プロレス王・鈴木みのるは52歳にして“現在進行形”…レスラー哲学に迫る

「現在進行形の男」鈴木みのるの前進が止まらない。  新日本プロレスの8・29神宮球場大会で鷹木信悟からNEVER無差別級王座を奪い、翌30日には大日本プロレス・横浜文化体育館大会で野村卓矢を退けた。

鈴木みのる【撮影:柴田惣一】
鈴木みのる【撮影:柴田惣一】

鷹木信悟を激しいケンカマッチで倒し、野村卓矢を気押した上で勝利

「現在進行形の男」鈴木みのるの前進が止まらない。

 新日本プロレスの8・29神宮球場大会で鷹木信悟からNEVER無差別級王座を奪い、翌30日には大日本プロレス・横浜文化体育館大会で野村卓矢を退けた。

 52歳の鈴木にしてみれば、37歳の鷹木は次世代、26歳の野村に至っては自分の年齢のちょうど半分、息子の世代である。それなのに、勢いに乗っていた鷹木を激しいケンカマッチで倒し、野村を気押した上で勝利した。

 屋外会場でもラスト横浜文体でも、鈴木が巻き起こした風は周囲を圧倒し、戦場の中心に仁王立ちする鈴木は、憎々しいのだが格好良かった。

 同世代の選手の中でも、抜群のコンディションを誇り、スタミナも若手に勝るとも劣らない。キャリア32年をして、現状維持どころか、いまだに進化しているかのようだ。

 過去を振り返るのを嫌う鈴木。「あの試合の話を?」と問うと「そんな昔のコト、もう忘れたよ」と、一蹴されることが多い。「自分のベストバウトは?」には「すべてがそうだし、まだまだ、これからだ」と、常に前を向き、これからを意識している。

 実際に、衰えを一切、感じさせないのだから、うなずくしかない。「俺は他の奴ら、98%の普通の奴らなんて眼中にない。1%のトップの連中は、俺と同じようにやっているんだろう」と分析する。さらに「下の1%は、箸にも棒にも掛からない奴ら」としんらつだ。

 レスラーが1000人いたら10人。各団体の「一番、強いヤツ、チャンピオンたちは認めてやるよ。俺はそいつらを全員、潰してやる。俺が一番なのを証明するために」と、鈴木のレスラー哲学は明確だ。

 プロレスに関してはストイックそのものだが、プロレス少年だったころの思い出話は、楽しそうに振り返る。「横浜文体は家から近かった。電車で2駅。小中学生チケットを買って、良い席に移動した。観戦帰りは友達とワイワイやりながら、30分以上、歩いて帰ったもんだ」と、この時だけは少しばかり頬が緩んだ。

 最後は「いつまで古い物にしがみついているんだ。なくなっちまえ、こんなもん!」と毒づいたが、横浜文体はプロレス初観戦の会場であり、デビュー戦の地。鈴木にとっても忘れられない体育館が姿を消す。8・29神宮決戦が30日に雨天順延だったら、大日本プロレス8・30決戦には出場できなかった。やはり強運も持っている。

 GHCヘビー級、キング・オブ・パンクラス、3冠ヘビー級、IWGPインターコンチネンタル……さまざまなシングルベルトを手に入れ、現在はNEVER無差別王者の鈴木。全レスラーのトップ1%の男は、いまだ現在進行形である。

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