藤原紀香が明かす夫・片岡愛之助の療養秘話「『笑うと骨がくっつかへんから、笑かさんでくれ!』って」
俳優の藤原紀香が、12月12日から東京・明治座公演を皮切りに全国6か所を回る舞台『忠臣蔵』に出演する。同作は、江戸・元禄時代に起こったかたき討ちを題材にした赤穂浪士たちによる「義と葛藤と信念の物語」。映画監督でもあり、近年は舞台演出にも精力的に取り組んでいる堤幸彦氏が“令和版忠臣蔵”として、演出を手がける。主演の大石内蔵助役を上川隆也、吉良上野介役を高橋克典が演じ、藤原は大石の妻・りくを演じる。藤原にとって堤作品は、2021年の舞台『魔界転生』にお品役で出演して以来2回目。23年の舞台『西遊記』では、釈迦如来役で映像出演も経験している。今回、ENCOUNTは藤原をインタビュー。役にかける思いや夫・片岡愛之助について聞いた。

堤幸彦演出作「女性たちの覚悟や秘めた思いが静かに交錯していく」
俳優の藤原紀香が、12月12日から東京・明治座公演を皮切りに全国6か所を回る舞台『忠臣蔵』に出演する。同作は、江戸・元禄時代に起こったかたき討ちを題材にした赤穂浪士たちによる「義と葛藤と信念の物語」。映画監督でもあり、近年は舞台演出にも精力的に取り組んでいる堤幸彦氏が“令和版忠臣蔵”として、演出を手がける。主演の大石内蔵助役を上川隆也、吉良上野介役を高橋克典が演じ、藤原は大石の妻・りくを演じる。藤原にとって堤作品は、2021年の舞台『魔界転生』にお品役で出演して以来2回目。23年の舞台『西遊記』では、釈迦如来役で映像出演も経験している。今回、ENCOUNTは藤原をインタビュー。役にかける思いや夫・片岡愛之助について聞いた。(取材・文=コティマム)
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――2度目の堤作品で、今回は題材が『忠臣蔵』です。
「もともと堤監督の作品は大好きでした。初めてご一緒させていただいたのが舞台『魔界転生』でした。今回は『忠臣蔵』ということで、やはりうれしかったですね。堤作品の醍醐味は、映像技術や壮大な殺陣アクションだけでなく、重厚な人間ドラマがしっかりとベースにあるところです。そして、『忠臣蔵』は歴史の中に生きた人物の物語。男たちの忠と義の世界が中心にあり、その水面下で、女性たちの覚悟や秘めた思いが静かに交錯していく。そんな人間ドラマが描かれていくのだろうと思います」
――堤さんは制作発表の場で、“令和版忠臣蔵”を「ストレートに描く」と語っていました。
「はい。『忠臣蔵』はこれまで歌舞伎や映画やドラマなど多くの作品が残されていますが、ベーシックな構図が核にあります。今回も、大石内蔵助率いる赤穂浪士たちが仇討ちを果たすという物語はもちろん変わらない。だからこそ、『ストレートに』とおっしゃったのだと思います。しかしながら、『どちらが悪でどちらが正義』ということではなく、『なぜ、彼らは討ち入りをし、死に向かっていったのか』『日本人が何を守り、人間や社会との関係の中でどう生きているか』をにじませる作品になるのではないかと。この時代を生きる人々は、男女ともに相当な覚悟を持って生きていたのだと思っています」
――「覚悟」という言葉が出ましたが、りくは浅野家の再興を目指す夫を支え、その願いが叶わないと分かってからは、離縁して討ち入りを支えます。あえて死に向かっていく夫を見守るのは、現代では理解しがたい感情かもしれません。
「りくは武家の妻です。単に夫を見守る立場ではなく、その運命をともに背負う心構え、武士の妻の覚悟を持っています。永遠の別れを知って受け止め、残された子どもを守っていくことなど、“託されたこと”をしっかり受け止めて生きていく。すごいことですよね。その時代の女性たちの悲しみや苦しみは、現代を生きる私たちには計り知れませんが、人を思い信じる力、すべてを受け止めて前へ歩いていく力というのは、今の時代にも通ずる普遍的なテーマだと思います。その“覚悟”や“愛の形”は、今を生きる私たちにも、大切なメッセージを投げかけてくれる気がします」
――役作りはどのように考えていますか。
