ONE OK ROCKが示した覚悟と決意「明日から頑張れよ!」 7万人の日産スタジアムが熱狂した一夜
4人組ロックバンド・ONE OK ROCKが8月30日、31日に神奈川・日産スタジアムで、最新アルバム『DETOX』を引っさげたワールドツアーの日本公演『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025』を開催した。今作はこれまでになくメッセージ性の強いアルバムに仕上がったが、20周年を迎えたバンドの覚悟が伝わる一夜となった。本記事では8月30日公演の模様をレポートする。

盟友・Paledusk&CHICO CARLITOがサプライズ登場
4人組ロックバンド・ONE OK ROCKが8月30日、31日に神奈川・日産スタジアムで、最新アルバム『DETOX』を引っさげたワールドツアーの日本公演『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025』を開催した。今作はこれまでになくメッセージ性の強いアルバムに仕上がったが、20周年を迎えたバンドの覚悟が伝わる一夜となった。本記事では8月30日公演の模様をレポートする。
2月21日に発売された2年半ぶりのアルバム『DETOX』。同アルバムを引っさげ、南米、北米でのツアーを経て、さらにパワーアップした姿での凱旋となった。“ホーム”の日本では、8月16日・17日には大分・クラサスドーム大分、30日・31日に神奈川・日産スタジアム、9月6日には北海道・大和ハウス プレミストドーム(札幌ドーム)、13日・14日には大阪・ヤンマースタジアム長居とスタジアム&ドームのみを回る大規模なツアーとなった。
約7万人の老若男女幅広いファンでぎっしりと埋まった日産スタジアム。目には見えない期待感がスタジアムに充満していく。定刻を過ぎること約10分。空が夕焼けに色づいた頃、ライブの開始を告げる映像がスクリーンに流れた。
現代社会に向けた強い怒りにも似たメッセージを詰め込んだ同作。まさにその世界観を表現するかのような言葉の数々がつむがれていく。その一節には「平和でない国があったから平和な国があったのだと。本当に大切なのは知らないということを知っていること。それを伝えなければならない」など、ONE OK ROCKがこのアルバムを作った意味が詰まっていた。
まずは、Toru(G)、Ryota(B)、Tomoya(Dr)が姿を現し、歓声が巻き起こる。最後に金髪姿のTaka(Vo)が登場し、主役が勢ぞろいするとスタジアムは大歓声に包まれた。
「世の中を音楽の力で『DETOX』するために」――。オープニング映像が終わるとアルバム収録曲の『Puppets Can’t Control You』の前奏が流れる。熱い一夜の幕が上がった。満員のオーディエンスは初っ端からアクセル全開。こぶしを高く突き上げ、Takaの一挙手一投足に呼応する。終盤には、Takaのシャウトを合図に炎の特効がステージを彩り、勢いづける。
畳みかけるかのようにライブのキラーチューン『Save Yourself』(22年)と続ける。なじみ深い前奏が流れると客席からはどよめきが。「Save yourself~」の大合唱も巻き起こった。Takaが「もっといこうぜ!」とあおると、より一層ボルテージが上昇していった。小気味よいビートが流れるとオーディエンスも手拍子で盛り上げる。23年リリースの楽曲『Make It Out Alive』だ。Takaの「日産スタジアム頭振れるか」という掛け声に、会場中がヘッドバンキングで応じた。
序盤から全力疾走なセトリの余韻に浸る日産スタジアム。この日、最初のMCでTakaは「今日この瞬間を僕たちはずっと待ってました。空を見上げてみてください。この四角く広がった大空は今宵は全部僕たちのものです!」と屋外ならではのロケーションに言及。「一夜限りの勇気を与えたいと思います」と意気込みを伝えた。
![Toru、Ryota、Tomoyaのテクニックに大観衆はくぎづけに【写真:Rui Hashimoto [SOUND SHOOTER]】](https://encount.press/wp-content/uploads/2025/09/11131322/32e3e8ede343f4dd5a3281017f9e09e7.jpg)
4曲目は10年前の楽曲『Cry out』。薄暗くなった空と客席を青いスポットライトが照らす。7万人の大合唱に手拍子。まさに圧巻の光景がスタジアムに広がる。間髪入れずにToruのギターの音色が響く。新アルバムの1曲目に収録されている『NASTY』だ。お立ち台でTakaとToruが肩を組みながら音を楽しむ姿はこの日のハイライトの一つとなった。
続くMCでは、Tomoyaが「日産スタジアム―! 元気かー!」とシャウト。「南米回って、北米回って日本に帰ってきました。ただいまー!」と凱旋を喜んだ。バンド史上最大規模のステージ。「今日さ、7万人だって。ここから見えている景色は本当に美しくて、みんなに感謝しかないです」と笑顔を見せた。
Ryotaも「ここから見る景色、もうヤバすぎ、もうすごい」と日産スタジアムという大舞台をかみしめ、「僕ら今年で20周年なんですけど、一つ一つの積み重ねがこの景色につながっているんだなーと思うと、本当にうれしい気持ち。一人一人に感謝しています。ありがとう」と思いを伝えた。
Toruも「ここでやることができてうれしい。日産スタジアム! 20年目にしてやっとできました」と待望の舞台だったとしつつ、「本当にめちゃめちゃ良い景色です。気持ちいいです。ありがとう」と感謝を口にした。
Takaの「昔からONE OK ROCKを知ってる人にとっては懐かしい曲をやろうと思います」の合図で、08年の楽曲『Living Dolls』へとつなぐ。懐かしの音色にスタジアムは大歓声。薄暗くなった夕闇にTakaの伸びのある歌声が響き渡り、間奏でのTakaの「歌ってー!」の呼びかけに、「woh~woh~」の大合唱が響いた。
Toruの妖艶なギターソロで空気は一変。客席もクールダウンしたかと思えば、『Party’s Over』の前奏が鳴り響く。Takaのムーディーな歌声にグッと惹きつけられたかと思えば、Tomoyaの「1、2、3、4!」の合図で一気に激しさを増す。入場時に配られたシンクロライトが青白く光始め、曲調に合わせて色が変化する仕掛けに客席からはどよめきが上がった。
続く『Tiny Pieces』では、Toruが奏でるギターの音色に合わせてTakaがしっとりと歌い始める。広いステージでスポットライトに照らされたのは2人だけの幻想的な演出だ。次第に、ベースとドラムのリズム隊も加わり、徐々に音に重みが増していった。
「楽しんでますかー」とTaka。「1回皆さん座りましょうか」とファンを気遣う。そして「今から静かな曲をやろうと思います」と語り、23年に行われた『LUXURY DISEASE JAPAN TOUR』でもサポートを務めたキーボーディストのGakushiをステージに招いた。
バンドサウンドとは一転した雰囲気の中、「大切な人を思い浮かべながら聞いてもらえたらうれしいなと思います」と呼びかけ、『This Can’t Be Us』を歌い始める。Takaが、昨年倒れてしまい、会話をすることもできなくなってしまったという祖母への思いをつづった楽曲だ。ピアノの音色に合わせて、澄んだ歌声が響く。スクリーンには、和訳された歌詞と、大切な人と過ごすかけがえのない時間を描いた、温かいイラストが流れた。
「1人ではちょっと心細いけど、久々にやる曲歌います」とし、13年の楽曲『All Mine』をピアノの伴奏とTakaの歌声のみで奏でたかと思えば、ライブ定番曲の『Renegades』と続ける。ステージ前に炎が灯る中、ピアノ伴奏のみのライブならではのアレンジに、Takaの力強くも優しい歌声が真っ暗な夜空に響き渡った。
Takaがステージを降りると、楽器隊3人が主役の時間だ。Toru、Ryota、Tomoyaの3人がステージに戻り、重厚なサウンドを奏でる。世界を主戦場にしているONE OK ROCK。それぞれのソロパートでは、その実力を惜しみなく発揮し、7万人の大観衆にテクニックを見せつけた。
ここで、Toruのギターとは異なる音色が突如流れる。ざわつく客席。ONE OK ROCKと同じく、世界を主戦場に活躍するバンド・Paleduskのギター、DAIDAIがアリーナの通路に姿を現した。その横にはラッパーのCHICO CARLITOも登場。ギターの音に乗せてラップしながら、メインステージへと2人は歩みを進める。ステージ上で迎えたのはPaleduskのメンバーだ。ボーカル・KAITOが伸びのあるシャウトを披露し、コール&レスポンスで客席を温める。
