【ばけばけ】脚本家・ふじきみつ彦氏、トキと銀二郎へ本音「本当はずっと幸せでいてほしい」

俳優・高石あかりがヒロイン・松野トキを、トミー・バストウがレフカダ・ヘブンを演じるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土曜午前8時)。ヘブンが本格登場する第5週を前に脚本を手掛けるふじきみつ彦氏が取材に応じ、執筆の舞台裏やトキを愛する最初の夫・銀二郎(寛一郎)に込めた思い、また、演劇を一緒にやってきた盟友で、トキの父・司之介を演じる岡部たかしへの思いなどを語った。

脚本家のふじきみつ彦氏【写真:(C)NHK】
脚本家のふじきみつ彦氏【写真:(C)NHK】

クランクイン当日は「イケるという手応え」

 俳優・高石あかりがヒロイン・松野トキを、トミー・バストウがレフカダ・ヘブンを演じるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土曜午前8時)。ヘブンが本格登場する第5週を前に脚本を手掛けるふじきみつ彦氏が取材に応じ、執筆の舞台裏やトキを愛する最初の夫・銀二郎(寛一郎)に込めた思い、また、演劇を一緒にやってきた盟友で、トキの父・司之介を演じる岡部たかしへの思いなどを語った。

 初回にヒロインの父・司之介が丑の刻参りをする斬新なシーンに驚いた視聴者も多かったはず。周囲の反響はどうだったのか聞いてみた。

「面白かったという声を聞きます。クランクインの日でしたので、私もスタジオに行きました。出演者の方にとって最初のシーンの撮影なのでどんな感じになるかを見ていましたが、ノリよく演じてくださったので、イケるという手応えを感じました」

 松野家の婿・銀二郎はトキを愛しながらも貧しさゆえに過度な仕事を背負うなど頑張ったものの結局、出奔した。銀二郎というキャタクターに込めた思いはどうか。

「史実ではトキのモデル・小泉セツさんの最初の夫も、銀二郎と同じように婿になり出奔しますが、セツさんが迎えに行っても夫に拒否され、セツさんが川に身を投げようとした史料が残っています。史実のまま描くと、あまりにもかわいそうで。一瞬でも銀二郎とトキの間には楽しい時間が流れていてほしいと思って、銀二郎を愛情深い、まじめな人として描きました。本当はずっと幸せでいてほしいという思いです。史実もあるので結局別れますが、別れるにしても、お互い好きだけど別れてしまう形にと思いました」

 銀二郎を演じる俳優・寛一郎の印象も聞いた。

「ポーカーフェースなところが大好きですが、時折ぽっと笑う瞬間がまた魅力的。どちらかというとセリフの抑揚をつけないところも好きで、ずっと見ていたいと思う、かなり好きなタイプの俳優さんで、銀二郎を演じてくださりうれしいです」

 続いて盟友・岡部たかしと一緒に朝ドラの仕事をする思いについても尋ねた。

「これが岡部たかしの初めての朝ドラなら私的にはもっと盛り上がったかもしれません。この作品の前に『虎に翼』『ブギウギ』に出ていましたので。1回売れ終わったぐらいのタイミングで、また出ているみたいな感じになっているので感慨はそこまでないです(笑)。でもめちゃくちゃうれしいです。スタッフの方から松野家に僕がよく知っている人を起用しませんか、というお話をいただいて出演となりました。実際、とても助かっていて、いるといないとでは、松野家の雰囲気も変わったでしょうし、筆の進み方も変わったと思います。完全に当て書きができます。そこが一番助かっています」

司之介を演じる岡部たかし【写真:(C)NHK】
司之介を演じる岡部たかし【写真:(C)NHK】

劇中の象徴の1つであるしじみ汁には「思い入れがある」

 司之介を演じる岡部に託したこと、とは――。

「司之介は弱腰で無神経なところもある困った人。岡部とは今も演劇をやっていますが、岡部にいつも渡している役の性格は、いい人で、悪気はないけどすごく失礼な人。僕が書く演劇には必ずそういう人が出てきます。無自覚に失礼なことを言ったり、やったりして周りを困らせる。でも本人は全然、悪いと思っていない。それがちょっとした悲劇や喜劇を生み、見ている人は笑ってしまうという話を書くのが好きなんです。今回も自分の生き方を貫き、現代人には変に思えても本人はまじめに生きている司之介を演じてくれています」

 ここで執筆の舞台裏も聞いてみた。どんな時間帯に書いているのか。

「朝4時に起きて6時頃まで書いて、子どもが起きてきて8時過ぎに保育園に預けに行くので、そこまでお父さんをやる時間。9時から書き始めて午後5時半くらいまで書いたら保育園に迎えに行き、それでまたお父さんの時間になります」

 朝ドラを手掛ける人気脚本家が子育てしながら執筆とは驚きとともに敬服する。

「子どもが生まれる前は時間がたくさんあり土日もフルに使えました。子育てするようになってからは、割り切らないと書けないと思って今の生活サイクルにしました。子どもがいる時間は子どもと絶対にいる。仕事はしないと割り切っています。子どもが寝ている時間、保育園に行っている時間にしか書かないと決めたら集中するようになり、楽に仕事に向きあえるようになりました。仕事量は変わっていないのに仕事の時間は半分。やればできるものだと思っています」

 劇中、しじみ汁がたびたび登場して印象的な存在になっている。

「しじみ汁には思い入れがあるんです。母の実家が松江市にあり、母が里帰り出産して僕は松江で生まれたんです。子どもの頃は祖父母の家に年2回ほど行っていました。しじみ汁は必ず朝か夜ご飯に出てきました。松江について書くとなると、しじみ汁が出てくるのはあたりまえ。今後も出てきます」

 最後に、27日から始まる第5週の見どころをアピールした。

「松江のもっといろんなところが出てきますし、これまでとは雰囲気がガラッと変わります。ヘブンがいろいろひっかき回したりしますので、ぜひ見ていただきたいです。出演者も増えますので楽しみしてください」

 作品は松江の没落士族の娘で、小泉八雲の妻・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描くオリジナルストーリー。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語をフィクションとして描く。

※高石あかりの「高」の正式表記ははしごだか

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください