大森元貴、『あんぱん』で歌唱シーンも 意識した“こだわり”「なるべくキーを抑えてミセスが香らないよう」

3人組ロックバンド・Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が作曲家・いずみたくさんをモデルにしたいせたくや役で出演するNHK連続テレビ小説『あんぱん』(月~土曜午前8時)の取材会に出席し、役に向き合う姿勢や芝居への思いなどを語った。朝ドラ初出演の大森は、本格的な連続ドラマ出演も初めてとなる。

いせたくや役の大森元貴【写真:(C)NHK】
いせたくや役の大森元貴【写真:(C)NHK】

作曲家・いずみたくさんをモデルにしたいせたくや役

 3人組ロックバンド・Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が作曲家・いずみたくさんをモデルにしたいせたくや役で出演するNHK連続テレビ小説『あんぱん』(月~土曜午前8時)の取材会に出席し、役に向き合う姿勢や芝居への思いなどを語った。朝ドラ初出演の大森は、本格的な連続ドラマ出演も初めてとなる。

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 作品は俳優・今田美桜が主人公・のぶを、北村匠海が柳井嵩を演じ、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さんをモデルに戦前から戦後の激動の時代を生き抜く夫婦を描く物語。大森が演じるたくやは劇音楽を作曲するかたわらミュージカル創作にも意欲を燃やし、のちに嵩が作詞を担当した『手のひらを太陽に』の作曲を手がける設定。制作統括の倉崎憲氏は大森を「表現の天才」と評価しているが、たくやをどんなキャラとしてとらえ、どう演じようと努めているのか。

「たくやはピュアでまっすぐで、すごく音楽と芝居に誠実で愚直な人。嵩にも影響を与え、音楽と芝居で純粋に日本を明るくしたいという思いのある人だと思っています。戦後からの登場なので体重を増やし、希望があるような、次の世代の新しい光に見えるといいなという感覚で役作りに取り組みました。体重は3~5キロくらい増やしました。戻らなくて今ビックリしています(笑)。視覚的だけでなく耳心地的にもセリフに抑揚があり、小さい時から芝居好きというのが言動からかおるといいなと、今までの『あんぱん』とは違ったテンポ感の表現ができればと思って臨みました」

 視覚的な役作りは体重だけではない。えりあしも切った。

「ちょっと前までえりあしが金髪だったんですけど、たくやに合わせて、どうしたらビジュアルも含めて変化を視聴者に楽しんでもらえるかと考えました。朝ドラで黒髪になってえりあしを切るから、その前に逆に伸ばして染めて遊んでやろうかな、みたいな感じで楽しんで準備しました」

 えりあしを切った感想について、大森は「ドライヤーが楽です」と語った。

学生時代のいせたくやを演じる大森元貴【写真:(C)NHK】
学生時代のいせたくやを演じる大森元貴【写真:(C)NHK】

18歳の学生役の自己採点は「80点前後(笑)」

 50代まで演じるが、初登場となった4日放送の第91回では18歳の学生を演じた。18歳をどんな思いで取り組んだのか。自己採点もしてもらった。

「やれることはやりました。衣装も人生初の学ランでしたので、自分の新鮮なビジュアルに驚きながらフレッシュに演じられたらいいなと思っていました。自分は18歳でデビューしたので当時の自分と照らし合わせながら何にフラストレーションを感じ、何に希望を抱いて表現の道に進もうとしているのか、自分事として共通項を探った感覚です。点数は分からないです。放送されてどうなるかなと。匠海君からは『今までにないテンポ感。やりやすい』と言っていただいたので……、80点前後ですかね(笑)」

 モデルのいずみたくさんへのシンパシーはどうか。

「音楽は人の心を彩るもので、一つの娯楽にすぎないけど、されど、という部分に魂をかけているというか、いろんな思いを注ぎ込んでいるのは先生の自伝や作品で感じますし、純粋に人を明るくさせようとしているところは、そうあるべきだなと思います。Mrs. GREEN APPLEも日常に当たり前に存在する大衆エンタメを大切にしています。人を明るくしたいというのは根幹で通じる部分があると思いますし、楽しんでもらえるのが一番ということのピュアさは通じるものがあるかと思います」

