【スターダム】ついに巻いた運命のベルト…吏南が語る木村花さんとTCS【インタビュー前編】
9.10スターダム後楽園大会、メインイベント後のことだ。アーティスト・オブ・スターダム王座を奪った小波がマイクで「この3人でベルトを獲ったのは運命」と言ったタイミングで、フキゲンです★はベルトを天に突き上げ、吏南は控えめに「イエッサー!」ポーズをとった。このトリオの共通点、それはかつて木村花さんが率いていたTOKYO CYBER SQUAD(以下TCS)のメンバーだったことだ。「イエッサー!」ポーズは、TCSの代名詞でもあった。TCSの中でも、花さんの薫陶を最も受けていた吏南に話を聴いた。

TCSに居続けたい、でもこのまま続けてもいいのかなという気持ちも
9.10スターダム後楽園大会、メインイベント後のことだ。アーティスト・オブ・スターダム王座を奪った小波がマイクで「この3人でベルトを獲ったのは運命」と言ったタイミングで、フキゲンです★はベルトを天に突き上げ、吏南は控えめに「イエッサー!」ポーズをとった。このトリオの共通点、それはかつて木村花さんが率いていたTOKYO CYBER SQUAD(以下TCS)のメンバーだったことだ。「イエッサー!」ポーズは、TCSの代名詞でもあった。TCSの中でも、花さんの薫陶を最も受けていた吏南に話を聴いた。(取材・文=橋場了吾)
2018年10月、双子の妹・妃南を相手にスターダムでデビューした吏南。1年半前にデビューしていた羽南を含め三姉妹が、中学生ながらプロレスラーとしてデビューした。三姉妹は同じSTARSに所属していたが、2019年4月のドラフト会議で羽南はSTARSに残り、妃南はQueen’s Questがピックした。吏南は最後まで指名されず、新ユニット・TCSのリーダーだった木村花さんが拾った形となった。
「デビューして半年は必死に戦うだけだったんだけど、TCSに入ってからはずっと花さんが教えてくれたんだ。今使っている技のほとんどが、花さんに教えてもらったものだね。入った当初はずっと怒られながら練習していたんだけど、本当に色々なものを教えてもらったよ。でもドラフトはね…マジであの場から消えたいと思った。最後の最後で『泣いている子、いいよ』みたいな感じだったからね。STARSはまだ指名できるのに、(指名継続を)切っちゃうし。このドラフトはトラウマみたいな感じで、ずっと引きずったよ」
TCSのメンバーは木村花さん、吏南のほかに、小波、ジャングル叫女、ルアカ(現・琉悪夏)、DEATH山さん。(現・フキゲンです★)だった。
「メンバーみんなで練習することもあったけど、花さんとのマンツーマンも多かったかな。卍固めを100回練習してから見てもらったこともあったね。花さんの練習は繰り返して、できるようになるまでやらせてくれる感じだった。それまでこういう繰り返して覚える練習はしたことがなかったんだけど、花さん自身が体で覚えるタイプだったからこういう教え方をしてくれたみたいで」
2020年5月、花さんが急逝。当時中学2年生だった吏南の心に、ぽっかりと穴が開いた。
「最初に電話で聞いたんだけど、信じられなくて。ゲームをし続けていた記憶がある、とにかく信じたくなかったんだろうね。でも、お葬式があってようやく実感が湧いて……学校も行けなくなった。私の大好きな先生が気を遣って、とりあえず学校に来なさいと家まで迎えに来てくれて。少しずつ試合も組まれ始めて、もう必死でやるしかなかった。お葬式で(木村)響子さんと会って話したときに『吏南がプロレスをやっているのが、(花さんは)一番嬉しいはずだ』と。その言葉だけを信じて、プロレスを続けようと思ったんだ」
吏南は花さんの得意技だったハイドレンジアを継承したが、同年10月に小波がジャングルを裏切る形でTCSを解散させた。その真意は小波のインタビューを参照していただきたいのだが、吏南もそのインタビューで小波の当時の思いを知ったという。
「複雑だったね。TCSに居続けたい気持ちもあったけど、このまま続けてもいいのかなという気持ちもあった。叫女ちゃんがTCSを残したい気持ちも分かったし、小波は裏切った形になったので敵になっちゃった…でもインタビューを読んで、初めて小波の気持ちを知ってそういうことだったのかと感動しちゃったよ」

体が大きいプロレスラーに魅力を感じるから、自分も大きくなって技に説得力を出したい
その後、吏南は自分の意志で大江戸隊(H.A.T.E.の前身)に加入。それから5年弱、ヒールとしての戦いを貫いている。
「中学校の時から反抗期がひどくて。理由はないんだけど、何に対しても反抗したい。実家暮らしのときは、親が送り迎えをしてくれるのに一人だけ電車で行くこともあったし。羽南とは……顔を合わせるたびに喧嘩だよ(笑)。今思うと、本当にガキだったなと。(TCS解散後STARSに一時加入したが)キラキラな優等生でいないといけないと勝手に思っていたし、ファイトスタイル的にも良い子良い子ではなかったから大江戸隊に入ったんだ」
吏南は今年3月に高校を卒業したのだが、同じ高校だった妃南は大学に進学、吏南はプロレス1本の生活に入った。
「そもそも中学校の時に高校に行くかを迷っていて。でも、さっきの私の大好きな先生が一応受けてみたら?と。面接と小論文の試験だったんだけど、私、意外に口が達者でね(笑)。で、高校に行ってみたら意外に楽しくて、委員長もやったりして何なら高校生活を一番楽しんでいるんじゃないかくらい(笑)。でも、勉強では妃南に勝ったことがなくて、テストで2位を取ったときも1位が妃南だった……。高校を卒業してからは、3~4キロ増えたかな。私的には体が大きいプロレスラーに魅力を感じていて、自分も大きくなって技に説得力をどんどん出していきたいと思って、ジムに通いご飯もたくさん食べて大きくしたんだ」
その吏南、元プロ野球選手・監督の真中満さんとの掛け合いも話題になっている。二人は栃木県育ちという共通項があり、プロモーション動画で共演した。
「宇都宮のビッグマッチがあるときに、たまたま真中さんと共通の知り合いのスタッフがいて一緒に撮影することになって。その動画の中での掛け合いに反響があったみたいで、解説に来てくれたり、試合を見に来てくれたりするようになったんだ。私が勝手に真中さんのことを“相方”って呼び始めたら、ファンの中では『真中と吏南は相方同士のいいコンビ』みたいになったみたい(笑)。でも解説のときでも立ち上がって見てくれたり、それが切り抜き動画になったりで騒がれている感じ? 真中さんはそれまでプロレスを見たことがなかったらしく、私きっかけでファンになってくれたのは嬉しいよね」
(22日掲載の後編へ続く)
