして、精一杯表現していく。その繰り返しですね」

 仕事に対するストイックさと飾らない本音――そのギャップを知ると、次はどんな場で驚かせてくれるのだろうと、期待せずにはいられない。“人生の第2ステージ”はまだ始まったばかりだ。

□月城かなと(つきしろ・かなと)神奈川県出身。2009年、宝塚歌劇団に入団。21年に月組トップスターに就任した。宝塚での主な出演作に『今夜、ロマンス劇場で』『グレート・ギャツビー』『DEATH TAKES A HOLIDAY』などがある。 24年7月に退団。退団後は幅広く活動。ソロコンサート『de ja Vu』を24年に開催。一方で俳優としては、25年4月NHK-BS『シリーズ横溝正史短編集IV 金田一耕助 悔やむ「悪魔の降誕祭」』、4月期のTBS系連続ドラマ『キャスター』などに出演した。その他、声優として、25年2月公開の映画『白雪姫』プレミアム日本語吹替版で女王役を演じた。

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