Takaが再び姿を現し、「このメンツが登場したということはやること1個しかねぇだろ!」とおあると、新アルバムに収録されたPaleduskとCHICO CARLITOとのコラボ曲『C.U.R.I.O.S.I.T.Y.』をパフォーマンスした。3アーティストがステージ上で横にズラリと並ぶ姿はまさに圧巻だ。CHICO CARLITOがラップを披露したと思えば、KAITOのシャウトが響く。TakaとKAITOはまるで対決をするかのように顔を向け合いながら、闘志むきだしに感情をぶつけ合った。
Takaが「もうちょっと遊んで帰ろうぜ」とPaleduskとCHICO CARLITOを呼び止めると、15年の楽曲『One by One』を続けざまに披露した。DAIDAIが見せるアクロバットなパフォーマンス、KAITOのシャウト、さらにはCHICO CARLITOのラップが加わることで一味違ったアレンジへと仕上がった。Takaが「頭振れー!」とあおると、会場中がヘドバンで応じ、ラストにはド派手な煙幕が上がった。
怒涛のコラボステージが終わったかと思えば、聞きなじみのある前奏が会場に響き渡る。『The Beginning』で温まりきったステージがさらに盛り上がる。手拍子で呼応するオーディエンス。シンクロライトが客席を彩った。
Takaは「本当に汗の分だけ皆さんたちの愛情をすげー感じてます」と感謝。そして、ライブという空間への思いを語った。
「皆さんは日頃の鬱憤だったりストレスだったりとかそういうものをここで吐き出すための場所だと思ってもらっていい。僕らはそれを受け止めるためにこのステージの上に立っているだけだから。特にこれといって大きな目標だったりとかそういうものはライブにおいてはあまりありません。とにかく僕たちは自分たちの作ったアルバムをこの会場で爆発させること。皆さんたちは日頃のストレスをここで爆発させること。それに尽きると思う」
さらに、今回のアルバムに込めた強いメッセージ性について語り、「今の混沌とした世の中を乗り越えていきたいという思いで作った曲です」と次の曲へとつなげた。
映画『キングダム 大将軍の帰還』の主題歌でもある『Delusion:All』。スクリーンには歌詞に込められたメッセージを表現するかのような力強い映像が映し出される。Takaの「カモン!」の合図で客席からは大合唱が巻き起こった。
勢いそのままに『Dystopia』へとつなぐ。「さー飛ばしてこうぜ、日産スタジアム!」の合図で客席のシンクロライトは緑に染まる。「7万人の大きい振り見せてくれー!」の声とともにオーディエンスは手を左右に揺らす。カラフルに目まぐるしく色を変えるシンクロライトの光の花がスタジアムに踊り咲いた。続く楽曲もアルバム『DETOX』収録の『Tropical Therapy』だ。スクリーンにはMVさながらにモノクロなメンバーたちが映し出された。

Takaは今アルバムについて「作るのに相当な体力を消耗したなと自分でも思っています。正直死ぬほどしんどかった」と吐露。そのうえで「アルバムには裏のテーマがあって、それを今ここで皆さんたちにお話することで完結するなって思っています」と、真剣なまなざしで決意を届けた。
「俺はこの今の世の中が許せません。だからこそこれだけ強いアルバムになったし、僕たちも覚悟を決めて、最後まで続けられました。思い返せば俺の人生はいつも何かを許せない人生でした。自分のことを許せなかったこともある。両親のことを許せなかったこともある。時に世の中を許せなかったことだって……。でも俺はこのバンドを組んで皆さんたちとONE OK ROCKに教えられたんです。そういう強い感情を持ち続けて前に進む時ってすっごいパワーいるし、燃えたぎってるんだけど、あまりにもその強いパワーを持ち続けて前に進みすぎると、大事なことに気付けない瞬間があるなって。それを教えてもらえたことにすごい感謝してる」
「人間っていうのは許せないって気持ちをいつまでも強く持ち続けると、それはいつか今度はあなた自身が誰かに許されない人になってしまうということ。それを俺は、俺らの音楽を聞いている皆さんたちには分かってほしいなと思いました。今回のアルバムの裏のテーマです」
「皆さんたちの未来がこのアルバムを聞いて、より明るいものになってほしいなと切実に思って作りました。きょうは皆さんたちがここに来てくれたこと、心より感謝します。そして僕らの魂の叫びを皆さんたちが少しでもキャッチしてくれることを切に願っています。明日から皆さんたちはまた戦場に戻ります。でも忘れないで下さい。ONE OK ROCKはいつもここにいます。明日から頑張りましょう」
