羊文学、初の日本武道館を包んだアットホームな空気感 観客を魅了した幻想的なステージング

3人組オルタナティブロックバンド・羊文学が9日と10日、東京・日本武道館で『Hitsujibungaku Asia Tour 2025“いま、ここ(Right now, right here.)”』のファイナル公演を開催した。9月15日の大阪城ホール公演を皮切りに、ソウルや台北、バンコクなどを回った過去最大規模の同ツアー。その締めくくりとなる舞台は、バンドにとって初の日本武道館だった。満員の観客が見守る中での2daysは、大舞台でありながらもアットホームな雰囲気に包まれていた。本記事では9日公演の模様をレポートする。

羊文学が初の日本武道館公演を開催した【写真:三浦大輝】
羊文学が初の日本武道館公演を開催した【写真:三浦大輝】

10月15日から『Hitsujibungaku Europe Tour 2025』を開催する

 3人組オルタナティブロックバンド・羊文学が9日と10日、東京・日本武道館で『Hitsujibungaku Asia Tour 2025“いま、ここ(Right now, right here.)”』のファイナル公演を開催した。9月15日の大阪城ホール公演を皮切りに、ソウルや台北、バンコクなどを回った過去最大規模の同ツアー。その締めくくりとなる舞台は、バンドにとって初の日本武道館だった。満員の観客が見守る中での2daysは、大舞台でありながらもアットホームな雰囲気に包まれていた。本記事では9日公演の模様をレポートする。

 定刻から遅れること数分。会場が暗転すると、塩塚モエカ(Vo, G)と河西ゆりか(B)、サポートドラマー・ユナ(ex.CHAI)の3人が姿を表した。優しいピアノの音色が会場を包む。10月8日に発売されたばかりの5thアルバム『D o n’ t L a u g h I t O f f』の冒頭曲『そのとき』だ。ピアノの音色、塩塚の静かな歌い出しに、河西のコーラスが重なり、やがてバンドサウンドが鳴り響く。柔らかな音像から一気に厚みを増す展開は、この日のライブへの期待感を高めた。

 2曲目は『Feel』。ラストに塩塚が「ただいま!」と笑顔を見せた瞬間、場内の温度が一段上がった。続く楽曲は軽快なメロディーが心地よい『電波の街』。4曲目の『Addiction』では、緑のライトがステージを照らし、雰囲気を一変させた。

『いとおしい日々』『つづく』とメロウなリズムで会場を優しい雰囲気に包み込む。『マヨイガ』では、塩塚の力強いボーカルに河西の高音コーラスが重なり、美しい声が響きわたった。そして、羊文学にとって初の月9主題歌となった『声』へとつなげていった。

ライブ中に笑顔を見せた塩塚モエカ【写真:信岡麻美】
ライブ中に笑顔を見せた塩塚モエカ【写真:信岡麻美】

 ノンストップで8曲を披露すると、この日最初のMCに突入。塩塚は「本当にありがとう、きょうは来てくれて。アルバムも出せたし、来週からヨーロッパにツアー行くから、あまり帰ってきた気持ちなかったんだけど、みんなに会えてすごい帰ってきた感じがしました」と日本での公演を喜ぶと、河西も「ホッとしました」と続けた。

 塩塚は「いまだに曲と曲の間は謝謝って言いそうになる」などアジアツアーに触れつつ、河西とのゆるいトークを繰り広げた。パフォーマンス中とMC中で異なる表情のギャップも羊文学の魅力の一つだ。

 疾走感あふれるメロディーが印象的な新アルバム収録曲の『ランナー』の間奏では、塩塚と河西が向かい合いながら、音を奏でる。ライブ定番曲の『OOPARTS』では、前奏とともにステージ上のライティングのセットが徐々に降下。スモークとスポットライトで幻想的な雰囲気を醸し出した。

『mother』では羊文学の世界観に観衆がグッと引き込まれていく。『夜を越えて』ではステージ上に配されたミラーボールが客席を照らす。そして、『Burning』『more than words』とアニメ主題歌としてバンド知名度を引き上げた2曲を続けざまに披露。多彩なライティング演出で羊文学の世界観が表現された。続く『mild days』では、先ほどまでのアップテンポな雰囲気から一転。塩塚が優しい笑顔を浮かべながら歌う姿が印象的なシーンとなった。

『GO!!!』の前奏では、ドラムビートをBGMに塩塚が、ここまでツアーを一緒に回ってきたサポートドラマーのユナを紹介し、「ありがとうございました」と感謝を伝えた。そして、「最後の最後にみんなの声も聞いてみたいぞと思って、『一斉に』といったら『GO!!!』って言いたい人は言ってくれると楽しいです」と呼びかけた。サビでは満員の武道館に「GO!!!」のコールが鳴り響き、2人は笑顔でその声を受け止めていた。

『未来地図2025』では、ドラムの音色にあわせて手拍子が巻き起こる。そして、本編ラストとなる『砂漠のきみへ』とつなぐ。温かい拍手に包まれながら、「ありがとう」と頭を下げて、ステージから降りた。

ベースの河西ゆりか【写真:三浦大輝】
ベースの河西ゆりか【写真:三浦大輝】

 会場にはアンコールを求める手拍子が鳴り響く。2人がステージに戻り、大歓声があがる中、新アルバム収録の『春の嵐』を披露していった。

 塩塚は「本当に皆さんきょうは来てくれてありがとうございました」と改めて感謝を伝えた。続けて、「私が中学生のときにYUIさんを見に来た時はその辺で見てたでしょ。高校生の時にシガー・ロスを見に来た時は、その辺で見てたでしょ。チャットモンチーさんの解散ライブを見に来た時は3階のこっちかな」と武道館での思い出を回顧。「という感じで思い出の武道館ではありますけど、いざ自分が立ってみるとけっこうホーム感がある」とアットホームな空気感について語ると、河西も「ね、思った」とうなずいた。

 そして、塩塚は「アルバム出したばっかなんですけど、いろんな曲を作っているので、来年とかお届けできると思うので、これからもよろしくお願い致します」と呼びかけた。

 さらに、「ゆりかちゃんは? 思いの丈」と投げかけると、河西は「私は高校生の時に叔父に連れられて、ポール・マッカートニーのライブを見に来ました。それが最初で最後だった。その時はポール・マッカートニーはジャージでここに立っていてとてもかっこよかったです。うちらもジャージでやりたいかも」と笑いながら振り返った。

 いよいよラスト曲。塩塚が「名残惜しくなってきましたけど本当に次の曲で最後になります。本当に大変な世の中ですけどもハッピーに生きていけますように」と思いを込めて、『光るとき』を披露した。前向きなメッセージが込められた同曲。オーディエンスは体を揺らしながら、かみしめるように聞き入っていた。ラストで2人がステージ中央へ向かって走りながらジャンプ。楽しそうな笑顔を浮かべ、「本当に本当にありがとう」とステージを降りた。

 あっという間の20曲、約100分のステージだった。バンドにとって初の武道館はアットホームで優しい空気感に包まれていた。10月15日から『Hitsujibungaku Europe Tour 2025』を開催する羊文学にとって、この日の武道館公演はご褒美のようなライブだったのかもしれない。集まった観衆が楽しそうに音を奏でる2人の姿を目に焼き付ける一夜となった。

サポートドラマー・ユナとの3ショット【写真:三浦大輝】
サポートドラマー・ユナとの3ショット【写真:三浦大輝】

○『Hitsujibungaku Asia Tour 2025“いま、ここ(Right now, right here.)”』
2025年10月9日東京・日本武道館
1.そのとき
2.Feel
3.電波の街
4.Addiction
5.いとおしい日々
6.つづく
7.マヨイガ
8.声
9.ランナー
10.OOPARTS
11.mother
12.夜を越えて
13.Burning
14.more than words
15.mild days
16.GO!!!
17.未来地図2025
18.砂漠のきみへ
-ENCORE-
EN1.春の嵐
EN2.光るとき

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