須田亜香里、新作映画で社長令嬢役ながら“たくましい腕”披露 今後の目標は「アクションで戦いたい」
元SKE48の須田亜香里が、9月19日公開のファンタジーホラー映画『男神』(井上雅貴監督)に出演し、社長令嬢ながら怪異と戦う男勝りな女性に挑んだ。2022年にグループ卒業後は、ドラマや舞台など俳優としても躍進。今回は4 年ぶりの映画出演で初のホラー作に。出身地・愛知県での撮影もあり、熱が入った様子。重機を操る“プロ”の設定など、役作りでは須田なりのスタイルで新境地を見せた。

住宅地に穴が……ファンタジーホラー映画『男神』に出演
元SKE48の須田亜香里が、9月19日公開のファンタジーホラー映画『男神』(井上雅貴監督)に出演し、社長令嬢ながら怪異と戦う男勝りな女性に挑んだ。2022年にグループ卒業後は、ドラマや舞台など俳優としても躍進。今回は4 年ぶりの映画出演で初のホラー作に。出身地・愛知県での撮影もあり、熱が入った様子。重機を操る“プロ”の設定など、役作りでは須田なりのスタイルで新境地を見せた。(取材・文=大宮高史)
「子どもの頃から、祖父母によく遊びに連れて行ってもらった日進市(愛知県)の愛知牧場がロケ地の一つでした。それで母に『今度、日進で映画撮るんだ』って話したら、『確かあなたが生まれたのも日進だったと思う』と言われて、母子手帳を見たら、本当に生まれた病院が日進市にあったんです。ずっと名古屋市生まれだと思っていたのに(笑)。おかげで運命的な作品になりましたし、本当に、これが日進?と思うくらい、映像は壮大で神秘的でした」
そう明かすと、笑顔が弾けた。『男神』は、八木商店氏の同名作品が原作。2020年に「美濃・飛騨から世界へ!映像企画」に入選し、YouTubeのサイト「怖い話怪談朗読」で朗読され話題となった。今回はオリジナルストーリーとして映画化され、日本の伝統美に潜む狂気と、それに翻弄される家族の恐怖を描く。ロケは愛知県日進市と岐阜県下呂市で敢行。愛知県で育った須田にとっては、馴染みの場所が怪異の舞台になり、初のホラー作品ともなった。
「お化けが出るような展開ではなかったのは、ちょっと助かりました。ホラーは好きなんですが、お化けが出る作品だったら家に何か連れて帰ってしまうかも……と思うので(笑)。でも見慣れた日進の風景が全く違うものに見えて、もしかしたら、自分たちの日常に気づいていないだけで、実はこんな世界がすぐ隣にあるのかもしれない、と思わされるような怖さがありました」
主演は、建設会社社員・和田勇輝に扮した遠藤雄弥。須田は、その建設会社の社長令嬢・山下愛子を演じた。物語は、ある日突然、新興住宅地で謎の穴が出現するところから始まる。時を同じくして、和田の息子が姿を消してしまい、同様の子どもの失踪事件が各地で相次いでいた。言い伝えによると、穴の先では「男神」なる神を鎮めるべく、子どもを生贄として捧げているという。果たして子どもを取り返し、穴をふさいで平穏を取り戻せるのか――。須田は、劇中、穴をふさぐべく重機を操る場面があり、その演技に注目される。
「社長令嬢なんですが、重機を操って現場に出るガテン系の女性で、お嬢様らしいシーンは全くないです(笑)。弟の裕斗役の岩橋玄樹さんとは、よく泥にまみれていました。言葉遣いもぶっきらぼうですし、私が元アイドルだとは気づかないかもしれないです。アイドル時代のフリルがたくさんついた衣装に比べると、着替えもすぐ済みました(笑)」
重機のシーンでは、タンクトップ姿でたくましい腕を見せており、魅力的に見せるためのフィジカルなアプローチも怠らなかった。
「腕がヒョロヒョロだと良くないなと思って、普段通っているピラティスのトレーナーさんに『強そうに見える腕の筋肉を育ててください』ってお願いしました。撮影1か月前くらいから、特に上腕二頭筋を鍛えたくてトレーニングしました」
役者・須田の熱い思いがのぞいた。本人は「形から入るタイプ」といい、初めての役柄のため、プロの所作を徹底的に観察したという。
