88歳・北島三郎、車いすに座ったまま熱唱「魂を込めて」 恩師・星野哲郎氏の生誕100年記念公演で元気な姿

『三百六十五歩のマーチ』『みだれ髪』などで知られる作詞家・星野哲郎氏(享年85)の生誕100年を記念したコンサートが29日、東京・渋谷区のLINE CUBE SHIBUYAで開催された。タイトルは「令和・歌の祭典2025~作詞家星野哲郎生誕100年記念~時代を彩る名曲の数々」。星野氏と関わりの深い北島三郎、小林旭、里見浩太朗、水前寺清子らが出演した。最高齢88歳の北島は「魂を込めて歌いたい」と言い、車いすに座ったまま熱唱した。

コンサート前に会見した出演者。前列左から里見浩太朗、北島三郎、小林旭、水前寺清子。後列左から鳥羽一郎、大月みやこ、小林幸子、瀬川瑛子【写真:ENCOUNT編集部】
コンサート前に会見した出演者。前列左から里見浩太朗、北島三郎、小林旭、水前寺清子。後列左から鳥羽一郎、大月みやこ、小林幸子、瀬川瑛子【写真:ENCOUNT編集部】

小林旭、里見浩太朗、水前寺清子らも出演

『三百六十五歩のマーチ』『みだれ髪』などで知られる作詞家・星野哲郎氏(享年85)の生誕100年を記念したコンサートが29日、東京・渋谷区のLINE CUBE SHIBUYAで開催された。タイトルは「令和・歌の祭典2025~作詞家星野哲郎生誕100年記念~時代を彩る名曲の数々」。星野氏と関わりの深い北島三郎、小林旭、里見浩太朗、水前寺清子らが出演した。最高齢88歳の北島は「魂を込めて歌いたい」と言い、車いすに座ったまま熱唱した。(取材・文=笹森文彦)

 星野氏は1925年9月30日に、山口・周防大島町で生まれた。同コンサートの翌日が生誕100年。それを記念したコンサートで、北島を筆頭に、ベテランから若手まで総勢24組が集結した。

 開演前に、北島、小林、里見、水前寺、瀬川瑛子、鳥羽一郎、小林幸子、大月みやこが会見した。頸椎(けいつい)の病などで車いすで登場した北島は「哲様(愛称=てっさま)に数々の詞を書いてもらい、一生懸命歌ってきた。魂を込めて、星野先生を思い出しながら歌いたい」と誓った。

 その言葉を受け、星野氏の『昔の名前で出ています』が代表曲の小林旭も「そう。魂の歌を(観客に)聴かせよう。詞に込められた歌の魂を聴かせようと努力するのが、我々の使命」と語気を強めた。

 水前寺も持病の腰痛で車いすだったが、「一生懸命やります。はい!」と元気に答えた。代表曲『兄弟船』を星野氏に書いてもらった鳥羽は「これからも塩(海水の意味)の歌の、『塩歌』を歌って行きたいです」と言葉に力を込めた。

 星野氏の夢は船員だった。46年に高等商船学校(現・東京海洋大)を卒業し、トロール船に機関士として乗ったが、腎臓結核で下船。腎臓の一つを摘出した。闘病生活をへて、52年に活路を見い出すために応募した雑誌の募集歌に入選したのが、「星野哲郎」の誕生だった。

 その後、星野氏は「演歌(えんか)の詩人」として、「縁歌・遠歌・援歌」をつづった。「縁歌」は人と縁を歌う。かつて同氏は「北島サブちゃんや水前寺君は、良く歌ってくれる人との出会いだった」と話していた。

 北島の代表曲『兄弟仁義』は、星野氏と北島の強い縁と絆の歌である。星野氏がレコード会社の日本コロムビアから、新興の日本クラウンに移ることになった。当時、作家は専属制で移籍は容易ではなかった。星野氏と同じ日本コロムビアに所属していた北島に、星野氏が関係者と移籍を伝えに行った際、星野氏は無言だった。そのシーンを題材に「♪俺の目をみろ 何にもゆうな」の歌詞が生まれた。この日は同曲を黒川英二と松尾雄史が歌った。

「遠歌」は「遠くにありて歌い、遠くをしのぶ歌」。海の男が病に倒れ、海を失った。その望郷に似た思いを詞に託して『函館の女(ひと)』(北島)、『兄弟船』『女の港』(大月)が生まれた。この日は『函館の女』をはやぶさと一条貫太が歌った。

「援歌」は「人を励ます応援歌」。かつて「病気というものを踏み台に、参考にし、失ったものを取り戻したいと思っている」と語った星野さんの苦闘の経験が、『三百六十五歩のマーチ』(水前寺)になった。その思いも受け、オープニングで出演歌手全員と満員の観客1800人とで歌った。

 星野さんの歌詞は、出だしが無意識に口をつくほど出色だった。

<歌詞>三日おくれの便りをのせて…『アンコ椿は恋の花』

<歌詞>親の血をひく 兄弟よりも…『兄弟仁義』

<歌詞>この坂を越えたなら しあわせが待っている『夫婦坂』

<歌詞>ぼろは着てても 心の錦…『いっぽんどっこの唄』については、学生が「ことわざ」と信じたほどの名文句だった。

 生前、星野氏は「この一行に命を懸けているのですから」と話していた。この日、出演した全ての歌手が、星野氏の歌詞を魂を込めて歌い上げた。

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