「考えさせる」…唐沢寿明が語る“コーチ論” 新作ドラマの現場で若手俳優へ温かいまなざし

俳優・唐沢寿明が、10月17日スタートのテレビ東京系連続ドラマ『コーチ』(金曜午後9時)に主演する。警察小説のドラマ化で、唐沢は若手刑事を“コーチ”する警視庁人事二課所属の謎の男・向井光太郎を演じる。数々の作品で確かな演技力を見せる芝居巧者だけに、今回も期待がかかる。このほどインタビューを実施し、役者・唐沢の今に迫った。全3回掲載し、Part1は演技論や若手俳優への接し方などについて聞いた。

テレ東系連続ドラマ『コーチ』主演の唐沢寿明【写真:(C)「コーチ」製作委員会】
テレ東系連続ドラマ『コーチ』主演の唐沢寿明【写真:(C)「コーチ」製作委員会】

コーチすることの本質

 俳優・唐沢寿明が、10月17日スタートのテレビ東京系連続ドラマ『コーチ』(金曜午後9時)に主演する。警察小説のドラマ化で、唐沢は若手刑事を“コーチ”する警視庁人事二課所属の謎の男・向井光太郎を演じる。数々の作品で確かな演技力を見せる芝居巧者だけに、今回も期待がかかる。このほどインタビューを実施し、役者・唐沢の今に迫った。全3回掲載し、Part1は演技論や若手俳優への接し方などについて聞いた。(取材・文=鍬田美穂)

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 本作は、ベストセラー作家・堂場瞬一氏の同名警察小説が原作。警視庁人事二課から送り込まれた向井光太郎の“コーチ”によって、仕事の壁にぶつかっている若手刑事たちが、仕事でも人としても成長していく姿を描く。唐沢は、その向井役に挑む。唐沢自身、1987年に舞台で本格デビューし、キャリアは40年近くに。現場では若手俳優らに助言を求められることもありそうだが、まずは自身にとって、コーチすることとは? と聞いてみた。

「相手にあれこれ指示するのではなく、考えさせる。それを自ら成功体験につなげていく。やっぱり自分で考えて動かないと、自分のためにはならないですから。言われてできる人は、いっぱいますよね。でも自分で考えてやることは、結構大変なことです。自分が変わらないと、友達も家族も、周りも変わってくれないでしょう。自分で成功体験を積み重ねていくことが大事だと思います」

 人が成長する上で欠かせない本質を突く言葉だけに、若い刑事たちを導いていく向井と、重なる部分が多い印象だ。もっとも本人は、「向井と似ている部分は、そんなにないんじゃないかな」と分析する。

成長させるため「ギリギリくらいまで追い込む」

 基本的に「人は人で、自分は自分」というスタンスで、演技の良し悪しは「個性の違い」と考えている。若くても演技のことは、あまり人に言われたくないものと思っていて、「そこがダメ」といった指摘はせず、アドバイスも控える。だが、今回の現場では積極的に学ぼうとする若い俳優がいたという。

「ロケ先で控室にいたら人質役になる女の子から『どうやったら、いろんな人の役を、その人に見えるようにできるんですか?』って聞かれました。質問されたら現場で若い人にちょっとしたアドバイスをすることはありますね。やはり(先輩に)聞かないのはもったいないですよね。自分では、気づいていないことも多いでしょうし」

 そう明かすと、顔をほころばせた。成長していく姿を近くで目にするのはうれしいのだろう。コーチの資質を感じさせる一方で、改めて演技について持論を展開した。

「ただ台本だけ読んで、そのまま現場に来るようだったらダメ。誰にもでもできるようなことばかりを繰り返していたら、何も変わらないですから。やっぱり自分で工夫し表現していく。そこが面白いし、僕らの仕事の醍醐味だと思うので」

 さらに言葉を続けた。「今回、僕は僕なりにやるので、それを見て(共演する若手俳優も)負けないようにやらないと……。もうギリギリくらいまで追い込むからね。『やばい、このままだと俺は、私は、食われる』とか相当ビビると思いますよ。でも、『頑張んなきゃ。やらなきゃ』って思わなきゃ。じゃないと成長しないでしょう、俳優なんて」と語り、向井役を通じて、後輩への期待を印象づけた。

若手刑事を“コーチ”する謎の男・向井光太郎役に【写真:(C)「コーチ」製作委員会】
若手刑事を“コーチ”する謎の男・向井光太郎役に【写真:(C)「コーチ」製作委員会】

若手刑事役たちへの期待

 作品では向井と対峙する若手刑事がメインとなる回もある。彼らが成長していく姿は見どころの一つだが、それだけに、「プレッシャーもかける」といたずらっぽく笑い、その時の“相手”には発破をかけるそうだ。

「『自分が主役なんだから、ちゃんとやんないと、いろんな人が見ているんだから。大変だね』ってね。もうすごく緊張しているの、みんな(笑)。でも僕もそういう時期がありましたから。やっぱり自分で乗り越えていかないと、自分のキャリアにならないじゃないですか。1話1話、それぞれが主演みたいになるんだから、心して自分のものにしていけば、本当に未来が拓けていく」

 厳しさは愛情の裏返しといったところか。さて、共演者には、選りすぐりの面々が揃った。第1話で最初に向井にコーチされる女性係長・益山瞳役は、倉科カナ。唐沢は「すごくいいですよ。ちゃんと考えていると感じますし、この前の演技もすごく良かったです」と太鼓判を押した。そのほか、刑事役の犬飼貴丈や阿久津仁愛、関口メンディーらにも注目を寄せている様子。特にメンディーに対しては、日々の奮闘を肌で感じているようだ。

「メンディーくんは今、すごく自分で変わろうとしているんですよ。姿勢やモチベーションを、すごく感じます。僕が何か言うことでプラスになるとしたら、助けてあげたいと思います。この作品で一皮も二皮も剥けていかないと、この先結構きついぞ、という意識を持つだけでも随分変わると思います。やっぱり自分で掴んでいくことが大事なので」

 終始、後輩の若手への思いを熱く語る。その温かいまなざしは、まさに“コーチ”そのものだった。

□唐沢寿明(からさわ・としあき) 1963年6月3日生まれ。東京都出身。80年から自主公演などを行い、87年に舞台『ボーイズレビュー・ステイゴールド』で本格デビュー。その後も舞台やドラマ、映画などで活躍。主な出演作は、ドラマではフジテレビ系『愛という名のもとに』(92年)、NHK大河ドラマ『利家とまつ』(2002年)、フジテレビ系『白い巨塔』(03~04年)、テレビ東京系『ハラスメントゲーム』(18年)、WOWOW『フィクサー』シリーズ(23年)など多数。映画では『高校教師』(93年)、『20世紀少年』シリーズ3部作(08年~09年)ほか。プライベートでは、NHK連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』(1988年~89年)で共演した俳優の山口智子と1995年に結婚し、2025年の今年結婚30周年を迎えた。

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