4歳で初舞台の早乙女太一、20歳で「役者をやめようと思っていた」 明かした本音と人生観
俳優・早乙女太一が、9月19日より長野・松本、大阪、東京の全国3か所で上演される2025年劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演 チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』(作・中島かずき/演出:いのうえひでのり)に出演している。劇団の人気シリーズ・いのうえ歌舞伎の新作で、早乙女は女方の夜三郎役に挑む。劇団の舞台へは8度目の登場となり、“準劇団員”と呼ばれるほど馴染んできた今、共演俳優らの熱い芝居心に触発され、さらに表現力に磨きをかけている。

『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』に出演
俳優・早乙女太一が、9月19日より長野・松本、大阪、東京の全国3か所で上演される2025年劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演 チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』(作・中島かずき/演出:いのうえひでのり)に出演している。劇団の人気シリーズ・いのうえ歌舞伎の新作で、早乙女は女方の夜三郎役に挑む。劇団の舞台へは8度目の登場となり、“準劇団員”と呼ばれるほど馴染んできた今、共演俳優らの熱い芝居心に触発され、さらに表現力に磨きをかけている。(取材・文=大宮高史)
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「劇団☆新感線で、初めて人を殺さない役が来ました。いつも闇が深かったり、業を背負うような、孤独な役をさせてもらっていたので、それに比べれば今回の夜三郎は気楽でさっぱりしていて、かわいげのある奴です。緊張や重荷はほとんどないですね」
『爆烈忠臣蔵』は、江戸時代が舞台。忠臣蔵を上演するため、愚かしいほど芝居作りに奔走する役者たちの情熱をユーモアたっぷりに描いた活劇だ。早乙女は、女方の役者・夜三郎役で、老中・水野忠邦による質素倹約令がまかり通る江戸で、歌舞伎の上演を許された橘川座の座長の息子という設定でもある。劇団☆新感線の8作目の出演で、初の女方となった。
「中島かずきさんから『今回は女方をやってもらうけど』と言われるまで、まさか新感線で女方の役をいただくとは思っていませんでした。でも初めて新感線に出演した『蛮遊幽鬼』(2009年)では、女性に化けて潜入している殺し屋の役をやったので、ちょっと大きく一周回ってここで原点に帰った感覚もあります。衣装の早着替えも多いですが、楽しもうと思います」
“楽しさ”はこの『爆烈忠臣蔵』のエンタメ性の根幹を成すようだ。タイトルに“チャンピオンまつり”とあるように、今作では随所に歌舞伎や劇団の演目のオマージュやパロディーが散りばめられている。
「舞台の上では皆ふざけていますけど、いい話なんです。幕府に弾圧される中で役者たちの芝居に向き合う覚悟を描いていて、『役者が役者を演じる』という恥ずかしさもあります。笑いが多い脚本なのも、やる気をストレートに見せるのは恥ずかしいという、中島さんや僕らの照れ隠しでもあります」
コミカルな芝居となると、役にも愛嬌がにじむ。一昨年の劇団☆新感線『天號星』では、古田新太の藤壺屋半兵衛と人格が入れ替わってしまう殺し屋の宵闇銀次を演じた。銀次としてはあくまで冷酷なのに、弱気で妻に頭が上がらない半兵衛はかわいげのある、情けないキャラクターだった。今作の表現も注目される。
「当時は銀次よりも、古田さんの半兵衛になっている時間の方がよほど長かったですね。とにかく幅広い芝居ができたので、『ひと役だけだと物足りなくなるかも』と思えたほどだったんですが(笑)、今回は劇中劇がたくさんあるので楽しそうですね。女方も立ち振る舞いも歌舞伎の方から指導をいただきましたが、僕は所詮インチキなので(笑)。インチキなりに、真面目にやろうと思います」

「人間なのか、動物なのか」衝撃受けた先輩俳優
そんな早乙女が、「10代前半の頃に見た舞台で『あんな人間見たことない』」と衝撃を受けた劇団員がいる。今作では、娘のお破(小池栄子)に芝居を教え込む、江戸で活躍した大物役者・荒村荒蔵を演じる橋本じゅんだ。