 制作統括は楽しそうに演じていると話す。大森に芝居への思いを聞いた。

「今まで自分らしくあるかを自問したり、周りに問いかけられるような生き方をしてきました。自分がいかに大森元貴としていられるかという生き方。楽曲を書いたり普段から自分と対峙する時間が多いので、誰かになるとか違う人生を送るのは非常に興味深く、楽しいです。その場で生まれるお芝居のキャッチボールはすごく刺激的で楽しいです」

 主演の今田と共演した感想はどうだろう。

「『のぶだー!のぶが目の前にいる。たまるかーが聞けた』みたいな(笑)。僕もいち視聴者ですから、そういう感動からでした。現場での匠海君と今田さんのコンビネーションがすてきで、すごいなーと感動しています」

 今後ピアノを演奏するシーンもあるという。

「実際に弾くと聞き、大変だと思って1週間どの仕事の楽屋にもピアノを用意してもらい、20秒でも時間があれば触るようにしました。ただ、いずみたくさんもピアノは独学だったと資料で読み、よし、いけるぞと(笑)。独学の自分なりのフォームで弾いていたと勝手に都合よく解釈し史実通りという顔で弾いています。気合で乗り越えた感覚。でもピアノのシーンが撮影初日でしたので、すごくドキドキしました」

ピアノを弾くシーンも【写真:(C)NHK】
ピアノを弾くシーンも【写真:(C)NHK】

多忙な日々でも「心は全然忙しくない」

 では、どんな曲を弾いたのか。

「メイコがのど自慢に出るということで僕が練習を付き合うシーンで『東京ブギウギ』を弾くんです。朝ドラの『ブギウギ』を全部見ていましたので、おお、『ブギウギ』だと思って、ブギウギしていました」

 歌うシーンもある。大森元貴として歌う時との違いはどうだろう。

「たくやはプレーヤーではないので、そのニュアンスは大切にしたいと考えました。ミセスはキーが高いので、たくやで歌うシーンはなるべくキーを抑えてミセスが香らないよう、削る作業を意識しました。私が歌うことが目立つフックになると作品を邪魔すると思い、そこは繊細に描きたいと監督と匠海君にも話しました」

 朝起きた時、今日は音楽の日だ、芝居の日だとか違いを感じるものだろうか。

「音楽は自分の言葉を扱うので、自分でいることや自分が何を感じているかがファースト。お芝居の現場は用意してくださった言葉たちがあり、演出があるので、どういう指示にも対応できる自分であろうとしますが、音楽は自分が指示する側。そこは違います。演技の方が気は引き締まっていると思います(笑)」

 音楽活動に加えて俳優の仕事もこなすのは容易ではない。原動力は何か。

「せっかく生きているなら楽しい方がいいという気持ちで生きているので、新たなことに挑戦させていただく機会を頂いたなら精いっぱいの愛情でお返ししたいと率直に思っています。スケジュールを可視化すると忙しいですが、心は全然忙しくなくて、一つひとつが楽しくて充実しています。中でも『あんぱん』は特別で音楽の現場にいても『あんぱん』の現場が早くこないかなと思ったりします。音楽は非日常を生きることが仕事になっているので、圧倒的な日常を描く朝ドラの現場はすごくリラックスし、現場にいるだけですごく癒されます。それがモチベーションの気がします」

 制作統括によると、ある日、収録現場にいずみたくさんの親族が来て、大森の姿にいずみさんと通じる部分を感じ、「大森さんで良かった」と涙したという。大森も「認めてもらったような気がして感無量でした。ほっとしました」と話した。大森の演じるたくやを通していずみさんを感じる瞬間が楽しみになってきた。

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