転機は「東宝シンデレラ」グランプリ受賞 実写『秒速5センチメートル』でヒロイン演じた13歳・白山乃愛の素顔
新海誠監督の代表作を実写映画化した『秒速5センチメートル』(奥山由之監督、10月10日公開)で、ヒロイン・篠原明里の幼少期を演じたのは白山乃愛だ。埼玉県出身の13歳、中学1年生。2022年の第9回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、一躍脚光を浴びた新星だ。

映画『秒速5センチメートル』でヒロインの幼少期役
新海誠監督の代表作を実写映画化した『秒速5センチメートル』(奥山由之監督、10月10日公開)で、ヒロイン・篠原明里の幼少期を演じたのは白山乃愛だ。埼玉県出身の13歳、中学1年生。2022年の第9回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、一躍脚光を浴びた新星だ。(取材・文=平辻哲也)
BMW、ベンツにプジョー…人気女優の“多国籍”な歴代愛車(JAF Mate Onlineへ)
原作は、幼少期から大人へと移り変わる主人公たちを3つのエピソードで描く劇場アニメーション。小学生の遠野貴樹と篠原明里の出会いから始まり、互いを強く思いながらも離ればなれになり、時と距離に翻弄される姿を切なくつづる。やがて高校生、大人へと進んでいく二人のすれ違いは「誰もが経験する淡い初恋」として今なお多くのファンを魅了している。
実写版では松村北斗が主演し、高畑充希が共演。白山が担ったのは、その原点となる幼少期の明里だ。貴樹も明里も転勤族の親を持ち、出会いから惹かれ合う。しかし、中学進学に合わせて、明里は栃木・岩舟に引っ越し。貴樹も鹿児島・種子島への引っ越しが決まったことから、貴樹は冬、明里に会いに電車に乗っていく――。出演はオーディションで決まった。当日はその場で台本を渡され、必死に覚えた。
「相手の目を見て話すことを意識しました。実際に明里ちゃんのセリフを話してみて、もっとやってみたいと思ったんです。だから、決まった時は本当にうれしかったです」と初々しく語る。
撮影前には奥山監督によるワークショップが行われた。
「最初は鬼ごっこなどで遊んで緊張をほぐしてもらいました。そのあと、悠斗くん(幼少期の貴樹役の上田悠斗)と話したことを監督が台本にしてくれて、それを演じてみたりしました」。奥山監督からは明里になることも大事だけど、自分らしさも出してほしい」と声をかけられた。その言葉を胸に、原作アニメも最初はあえて見ずに臨んだという。
現場ではアドリブにも挑戦。「監督が丁寧に状況を説明してくださって、自販機で飲み物を選ぶシーンや黒猫とたわむれるシーンではその場で自然に会話を広げることができました」と成長を実感した。「まだ大切な人と離れる経験をしたことがなくて分からなかったのですが、演じているうちに自然に涙が出てきて『こういう気持ちなのか』と思いました」。演じることで新しい感情に出会ったことも大きな収穫となった。
寒さの中で挑んだ雪のシーンは強く記憶に残っている。「すごく寒くて大変でしたが、監督やスタッフの皆さんが支えてくださって乗り越えられました」。共演の上田についても「普段は同じクラスの男の子みたいな感覚で楽しく過ごしていましたが、撮影が始まると本当に貴樹くんにしか見えなくて、すごいなと思いました」と信頼を寄せた。

名前は「母が『いろんな人に愛されてほしい』という思いでつけてくれた」
完成した映画を見たときは「うれしいという気持ちと、『明里として見てもらえるかな』という不安がありました」と率直に明かす。高校生編を演じた森七菜、青木柚についても「切ない恋をすごくきれいに表現されていて勉強になりました」と刺激を受けた。
2022年の「東宝シンデレラ」グランプリ受賞は、小さい頃から俳優を夢見る白山にとって大きな転機だった。「グランプリと聞いたときは夢みたいでした。そのあとテレビに出演して、やっと実感がわきました。友達が『すごいね!』って応援してくれて、とてもうれしかったです」。街で声をかけられることも増え、「もっと頑張らなきゃ」という責任感も芽生えたという。
名前の由来については「お母さんが『いろんな人に愛されてほしい』という思いでつけてくれました」。さらに、バラエティー番組出演時に俳優の武田鉄矢から「『乃』という字は、弓の弦が少し緩んで休みながら頑張る姿を表している」と教えられ、「そんな意味があるんだと知って、すごく勉強になりました」と話す。
特技は習字とクラシックバレエ。「習字は今も続けていて文字を書く仕事で役に立っています。バレエも体の使い方に生かされています」。学校では「英語と音楽が好きです。英語は小4から習っていて楽しいですし、音楽は歌うのが昔から好きです」と無邪気に笑う。
憧れは事務所の先輩で第5回(2000年)「東宝シンデレラ」グランプリの長澤まさみだ。最近は卵焼き作りに夢中で、「おじいちゃんの卵焼きがすごくおいしくて、自分も作りたいなと思い練習しています」と話す。「長澤さんのように幅広い役を演じられる俳優になりたいです。探偵役のように、困っている人を助けるかっこいい役を演じてみたいです」。東宝シンデレラから飛び出した新星は、いま着実に俳優としての歩みを進めている。
□白山乃愛(しろやま・のあ)2012年7月11日、埼玉県生まれ。2022年の第9回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、本格的に芸能活動を開始。ドラマ『Dr.チョコレート』『ゆりあ先生の赤い糸』『Re:リベンジ-欲望の果てに-』『スカイキャッスル』、映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』などに出演。特技は習字とクラシックバレエ。
ヘアメイク:高村三花子
スタイリスト:藤井エヴィ