「初めて客席で見た橋本じゅんさんからは、人間なのか、動物なのか得体の知れないエネルギーを感じました。一緒に舞台を作るようになってからも、やっぱり唯一無二の個性を放つ人だなと思います。今回も稽古場でじゅんさんと小池さんの芝居を見ていると、何でもない場面なのに面白いんです。真似しようと思ってもできないですね」
そう感慨深く明かした。さて、今作で45周年を迎えた劇団☆新感線にちなみ、“45歳の早乙女太一”のビジョンを問うと、意外な人生観がかえってきた。
「あまり、将来を考えたことがないんですよね。そんなに深く考えないんですが、未来予想そのものが苦手なんです。年を重ねても役者をやっている自分が想像できないし、『そんなに長いこと、俳優をやれるのか?』と思ってしまいます」
この感覚は、実は今に始まったことではないといい「20歳になったら、役者をやめようと思っていました」と振り返る。
「結果的に役者を続けているわけですが、全て『続けよう』と意図的に選んできたものではなかったです。今しかできないこと、今やりたいことが、その時々にどんどん見つかって、とにかく目の前の作品と向き合ってきました。確かに、いい評価をいただいて次の出演につながった経験もありますが、いくら頑張っても未来をコントロールすることはできないですからね」
それでも時代劇でも現代劇でも、ジャンルを問わず彼の芝居は求められ続けている。今年は時代劇専門チャンネルで7月から放送の『鬼平犯科帳 暗剣白梅香』に刺客の金子半四郎役で出演し話題に。芸の蓄積は、確実に彼の人生をつないできた。
「もし将来、舞台に立っていなくても、モノづくりが好きなので、何らかの形で演劇にかかわっているかもしれません。それに、今作の稽古場で60代や50代のキャリアを重ねた人たちが身を削ってやっていることにも勇気づけられるんです。稽古場で見ていて、笑いながら感動しているんですが、それはその人たちの生き様が見えるからだと思います。あ、でも、30年後、古田さんくらいの年齢になったら、こんなに身体を酷使したくはないですけどね(笑)」
稽古場で刺激を受けながら、自身の青写真を描く。そして、今作について改めて「新感線の先輩方の人生が投影された、ノンフィクションのようにも見える舞台なので、僕もその中で失礼のないようにやりきりたいですね」と誓った。
役者たちが本気で泣いて笑うこの舞台で、早乙女が自分なりのユーモアや情熱で魅せる。
□早乙女太一(さおとめ・たいち) 1991年9月24日、福岡県生まれ。大衆演劇の劇団「劇団朱雀」の二代目として4歳で初舞台を踏み、全国で公演を行う。2003年に『座頭市』で映画初出演。09年に『蛮幽鬼』で初めて劇団☆新感線の舞台を踏み、今作で8作目の出演になる。その後も映像や舞台に出演。主な出演作は、ドラマは21年度後期のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』、22年朝日放送『封刃師』、テレビ朝日系『六本木クラス』、25年DMM『ドンケツ』、WOWOW『怪物』、時代劇専門チャンネル『鬼平犯科帳 暗剣白梅香』ほか。映画では、『仕掛人・藤枝梅安』(23年)、『帰ってきた あぶない刑事』(24年)など。舞台にも多数出演。今後はNetflix『イクサガミ』(11月配信予定)、映画『パリに咲くエトワール』(26年3月13日公開予定)などに出演予定。
【公演情報】
2025年劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演
チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎
『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』
【作】中島かずき
【演出】いのうえひでのり
【出演】古田新太 橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと 羽野晶紀 橋本さとし/小池栄子/早乙女太一/向井理 他
【松本公演】9月19日(金)~23日(火祝) まつもと市民芸術館
【大阪公演】10月9日(木)~23日(木) フェスティバルホール
【東京公演】11月9日(日)~12月26日(金) 新橋演舞場
