結成48年のCASIOPEA、新メンバーは安室奈美恵ら名曲手掛けた敏腕アレンジャー 『あぶ刑事』にも出演した過去

1977年の結成から48年を迎えたフュージョンバンド・CASIOPEAが、海外で再び人気に火がついている。これまで海外公演の実績もあるが、レコード専門店の資料によると、2025年上半期、米ニューヨークでアナログレコードが売れているという。79年にデビュー。卓越した演奏技術と親しみやすいメロディーで『Asayake(朝焼け)』など数々の名曲を生み、インストゥルメンタルのバンドではイエロー・マジック・オーケストラと並ぶ80年代を代表するバンドとなった。その後バンドの改名やメンバー変更を繰り返して、今年2月にオリジナルのバンド名に戻し、8月27日にはニューアルバム『TRUE BLUE』をリリース。今回、新メンバーの安部潤(キーボード)に話を聞き、バンドの今を紹介する。

上段左から 安部潤(キーボード)、鳴瀬喜博(ベース)、下段左から野呂一生(ギター)、今井義頼(ドラム)
上段左から 安部潤(キーボード)、鳴瀬喜博(ベース)、下段左から野呂一生(ギター)、今井義頼(ドラム)

新生CASIOPEAがニューアルバム『TRUE BLUE』をリリース

 1977年の結成から48年を迎えたフュージョンバンド・CASIOPEAが、海外で再び人気に火がついている。これまで海外公演の実績もあるが、レコード専門店の資料によると、2025年上半期、米ニューヨークでアナログレコードが売れているという。79年にデビュー。卓越した演奏技術と親しみやすいメロディーで『Asayake(朝焼け)』など数々の名曲を生み、インストゥルメンタルのバンドではイエロー・マジック・オーケストラと並ぶ80年代を代表するバンドとなった。その後バンドの改名やメンバー変更を繰り返して、今年2月にオリジナルのバンド名に戻し、8月27日にはニューアルバム『TRUE BLUE』をリリース。今回、新メンバーの安部潤(キーボード)に話を聞き、バンドの今を紹介する。(取材・文=福嶋剛)

 今年7月にアナログレコード専門店「Face Records(フェイスレコード)」を展開するFTF株式会社がリリースした資料によると、ニューヨーク・ブルックリンの店舗で売れている邦楽レコードのランキングで昨年(2024年)は、山下達郎、竹内まりや、杏里、松原みきといった日本のシティポップが上位を占めたが、2025年の上半期は、1位から5位までをCASIOPEAと高中正義といった、いわゆるフュージョンが席巻した。CASIOPEAは1980年代に海外でも人気を博し、世界中で数多くのライブを行うなど、過去の実績はあるが、40年経った今、ブームをけん引しているのは、当時を知らない10代から30代の若い世代のアメリカ人だという。

 新加入したキーボードの安部は、初音ミクのLA公演でバンマスを務めるなど海外でも数多くの経験を持っている。この現象について聞くと「やっぱりYouTubeやTikTokといったSNSによって音楽の国境が完全になくなったという証拠ですよね」と語った。

「この前、アメリカの知り合いから教えてもらったんですけど、向こうのフュージョン系ミュージシャンがCASIOPEAと高中正義さんをオマージュした曲をYouTubeにアップして、早速チェックしたら曲名が『CASIONAKA』って、面白くて大変興味を持ちました。昔は多くの日本人が、アメリカのフュージョンに影響を受けて成長していきましたけど、今は海外の人が日本の音楽を掘り下げるという逆転現象が起きているんです」

 音楽好きの間ではアナログレコード人気も高く、海外でも過去の人気作品をアナログ盤で再発するたびにすぐに売り切れとなり、そのたびに中古レコード店に駆け込むという現象も起きている。関係者に聞くと、そのアナログ再発を企画しているレコード会社の社員も当時を知らない若い世代だという。

「レコードランキングで1位を獲った『MINT JAMS』(1982年)は、確か当時、ヨーロッパ進出を目論んで作られたアルバムだと聞いたことがあります。それがいまやアメリカで人気になるっていう。スタッフに話を聞いたらチリでもCASIOPEAは人気があるそうで、この前、僕が入って初めてのお披露目ライブをやった時も、海外からのお客さんが多かったんです。興味深い現象ですよね」

 そんな状況を耳にしながら2027年の結成50周年に向けてメンバーたちのモチベーションも高まっている。今回、新たにバンドに加わった安部は68年生まれの57歳。一見寡黙なベテランミュージシャンといった印象だが、その経歴は幅広い。

「音楽関係の仕事をしていた父とピアノ講師の母のもとに生まれ、子どもの頃からピアノを弾いてきました。父親が趣味で電子楽器を持っておりまして、自分でも打ち込みでCASIOPEAの曲を再現したりして遊んでいました。初めてCASIOPEAを生で見たのが15歳の時、実家のあった福岡で『Jive Jive』(1983年)というアルバムのツアーでした。やっぱりあの頃のCASIOPEAには強い影響を受けていて、キーボードの向谷実さんからも当然ながら影響を受けました」