そんな熱いメッセージを伝え、奏でたのは『The Pilot </3』。『DETOX』でも締めの1曲となる楽曲だ。力強く歌い上げるTaka。曲間では約20秒ものロングトーンで客席を沸かせ、さらにはマイクを通さない地声で7万人をあおった。圧倒的な声量で大観衆の視線を釘づけにする姿は、まさにTakaがTakaたるゆえんを示した瞬間だった。ラスト間奏ではTakaが「1、2、3、4!」とシャウト。メンバー4人で音を奏で、体を揺らす。バックにはバイオリンなどのストリングスメンバーがズラリと登場し、何層にも重なったメロディーが響き渡る。余韻をそのままにTakaがステージを降りる。続けて、Toru、Ryotaとステージを去っていき、最後にTomoyaがドラムをたたき終え、ステージを降りると会場は暗転し、本編の幕が下りた。
見せつけられた圧倒的な世界観にざわめきの止むことのない日産スタジアム。次第にアンコールを求める歓声があがる。ステージに再びストリングスが登場し、バイオリンの音色に導かれるように、4人が再登場を果たした。『Stand Out Fit In』の前奏が流れ、どよめきがあがる。Takaの「3、2、1、ジャンプ!」の掛け声で全員が一気に飛び跳ね、感情を爆発させた。7万人のジャンプに大合唱がスタジアムを大きく揺らした。
Takaの「まだいけますかー」の掛け声で続けたのは『+Matter』。疾走感あふれるメロディーに4人の表情も踊る。スクリーンに映し出さるメンバーがちゃめっ気たっぷりの表情を浮かべながら、気持ち良さそうに演奏する姿が印象的だ。
正真正銘のラスト曲は、ライブで定番の『We are』。客席はLEDで真っ青に染まり、「We are~」の大合唱が巻き起こる。間奏でTakaは「本当に今日は来てくれてありがとう!」と感謝を伝え、「温かい気持ちでいっぱいです。明日から頑張れよ!」と皆の背中を後押しした。ラスサビでは、ステージ上にカラフルな花火が何発も打ち上がり、夜空を彩る。まるで花火大会さながらの大量の花火をバックにTakaは全身で観客からの大歓声を受け止めた。
最後に7万人との記念撮影を終えると、4人は名残惜しそうにステージの端から端まで、感謝を伝えに回った。「ありがとうございました。ONE OK ROCKでした。愛してるよ―!」の言葉を残し、ステージを去っていった。
圧巻のステージングだった。ONE OK ROCKのどんな大きなステージでも誰一人として置き去りにすることのないパフォーマンス力。本当に7万人も動員していたのだろうかと思ってしまうほどの一体感がひしひしと伝わってくるライブとなった。バンド史上最大規模のステージで届けたONE OK ROCKの力強いメッセージは、確かに集まったファンの胸に刻まれたことだろう。
ONE OK ROCKは、勢いをそのままに10月にヨーロッパで15公演を行う『ONE OK ROCK DETOX European Tour 2025』、26年3月にはオースタラリア3か所をめぐる『ONE OK ROCK DETOX Australia Tour 2026』の開催を予定している。ONE OK ROCKのロックバンドとしての挑戦はこれからも続いていく――。
![日産スタジアムには約7万人のファンが詰めかけた【写真:Rui Hashimoto [SOUND SHOOTER]】](https://encount.press/wp-content/uploads/2025/09/11131319/a498a21175dffed66c72dcf08679ab96.jpg)
〇『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025』セットリスト
8月30日神奈川・日産スタジアム
1.Puppets Can’t Control You
2.Save Yourself
3.Make It Out Alive
4.Cry out
5.NASTY
6.Living Dolls
7.Party’s Over
8.Tiny Pieces
9.This Can’t Be Us
10.All Mine
11.Renegades
12.【Instrumental】
13.C.U.R.I.O.S.I.T.Y.feat. Paledusk and CHICO CARLITO
14.One by One
15.The Beginning
16.Delusion:All
17.Dystopia
18.Tropical Therapy
19.The Pilot </3
-ENCORE-
EN1.Stand Out Fit In
EN2.+Matter
EN3.We are
