『刀剣乱舞』で人気の梅津瑞樹、俳優と創作で“二刀流”選んだ理由 大学は文芸学科も「自分の文章なんて読まれない」
映画『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』と同名舞台(8月~9月に全国5都市で上演、脚本・演出:毛利亘宏)で、シリーズ史上“最恐”とされる死神・無限狼を演じるのが俳優・梅津瑞樹。舞台『刀剣乱舞』の山姥切長義(やまんばぎり・ちょうぎ)役で人気を集め、演劇ユニット「言式」では脚本も手がけるなど、俳優業と創作の両軸で活躍を続ける梅津の原点とは……

舞台『刀剣乱舞』に山姥切長義役で初出演「そこからお客さんが来てくれるように」
映画『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』と同名舞台(8月~9月に全国5都市で上演、脚本・演出:毛利亘宏)で、シリーズ史上“最恐”とされる死神・無限狼を演じるのが俳優・梅津瑞樹。舞台『刀剣乱舞』の山姥切長義(やまんばぎり・ちょうぎ)役で人気を集め、演劇ユニット「言式」では脚本も手がけるなど、俳優業と創作の両軸で活躍を続ける梅津の原点とは……。(取材・文=平辻哲也)
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「いしかわ舞台芸術祭」(9月5日~12月20日)の初代アンバサダーを務める梅津だが、出身は千葉県。
「最近、よく梅津さんは石川県出身なんですか? と聞かれます。2022年に石川でライブストリーミング演劇というものをやったことをきっかけにご縁ができて、それから毎年石川で仕事をする機会があり、今年はアンバサダーとして観光大使のようなことをやらせていただいています。地方から演劇文化などを発信できるのは面白いなと感じていて、千葉でも何かできたらとも思っています」
父親は日本画の修復師で、母親は子ども向けの絵画教室を開くなど芸術に囲まれた家庭で育つも、幼少期は芸術が嫌で仕方なかった。
「母のアトリエに連れて行かれても、自分は構ってもらえない。母が他の子どもばかり見ていて、寂しかったんです」
大学では物書きを志して文芸学科に進学したが、「自分みたいな人間の文章なんて誰も読まない」と感じ、演劇の世界に足を踏み込んだ。
「逃げるように演劇に行ったところもあります。でも、注目されれば文章にも興味を持ってもらえるかもという打算も正直なところありました」
本格的に演劇にのめり込んだきっかけは、大学卒業後に所属した劇団「虚構の劇団」(鴻上尚史主宰)での一人芝居の課題だった。演出・照明・音響・脚本・演技すべてを一人で担った。
「他の研修生の音響まで全部やったりしていて(笑)、でもそれが楽しくて仕方なかった。知らない人たちに“ちゃんと認められた”と感じた経験が、今でも支えになっています」と語った。
俳優人生の転機となったのは2019年。舞台『刀剣乱舞』に山姥切長義役で初出演し、20年にはシリーズ続編でも引き続き出演。23年には映画版にも登場した。
「注目していただいたことで、そこから自分のやりたい作品にもお客さんが来てくれるようになりました。今年で一人芝居も3回目ですが、大阪公演にもしっかりお客様がいらしてくださって。本当にありがたいです」と感謝を口にした。
また、役者仲間と2人で立ち上げた演劇ユニット「言式」では、自身が脚本・演出をすべて担当。「一人で物を考えるのが好きなので、自分にはこういう作り方が合っているのかもしれません」と創作への手応えも感じている。
家族は母が仙台、父が千葉、梅津自身は東京と、三者三様の場所で暮らしている。
「仲が悪いわけではなく、それぞれ好きにやっている感じでしょうか。とにかく自由に生きる人たち。母は料理をやると言って、仙台で本当に料理人になって、自分のお店まで作ってしまったり。その血を受け継いでいると思います」
現在は2年前から、フェレットと暮らしている。
「本当はイグアナが欲しかったんです。体長1メートル70センチくらいまで成長して怪獣みたいになるんですが、それが楽しいなと思っていました(笑)。ところが、ペットショップに行ったら、売れ残りのフェレットの寝姿に心を打たれてしまって。店員さんに『この子はすごく凶暴で』と言われたんですが、値段を勝手につけられて、売れ残りと言われ、この子には関係ないのに、と思ったんです」
性別はメスだが、小説家の内田百閒(ひゃっけん)にちなんで、名前は「百閒」と名付けた。
「最初は噛み癖がありましたが、猫と同じしつけ方を調べてその通りにしつけていたら本当に噛まなくなりました。今では猫くらいの大きさになって、すっかり懐いています」と笑顔を見せる。
梅津瑞樹は、俳優として、そして創作者として、自分なりのやり方で、道を切り拓いている。
□梅津瑞樹(うめつ・みずき)1992年12月8日、千葉県出身。2015年、鴻上尚史主宰の「虚構の劇団」に所属し、舞台デビュー。以降、劇団公演をはじめ、外部公演にも多数出演。19年、舞台『刀剣乱舞』の山姥切長義役で注目を集める。23年には演劇ユニット「言式」を結成し、脚本・演出を務める。主な出演作として、ドラマ『あいつが上手で下手が僕で』、ムビ×ステ『漆黒天』、「チェンソーマン」ザ・ステージ 、SOLO Performance ENGEK『MAGENTA』など。
■舞台『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』公演情報
脚本・演出:毛利亘宏(少年社中)
音楽:YODA Kenichi
出演:鈴木拡樹、安井謙太郎(7ORDER)、梅津瑞樹、森崎大祐、田淵累生、田口涼、松本寛也、田辺幸太郎、ザンヨウコ、宮原華音、鈴木裕樹
日程・会場:
・東京(サンシャイン劇場):8月7日~17日
・福岡(福岡サンパレス):8月21日
・大阪(梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ):8月30日~31日
・石川(石川県小松市 團十郎芸術劇場うらら 大ホール):9月5日~6日
・京都(京都劇場):9月13日~15日
