小泉進次郎氏、総裁選“本当の敗因” 「こんなこと言っちゃいけない」プロが呆れたステマ問題の最悪対応
4日に行われた自民党総裁選は、大手メディアがそろって「想定外」と振り返るサプライズとなった。それだけ小泉進次郎氏が本命視されていたということだが、なぜ高市早苗氏に敗れたのだろうか。敗因を企業PRの専門家が分析した。

発信力に優れたはずが…精彩欠いた小泉氏
4日に行われた自民党総裁選は、大手メディアがそろって「想定外」と振り返るサプライズとなった。それだけ小泉進次郎氏が本命視されていたということだが、なぜ高市早苗氏に敗れたのだろうか。敗因を企業PRの専門家が分析した。
決戦投票で敗れた小泉氏は、「私の力不足が一番だと思います」と険しい表情を崩さなかった。終盤まで優位な情勢が伝えられながら、高市氏に“大差”で敗れる波乱の結末。総裁→首相就任後に描いていた“構想”は、絵に描いた餅となった。
どうしてこうなってしまったのか。麻生太郎最高顧問の支持が決定打になったとはいえ、発信力に優れた小泉氏は、思い通りの展開を進めていけるはずだった。
しかし、広報の専門家から見ると、予想とは全く異なる経過となったという。元神戸製鋼所広報部長で広報・危機管理コンサルタントの山見博康氏は、小泉氏の敗因について、「一番問題なのは国家観がない。どういう国作りにしたいのか確固たるものが見えなかった。企業からすると、どういう企業にしたいのかということ。それが欠けていた」と指摘した。
総裁選は、企業に例えると、「総裁が社長なら、候補者は役員。役員が社長になりたいと言うのと一緒」と位置づけられる。最近は立候補制で社長を選ぶユニークな企業もあり、いかに社員の支持を得られるかがポイントになるという。
そこで最も大事なのはビジョンとなる。ところが、小泉氏からは国家に対する自身の考えや強い信念を感じることができなかった。選択的夫婦別姓などこれまで訴え続けてきた政策も鳴りを潜め、「あれだけ言っていたのに、全部封印した。前言を翻すような人が社長になったら社員から見れば頼りないと思われてしまう」。安全運転が“裏目”に出たとの見方を示した。
決選投票の演説も明暗を分けた。小泉氏のスピーチは対国民というより、陣営への感謝を中心とした内向きな内容だった。「日本列島を強く、豊かに!」と叫んだ高市氏とは対照的だった。「決選投票になることは陣営も分かっていた。なのに、本人が何を言うか決めてない。かたや高市さんは準備万端ですよ。待ってましたと自らバシッと言った。(小泉氏は)この人、本当に総裁になりたいのかなと思いました」
カンペ問題が常に付きまとい、論戦では“定型文”の回答が目立った小泉氏。しかし、肝心の決選投票ではメモを使わなかった。逆に1年前の総裁選で、石破茂首相に敗れた高市氏は、紙に目を落としながらのスピーチで入念に準備を行っていた。「あそこは紙を見ても広報としては悪くない」と、小泉氏には戦略ミスになった。
やらせ投稿問題で“身内”かばった?
一方で、ステマ問題については、認識の甘さが見えたと受け止める。小泉陣営の広報班長を務めた元デジタル相の牧島かれん氏の事務所が、動画配信サイトに小泉称賛コメントを投稿するよう指示していたことが発覚。作成していた24パターンの文言も物議を醸し、やらせ問題に逆風が吹き荒れた。
ステルスマーケティングは企業からすれば一発アウトの事案だ。しかし、問題の核心は、その対応の仕方だったと山見氏は話す。
「要するに広報部長がチョンボしたわけでしょ。その時の社長(小泉氏)が、『私自身も知らなかったとはいえ、』と強調していた。こんなこと言っちゃいけませんよ。あれだけ大きな問題。ものすごい影響を与えている。広報部長は辞任じゃなく、解任すべきですよ。そして速やかに後任を公表したらよかった」
牧島氏は父が小泉純一郎元首相の秘書を務めるなど進次郎氏の時代まで3代にわたりサポートしてきた。解任とはなかなか言いにくかったのかもしれない。とはいえ、辞任と解任では、大きく意味が違ってくる。ステマ問題の波紋が広がり、党の信頼を揺るがすような失態をたった1人の「辞任」で済ませたことは疑問符がついた。首相となれば、国の危機管理についてもリーダーシップが求められる。「(事務所に)爆弾予告があったから辞任しますって言ったでしょ。事の重大さには何も触れていない」と、小泉氏の釈明に苦言を呈した。
牧島氏は10月4日に、「ネット配信へのコメント書き込みの件により自民党や民主主義のプロセスへの不信感が助長されてしまったことに責任を感じております。お詫び申し上げます」と謝罪した。大事な選挙戦で、広報は重要な立ち位置にある。小泉陣営は代役を立てたものの、総裁選のPR戦略はつまづいてしまった。
巻き返しの手段を失い、ボディーブローのようにダメージを蓄積。頼みの議員票を引きはがされ、決選投票で伸び悩む原因になった。
総裁選の最中、SNSで「#変われ自民党」と記して投稿を行ってきた小泉氏。高市政権の下、捲土重来の時はやってくるのか。