「私、心配性で、撮影前に井上監督と打合せをした時も『重機なんて運転できないですよ』と言ってしまいましたが、現場では作品に協力してくださった建設会社の方がまず実演してくださって、そこからイメージすることができました。プロの皆さんと同様に大きな声やジェスチャーをしてみたり……。やっぱり初めてのことはプロに習うのが一番ですね。人に話を聞くのが好きなんです」
映画出演は、2021年の主演映画『劇場版・打姫オバカミーコ』以来4年ぶりとなるが、当時も、雀士の丘葉未唯子という、普段の彼女とは無縁の世界で生きる人物の役だった。
「『オバカミーコ』もそうでしたが、いかに慣れているように見えるかを意識しました。雀士なら当たり前のように牌を打っている人に見せたかったですし、今回の重機も昇降したり、エンジンをかける仕草から自然に見えるようにしたかったです。お芝居とはいえ、日常を切り取ったシーンの積み重ねが作品になるので、『細かな仕草からちゃんとしないと』と思っています」

アイドル時代から変わった「負けず嫌い」の感情の向け方
須田を語る上で欠かせないのが、その“負けず嫌い”なキャラクターだ。SKE48時代には握手会でのテクニックを徹底的に研究して“握手会の女王”と呼ばれたほど。選抜総選挙では順位にこだわり、野心を包み隠さずバラエティーや文筆業でも足跡を残してきた。もっとも、その性格が明日を生きるバネにもなった。
「負けず嫌いなところは今も変わっていません。でも、勝ち負けに対する考え方が変わったのかなと思います。アイドル時代ってあたたかく見てくれるファンや大人の方がいるし、同じ土俵で競い合う関係でした。でも大人になるともっと世界は広いですし、努力だけでは叶えられないこともあります。今は、人とべるのではなく、『人にない唯一無二の経験をいかに得られるか』という方向に、負けず嫌いの気持ちを使っています」
さまざまな経験を積み、精神的にも成長したようだ。実際にバレエに打ち込んでいた10代の頃は「自分は1人で生きていける」と信じていた時期もあったが、グループ活動や現在の仕事を通して、その考えは大きく変わった。
「芸能界って、実はどこよりも人間らしい、人との関わり合いを大事にする世界なんじゃないかなって思うようになりました。テレビ番組を一つ作るにしても、たくさんの人が力を合わせて準備を進めていき、人と人との力が集結するからこそ、素晴らしいものが生まれるのを見てきました。今回演じた愛子も、建設会社にいるのに地鎮祭でだるそうにしていたり、迷信を信じない子だったのが、怪奇現象を目の当たりにして変わっていきます。本気になって立ち向かうようになるのは、私自身も経験してきたことです。そういう心の移り変わりもスクリーンで見てもらえたらと思います」
最後に今後の目標を尋ねると、力強く答えた。
「お芝居では、アクションをやってみたいです。身体能力を活かして、戦いたいという願望があります。そしてこれからも、プロフェッショナルな皆さんと関われることを楽しんでいきたいです。役者に限らず、どんなお仕事でも、出会いとプロセスを大切にしていきたいと思っています。」
人から丁寧に学ぶことを芸の糧にしてきた“唯一無二のスター”は、これからも芸能界で自分らしく生きていく。
□須田亜香里(すだ・あかり)1991年10月31日、愛知県生まれ。2009年11月にSKE48に加入。16年、17年のAKB48選抜総選挙では、2年連続で“神セブン”(上位7人)に選ばれ、18年は自己最高の2位を獲得した。ソロ活動も展開し、持ち前のトーク力を生かし、バラエティーなどに出演したほか、ドラマなど俳優にも挑戦。21年公開の映画『劇場版・打姫オバカミーコ』で映画初主演した。22年11月にSKE48を卒業。23年には舞台『Bumblebee7』に主演した。現在はテレビ、ラジオや連載など多方面で活動中。23年にはフォトエッセイ『がんこ』を出版した。趣味はホラー漫画を読む、一人旅。