「命を懸けることになる夫を信じて見送る妻としての気丈さ、そして、子どもたちへの母の愛の大きさ……。りくというお役を通して、その時代の女性の“静かなる強さ”を感じながら、演じたいと思います。日常の小さな夫婦げんかや、子どものしつけの場面など、現代を生きている我々と同じように、ささいな温かい日常生活は変わらないのだと感じていただければとも思います。りくのことをもっと知りたいと思い、りくの故郷・兵庫県豊岡市を訪れ、調べてまいりました。歴史博物館の学芸員の方にお願いして、分かっている限りのりくの人生を講義していただきました。そして、りくの手紙の筆跡から人物像を想像してみたり、生家跡を歩き、りくがお参りをしていたと言われている地元の神社を訪れたり、遺髪塚に花を手向けたりしました。りくが生まれ育ち、離縁された後に再び戻った豊岡の風を感じてきました。その静けさの中に、りくの息づかいを確かに感じた気がしました」

夫・愛之助を「笑かしてしまった」療養秘話
――『忠臣蔵』といえば、歌舞伎の三大名作に『仮名手本忠臣蔵』があります。ご主人の愛之助さんが上顎と鼻骨骨折のけがから復帰された作品が、今年3月歌舞伎座で12年ぶりに通しで上演された『仮名手本忠臣蔵』でした。愛之助さんは大石内蔵助にあたる大星由良之助に初役で挑みました。今回の紀香さんのりく役に、愛之助さんから反応はありましたか。
「主人に『りくのお役がきましたよ』と伝えたら、とても驚いていました。まさか、この1年の間に夫婦でこのお役が回ってくるとは、『ありがたく、不思議なご縁だね』と。愛之助も堤作品が大好きで、『西遊記』では主演の孫悟空を演じたので、『堤さんの忠臣蔵は、楽しみで仕方がない!』と話していました」
――愛之助さんからりく役へのアドバイスなどは。
「『素晴らしい上川座長がいて、吉良役には克典さんがいて、堤組の信頼のおけるスタッフさん、そして、躍動感あるキャストさんがいるわけだから、とにかく稽古に励み、現場で生まれるものを信じて頑張って』と」
――愛之助さんの療養中はどのようにサポートされましたか。
「正直、けが当初はなかなかの状態でしたので……。入院から帰ってきたら、とにかく好きなものを作って食べさせてあげたいと。自宅療養でリハビリをしていたのですが、食欲があって本当にホッとしました。あとはもう、関西人の性(さが)で、どうしても笑かしてしまうんです。主人から『笑うと骨がくっつかへんから、笑かさんでくれ!』って言われていましたが、なぜか普段から笑いが絶えないドジなことが多くて……。結果、笑かしてばかりでした(笑)」
――紀香さんが「笑かす側」なのは意外です。
「いえ、笑かしているつもりじゃないんです! 私は真剣なんですが、いつも『なんかおもろすぎ』と言われています。なんでやろ(笑)」
――愛之助さんとは、『西遊記』や映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』でも夫婦共演されています。夫婦で出演することに、照れや恥ずかしさは感じませんか。
「これは一般の感覚とは違うかもしれませんが、俳優同士なので、いったんそのお役をやると決めたら、照れや恥ずかしさは1ミリも無くて。そこは、2人で役者としていろいろ話したのですが、感覚がバシッと同じでしたね」
――最後に、舞台『忠臣蔵』を楽しみにしているお客さまにメッセージを。
「とにかく、お客さまに心から喜んでいただける作品をつくるべく、このカンパニーでひたすら稽古に励みます。誠心誠意、大石内蔵助の妻・大石りくとして舞台の上で生きます。『忠臣蔵』は男たちの忠と義の物語ですが、その側面で、女性たちの覚悟や思いなども感じていただければと思います」
□藤原紀香(ふじわら・のりか)兵庫県生まれ。神戸親和女子大英米文学科在学中に『ミス日本グランプリ大会』でグランプリを受賞。卒業後に上京し、以降ドラマ、CM、司会、声優など幅広く活動。近年は舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』『サザエさん』や、『細雪』『怪談・牡丹灯籠』など朗読活劇にも出演。今年は大阪・関西万博 日本館名誉館長として国内外の賓客(ひんきゃく)を迎え、日本の文化を伝えるなど国際交流ボランティアにも尽力。
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