「教員だけ守られているのか」女子生徒4人への性暴力で懲戒免職も…教育委員会“実名非公表”のワケ

学校教員による生徒への性暴力が物議を醸している。千葉県では3日、校内などで女子生徒4人に性暴力を行ったとして県立高校に勤務する20代の男性教諭を懲戒免職処分にしたことを発表。神奈川県でも4日、女子生徒と性行為をしたとして横浜市の県立高校の20代男性教師を懲戒免職にした。一方で、ネット上では、懲戒免職処分を受けた教師の「実名公表」を求める声が高まっている。公表・非公表の線引きはどこにあるのか、両県の教育委員会に聞いた。

教員の不祥事が続いている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
教員の不祥事が続いている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

性暴力で懲戒免職の教師「名前を公表すべき」の声高まる

 学校教員による生徒への性暴力が物議を醸している。千葉県では3日、校内などで女子生徒4人に性暴力を行ったとして県立高校に勤務する20代の男性教諭を懲戒免職処分にしたことを発表。神奈川県でも4日、女子生徒と性行為をしたとして横浜市の県立高校の20代男性教師を懲戒免職にした。一方で、ネット上では、懲戒免職処分を受けた教師の「実名公表」を求める声が高まっている。公表・非公表の線引きはどこにあるのか、両県の教育委員会に聞いた。

「社会的影響の大きな事件に関わるものについては、氏名等を公表するという基準になっております。ただ、例外として、事案の性質上、被害者等が公表しないことを求めている場合など、被害者等のプライバシー権利に影響するためにやむを得ない場合は、公表を行わないことができるという定めがございます」

 千葉県教育委員会の担当者は、処分を受けた教員の氏名を公表しないことについて説明した。

 3日に公式サイト上で教師や校長など5人の処分を発表。そのうち名前や学校名が公開されたのは1人のみで、残り4人は「男性教諭(20歳代)」「県内の公立中学校」のような形で詳細が分からないようになっている。

 名前を伏せられた4人のうち、特に問題視されているのが、県立高校に勤務していた20歳代の男性教師によるわいせつ行為だ。4月中旬から6月下旬までの間に、校内などにおいて、自校の女子生徒4人に対し、性暴力等を行った。5月下旬に生徒の1人から被害の内容について相談を受けた職員が、教頭に報告して発覚した。

 この件が報じられると、ネット上では、「学校名と加害者名をなぜ公表しないのか」「普通の性暴力事件や、痴漢事件では氏名や顔も報道されるのに教員ってほとんど出ないのはなぜ?」「名前が検索に引っかかるように公表すべき」「実名で報道しないと塾とかで勤務されちゃうよ。そして再び子どもたちに被害が及ぶよ」と、教師の名前が伏せられていることへの疑問の声が広がった。「氏名、顔を晒して欲しいけど、犯罪内容を考えると被害者生徒特定の2次被害、傷心したケアを考慮すると難しいのでしょう」など、被害者への配慮を優先すべきとの指摘もあったが、少数派の印象だった。

 世間の“圧力”が高まる中でも、教育委員会では、被害者への影響を最小限に抑えるという方針のもと、氏名の公表には応じない姿勢を貫く。

 千葉県で今回、氏名が公表されたのは、男性教師が校内において、職員のいすを蹴り、落ち着かせようと声をかけた教頭の左肩を押すなどの暴行を働いたというもの。さらに、いすを振り上げて、同職員の机にたたきつけ、机等を損壊した。

「被害者の権利に影響を及ぼすような事案ではございませんので、公表はさせていただきました」

内容によっては名前が非公表

 一方で、名前が非公表になったのは、いずれも性暴力やセクハラ行為に関する内容だった。

 過去には、類似のケースであっても、処分を受けた教師の名前を公表したことはあるという。ただ、すべてが同じような扱いとはいかず、被害者側に立った慎重な対応が求められるため、公表へのハードルは高いのが現状だ。

「被害者が特定される恐れがあるかないか、というような被害者保護の視点で考えております。(加害教師の)名前を出すことで、被害者が一般の方に特定されるということももちろんですけども、周囲の方々が、『この子ではないか』というようなことを言ったり、臆測などを防ぐために、公表しておりません」

 神奈川県教育委員会は、県の公式サイトに処分の内容を発表するとともに、氏名を公表しない教師については、「『懲戒処分等の公表基準』は、懲戒免職となった場合、原則として職員氏名などを公表することとしておりますが、本事案が被害者に対して特に慎重な配慮を要する場合に該当するため、職員氏名などを非公表としています」と注記をつけ、理解を求めている。

 それでも一般から氏名の公表を求める声はあり、「なぜ出せないのか、出したほうが良いのではないかといったご意見を県民の皆様から承っております」と現状を明かすが、被害生徒保護の観点は揺るがない。

「学校内での不祥事に関して、特に相手のほうに影響がある場合については名前を伏せるというルールがございまして、そういったことで名前は伏せさせていただいております」

 ネット上には、渦中の人物や出来事の“正体”を突き止める「特定班」と呼ばれる人々もいる。教師の氏名を公表したとたん、急速に情報が拡散し、あらゆる事実が掘り起こされる事態にもなりかねない。特に性暴力問題は、未成年である生徒の将来に取り返しのつかない影響を与える可能性をはらむ。

 性暴力などで懲戒免職になった教師は、教員免許をはく奪され、原則として再び教壇に立つことはできない。なぜ失効したのかという情報は電子データとして残り、共有される。免許を再取得しようとしても当然、検討材料となり、復職を困難にしている。

 教育現場であってはならない性暴力。信頼回復と被害者保護――この両立への模索が続いている。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください