クマ被害深刻化で『ヒグマ!!』公開延期 社会情勢による異例の判断…“リアルすぎる恐怖”が映した現実
クマによる被害が全国で相次ぐ中、11月21日に全国公開予定だった鈴木福主演の映画『ヒグマ!!』の公開延期が24日に発表された。製作サイドは「現実の被害を真摯に受け止め、安心してご覧いただける環境での公開を」と説明。社会情勢を踏まえた異例の判断に、業界内外で注目が集まりそうだ。

10月24日に公開延期が決定
クマによる被害が全国で相次ぐ中、11月21日に全国公開予定だった鈴木福主演の映画『ヒグマ!!』の公開延期が24日に発表された。製作サイドは「現実の被害を真摯に受け止め、安心してご覧いただける環境での公開を」と説明。社会情勢を踏まえた異例の判断に、業界内外で注目が集まりそうだ。(文=平辻哲也)
映画『ヒグマ!!』は、「闇バイト」と「クマ被害」という現代社会の二つの恐怖を交錯させたサバイバル・スリラー。大学進学を目前に父の自殺をきっかけに人生が一変する18歳の青年・小山内(鈴木福)が、借金返済のため“闇バイト”に手を染めるところから物語は始まる。拉致工作に加わった彼が、森でターゲットの若林桜子(円井わん)と対峙した瞬間、突如現れた“最強のヒグマ”によって状況は一変する――。生き延びるための極限の闘いが、やがて人間の業と恐怖をあぶり出していく。
監督・脚本は『ミスミソウ』の内藤瑛亮氏。リアリティーとエンタメ性を両立させる作風で知られる内藤監督が、オリジナル脚本で“闇バイトVSヒグマ”という前代未聞の題材に挑んだ。
そんな話題作の公開延期が発表されたのは、全国でクマによる被害が深刻化する中でのこと。製作サイドは「現実の被害が続く状況を真摯に受け止め、クマの活動期を避けた時期に公開を調整する」と説明している。映画の延期理由としては、出演者の不祥事や制作上のトラブルが一般的だが、社会情勢に基づく判断は極めて異例だ。
社会情勢が作品に影響を与える例は、近年では『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』(8月1日公開)が記憶に新しい。公開直前にトカラ列島付近で地震が頻発し、一部では延期も懸念されたが、予定通り公開され多くの観客に「命を救う物語」の力強さを届けた。現実と向き合いながらも、人々に希望を託す――。エンターテインメントが持つ本質的な力はそこにある。
『ヒグマ!!』の製作陣は、今回の延期を「作品をより確かな形に磨き上げるための時間」と捉えている。単なる“中止”ではなく、“熟成のための猶予”。観客が安心して映画館の暗闇に身を委ね、スクリーンの中の“恐怖と生命”を真正面から再び感じ取れる日を待ちたい。
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