 学生の頃から地元でCM音楽、音楽コンテストでの編曲家としてプロ活動をスタート。24歳で上京すると編曲家の船山基紀氏が所属する事務所に入所することになる。船山氏からは編曲家としてのノウハウを多々学んだ。

「地元にいた頃から編曲に携わっていたのが東野純直さんというアーティストで、上京後に初めて彼の楽曲のアレンジャーとしてオリコンチャートに自分の名前が載りました。その後は、MISIAさんの『忘れない日々』(1999年)や安室奈美恵さんの『ALL FOR YOU』(2004年)などのアレンジを担当させていただいたり、バンドマスターとしては、MISIAさん、広瀬香美さん、舘ひろしさん、田原俊彦さん、近藤真彦さん、吉田栄作さん、水谷八重子さんら多くの経験させていただきました」

 映画『さらば あぶない刑事』(2016年)ではサントラを手掛けただけでなく、劇中、バンドメンバーとしても出演した。

「実は櫻井哲夫さんと一緒にバーのミュージシャン役で出ています。ご覧になる機会があったらチェックして見て下さい。台詞はないです(笑)」

 ユニークなところでは過去に新日本プロレスのテーマ曲もアレンジャーとして手掛けている。

「小川直也さんの『S.T.O.』、藤田和之さんが使っていた『炎のファイター』のオーケストラ・バージョン、ですね。ほかにもnWoジャパン(1990年代半ばに米プロレス団体で流行したヒールユニットの日本版)のテーマ曲とか。かなりマニアックな話ですよね(笑)」

8月30日から大阪、名古屋、神奈川での3か所でサマーツアーを開催する
8月30日から大阪、名古屋、神奈川での3か所でサマーツアーを開催する

思いがけないきっかけでCASIOPEAに加入

 そんな多才なミュージシャンが思いがけないきっかけでCASIOPEAに加入した。

「もともとメンバーのみなさんとは交流があって、その中でも付き合いの長いベースの鳴瀬喜博さんとLINEで他愛もない会話をしていた時、冗談で『何でも言うこと聞きます』みたいなことを書いたら『カシオペアに来い』と返ってきたんです。僕は『ライブに遊びに来い』というメッセージだと思って、『その日は行けません』と返信したら鳴瀬さんから電話がかかってきて、『そうじゃなくて』と。まさかのバンドへのお誘いでした。本当に驚きましたけど、それで今に至ります」

 慣れたメンバーとはいえCASIOPEAとしてスタジオに入るとさすがに緊張したという。

「やっぱり10代の頃から見てきた憧れのバンドに自分が入ると思うと『ちゃんとやれるかな?』って最初は不安もありました。でも一緒に音を出すにつれて、すんなりと馴染んでいき、ステージでも演奏を楽しむことができました」

 そして新体制になって初めてのアルバム『TRUE BLUE』を8月27日にリリースした。

「野呂(一生)さんの楽曲が、とにかく素晴らしく、アレンジ的にも完成された部分が多いです。自分は普段は作編曲家として活動しているのですが、CASIOPEAではプレイヤー目線での立ち位置の割合も多いです。鳴瀬さんや今井(義頼)くんが書いた曲も素晴らしくて、10代の頃に聴いていた自分にも聴かせたい、そんな感動する瞬間もあって楽しいです」

 アルバムには安部が書いた曲が1曲収録されている。

「9曲目の『EAGLE FLY AROUND』です。自分の中でCASIOPEAらしい曲を作ろうと思って、トリッキーなリズムを使ってサビはメロディアスみたいな、そんなところを意識して作りました。よかったら聴いてみてください」

 新作アルバムを引っ提げ、サマーツアーを8月30日に大阪・梅田 QUATTRO、31日に名古屋・ボトムライン、9月11日に神奈川・川崎クラブチッタと3か所で開催する。

「今回、新メンバーとしてツアーに参加できることに大きな喜びを感じています。リハーサルからすでに素晴らしい一体感を味わえています。この信頼関係をそのまま音に乗せて、会場のみなさんに届けられることが楽しみでなりません」

□CASIOPEA(カシオペア)野呂一生(ギター)、鳴瀬喜博(ベース)、安部潤(キーボード)、今井義頼(ドラム)。1977年に結成。79年にメジャーデビュー。デビュー当時のキャッチコピーは「スリル・スピード・スーパーテクニック」。メンバーチェンジや活動休止を経て、2012年に活動再開する。25年、キーボードに安部潤が加わり新生CASIOPEAとして新たなスタートを切った。同年8月27日に『TRUE BLUE』をリリース。

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