IZ*ONE出身の矢吹奈子、俳優として躍進する現在 “かわいい”イメージを裏切る芝居に意欲
HKT48・IZ*ONE出身の矢吹奈子が、現在放送中のMBS・TBS系連続ドラマ『君がトクベツ』(MBS:火曜深夜0時59分、TBS:火曜深夜1時28分)で、人気アイドルとの恋に燃える新進女優を熱演している。6月公開の同名映画に続くドラマ版で、原作の少女漫画をリスペクトする役作りを研究した。今夏にはミュージカル『ブラック・ジャック』で主要キャラクターのピノコ役も経験し、この1年で俳優としての躍進ぶりが目覚ましい。

少女漫画原作『君がトクベツ』で人気女優役
HKT48・IZ*ONE出身の矢吹奈子が、現在放送中のMBS・TBS系連続ドラマ『君がトクベツ』(MBS:火曜深夜0時59分、TBS:火曜深夜1時28分)で、人気アイドルとの恋に燃える新進女優を熱演している。6月公開の同名映画に続くドラマ版で、原作の少女漫画をリスペクトする役作りを研究した。今夏にはミュージカル『ブラック・ジャック』で主要キャラクターのピノコ役も経験し、この1年で俳優としての躍進ぶりが目覚ましい。(取材・文=大宮高史)
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『君がトクベツ』は、幸田もも子氏の同名漫画が原作。イケメン嫌いの陰キャ女子・若梅さほ子(畑芽育)と、国民的アイドルグループ・LiKE LEGEND(通称:ライクレ)のメンバー・桐ケ谷皇太(なにわ男子・大橋和也)の恋模様を描いたラブコメディーで、ドラマは映画の後日談から始まる。さほ子と皇太のラブストーリーの続きや、矢吹が演じる期待の若手女優の七瀬えみかと、ライクレのメンバー・遊馬叶翔(FANTASTICS・木村慧人)との仲も接近し……。作品で見せる、矢吹の華と愛嬌に期待が高まる。
――ドラマ版では、映画から踏み込んで、えみかと叶翔の関係性がより深く描かれます。ドラマならではの、えみかの魅力はどんなところに感じましたか。
「えみかって、自分の気持ちをうまく伝えられない不器用な部分があるんです。思いを素直に表現するのが苦手なところが、すごくかわいらしいなって。彼女は、さほ子のことを恋のライバルと勘違いしているので、時にはきつい言い方をしてしまう場面もありますが、それでも愛されるキャラクターとして見てもらえるようなお芝居を頑張りました」
――そんなえみかを演じる上で、一貫して大切にしていたことは。
「とにかく、叶翔くんについては一途なところですね。映画版では、皇太が活動休止になるかもしれないと、皆で心配しているシーンがあるんです。そこでもえみかは、『叶翔くんが出ている連ドラの撮影ができなくなるかも……』と彼のことを考えています。グループ活動のピンチなのに(苦笑)。彼女にとって、叶翔くんは芸能界に入る前からの最高の推しなので、ドラマでもその思いの強さは表現したいですね」
――原作で、えみかが「大きな目がコンプレックスだった」と話すセリフがあります。こういった、原作のビジュアルは意識しましたか。
「幸田先生の原作が大好きだったので、台本で同じセリフが目に入った時、うれしかったとともに『どうしよう!』って思いました。お芝居の間、ずっと目を大きく見開いているって無理じゃないですか(笑)。それに『大きな目がコンプレックス』って、普通の人には思いもよらない悩みなので、えみかがうらやましいです。メイクさんも私をかわいく仕上げてくださったので、彼女のビジュアルに少しでも近づけよう、と頑張って表情を作りました」
――少女漫画らしい、かわいさや輝きを役作りで意識したのですね。
「私が韓国で活動していた時(IZ*ONE時代)に、『世界で一番大きい妖精』というあだ名を付けてもらったことがあります。なんだかステキな表現だなと思って、今でも気に入っています。だから『えみかのかわいさも私ならできる!』と自負していました。具体的には『目に光が宿っているように』も意識しました。ショックを受けるようなシーンなら、逆に目に光がなくなるようなお芝居もやってみました。彼女は、特にプライベートでは意識して『かわいい女の子』を演じている面があると思っていて、その健気さも愛おしく思ってもらえたらうれしいです」
――ほか、矢吹さん自身、えみかに憧れたところは。
「『カボチャの馬車もガラスの靴もいらないから、私が迎えに行く』というセリフがあって、欲しいものは自分の手でつかみにいく強さもある子です。かっこいいなと思います。演じて一番好きだったシーンが、叶翔くんへの思いを、みんなの前でスピーチのように話して、『よし、気持ちを伝えに行くぞ!』と決意する場面です。普段の私と正反対の強さを出したシーンですし、特に気持ちを込めたので思い出に残っています」
――ご自身はえみかとさほ子、どちらのタイプに近いと感じますか。
「もしかしたら、さほ子かもしれないです。結構“陰キャ”かも(笑)。多分、皇太と叶翔くんだったら、皇太の方に惹かれると思います。逆に、叶翔くんのオラオラした性格は、えみかにはすごく刺さっているんですけど、私にとっては、なかなか刺激が強かったです(笑)」

ミュージカル『ブラック・ジャック』で得た手ごたえ
『君がトクベツ』は、昨年、映画とドラマを通しで撮影した。そして今年、矢吹は自身初の本格的ミュージカルとして『ブラック・ジャック』(全国6都市で6月下旬~8月初旬に上演)に出演。主演の坂本昌行が演じるブラック・ジャックの良き相棒・ピノコを演じた。知名度抜群のこのキャラクターを、愛情を持って演じたことで発見もあった。
「すべてが特徴的な女の子ですよね。見た目は5歳だけど心は18歳の子ですから、立ち振る舞いから声の出し方、歌い方まで、今までと全く違う表現が求められました。歌もわざと音程を外したりと、技術的な部分では苦戦しました。でも『なこちゃんのピノコが良かった』という言葉をたくさんいただけて、本当にうれしかったです」
――『ブラック・ジャック』は、昨年1月に上演した朗読劇『ラヴ・レターズ~2024 New Year Special~』以来の舞台でした。
「久しぶりの舞台で、それまでとお芝居の作り方が全く違いました。稽古場でたくさん練習を重ねて、それを生の形で届ける、という経験は新鮮でしたし、本番では毎日お芝居を変えることもできました。それは、お客さんの反応を肌で感じることができたおかげなんですね。稽古場で思いつかなかったアイデアがどんどん浮かんできたのは、生のお芝居ならでは、でした」
――その経験は、今後の俳優業にも生かせそうですか。
「そうですね。これまでは、自分の中で固くプランを決めて演じていましたが、今回のピノコのおかげで、もっと自由に、その場の空気を感じながらお芝居をしてもいいんだ、と思えるようになりました。今後の映像の現場でも、今までとは違う表現のアプローチができそうです」
――では最後に、俳優として今後挑戦していきたいことを教えてください。
「小柄でもあるので、まだ、私に『かわいい』というイメージを持っていただけているかもしれません。それもうれしいのですが、(イメージを)良い意味で裏切っていきたいですね。シリアスな作品にも挑戦したいですし、心を揺さぶるような深みのあるお芝居ができることが目標です。そのために、これからも一つひとつの経験を大切にしていきたいです」
□矢吹奈子(やぶき・なこ)2001年6月18日、東京都生まれ。13年8月、HKT48の第3期生オーディションに合格し、翌年4月よりチームHとして活動を開始。15年9月からは、AKB48のチームBとも兼任する。18年には韓国で開催されたオーディション番組『PRODUCE 48』に参加し、グローバルガールズグループ・IZ*ONEとしてデビュー。21年4月にIZ*ONEとしての活動期間を終了。HKT48に復帰後、23年4月にHKT48を卒業。同年10月期の朝日放送・テレビ朝日系『18歳、新妻、不倫します。』で連続ドラマ初ヒロインを務める。25年は1月期のTBS系連ドラ『御上先生』や、今夏上演のミュージカル『ブラック・ジャック』などに出演。12月から26年1月にかけてミュージカル『サムシング・ロッテン!』にも出演する。
