夏の“子連れ万博”が過酷すぎた… 行列困難、暑さで遊具も使えず 最も役に立った熱中症対策とは

大阪・関西万博は、当初の下馬評がうそのような盛況ぶりが注目を集めている。夏休みに入り、学生やファミリーの来場に期待が高まる一方で、懸念されるのが猛烈な暑さだ。特に幼い子を持つ親たちは、炎天下の暑さ対策など、おおいに悩むところだろう。実際、夏の“子連れ万博”とはどのようなものなのか。東京から5歳の子どもとともに会場を訪れた記者が本音でレポートする。

暑熱対策が必須の大阪・関西万博【写真:ENCOUNT編集部】
暑熱対策が必須の大阪・関西万博【写真:ENCOUNT編集部】

未就学児は万博楽しめる? ノープランで突入レポ

 大阪・関西万博は、当初の下馬評がうそのような盛況ぶりが注目を集めている。夏休みに入り、学生やファミリーの来場に期待が高まる一方で、懸念されるのが猛烈な暑さだ。特に幼い子を持つ親たちは、炎天下の暑さ対策など、おおいに悩むところだろう。実際、夏の“子連れ万博”とはどのようなものなのか。東京から5歳の子どもとともに会場を訪れた記者が本音でレポートする。

 万博を訪れたのは、7月15日だった。宿泊したのは、JRゆめ咲線ユニバーサルシティ駅近くのホテル。前日には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で遊び、翌日に万博というスケジュールだった。

 まず迷ったのが、会場への到着時間だった。天気予報は良好。筆者のような遠方からの“USJ・万博組”にとっては、ユニバーサルシティ駅から一つ先の桜島駅で下車し、シャトルバスで万博会場西ゲートまで移動するのが一般的なルートだ。万博は9時開場。しかし、すんなり入るためには、朝から並ばないといけない。

 USJでは午前7時台から並び、日差しの厳しさは身を持って体感した。ネット上には「開場待ちの時間が一番つらかった」との書き込みもあり、USJでの疲労や夜までの滞在時間も考慮して、桜島を9時台に出発するバスを予約した。

 当日、ホテルの部屋を出ようとしたところで子どもがゴネる。「万博、行きたくない。つまんない。USJに行きたい」。万博のことは、かみ砕いて伝えても、この年齢の子どもが理解することは困難だ。目と鼻の先に見えるUSJのジェットコースターやハリー・ポッターのお城のほうが、何倍も楽しく見えることだろう。結果、出発が遅れて、10時台のバスに乗車することになってしまった。

 西ゲートに到着したのは10時40分。さすがに行列はなく、すんなりと入場できた。だが、すぐに襲ってきたのが暑さだった。日傘や帽子、ハンディファンなどは用意していても、地面からの照り返しも強烈で、頭上を覆うものは何もない。すかさず大屋根リングの下に避難すると、そこは人、人、人だった。確かに涼しく、空間の広さが心地いい。パビリオンによっては、行列をリングの下に作れるところもあり、一層混雑していた。

 事前の抽選で当たっていたのは2つのパビリオン。しかし、そのうち1つは到着が間に合わず権利を消失した。まずはどこを見学しようか。万博のスケールの大きさに圧倒されながら並んだのは、英国のパビリオン。行列時に日陰もある程度あり、「60分」という待ち時間の割に進みが早かったことが理由だった。パラソルや送風機があり、「英国パビリオンへようこそ!」と書かれたボードの前にも巨大な空調機が置かれていたのは驚いた。おかげで背後にある文章は読めなかった。

 周囲を見渡すと、待機時に多くの人が持っていたのが、伸縮タイプのいす。行列中に座り、体力の消耗を抑えることができる。「それってどういう仕組みなんですか。めっちゃ便利ですね」と話題になっていた。また、男性にはファン付きウエアも一定の支持を得ていた。実際の待ち時間は30分で済み、映像中心の展示も子ども向けで楽しめた。

英国パビリオンの空調機【写真:ENCOUNT編集部】
英国パビリオンの空調機【写真:ENCOUNT編集部】

東欧料理に苦戦… 暑すぎて遊具に子どもはまばら

 観覧を終えると、日差しはさらに強くなっており、ここから子どもが人気パビリオンに並ぶのはしんどそうだった。暑熱対策で最も喜ばれたのは、持参した首かけタイプの冷タオル。スーパーなどで売っているもので、首の周りを覆うと、かなりの面積で冷たさが持続した。向かったのは、行列なしで入れた近くのコモンズD館。子どもは各国のブースを回り、万博の公式スタンプパスポートに次々とスタンプを押していた。パスポートは東京で購入していたが、これがなければ、最後まで持たなかっただろう。

 あっという間に午後1時。昼食の時間だ。行けばなんとかなると思っていたため、リサーチはしていなかった。外を少し歩いてはみたものの、とにかく暑い。隣接するパビリオンのレストランは混んでいた。一方で、目の前にあったポーランド館のレストランは、数組が並んでいただけ。肉か野菜(ベジタリアン)を選べ、どちらも税込み4900円と“万博価格”に躊躇したが、すぐに入店でき涼めることがすべてだった。

 メニューは、ザワークラウトのようなキャベツ煮込みや水ギョーザのようなもので、隣国ドイツやロシアの影響を受けているような印象。伝統的な陶器で提供され、大人はおいしく食べれたが、子どもはなかなかはしが進まない。慣れない東欧料理と味つけよりも、おにぎりのほうがよかったか。会場内にはコンビニエンスストアもあり、安く済ませたいなら活用できる。食事に万博らしさを求めるか、悩ましいところだ。

 午後2時。暑さはピークを迎えさらに上昇する。こまめに水分を取り、タブレットで塩分を補給しても、とても追いつかない。左手にミャクミャクの目の形をした遊具を発見。大好きなふわふわドームを小さくした形をしており、子どもは走って登っていったが、手をつくと「あちぃー」。5分もたたないうちに戻って来る。太陽が容しゃなく照りつけ、ひとけもまばらだった。

 他のゾーンにも行ってみようということになり、ぐるりと移動する。この時間帯は、子どもと並ぶには、やはり入口に日陰があるところを優先して見てしまう。パビリオンによっては、さえぎるものが全くないところもあり、日傘でしのぐしかないハードな状況だった。

 子どもを連れて回るのに便利だったのが、あちこちにポケットモンスターのキャラクター像があったこと。そこを目印にすると、まんべんなく回れるようにできており、重宝した。万博よりも、ポケモンスタンプラリーを巡っているかのような気分にさせられたが、少しでも楽しんでほしいという気持ちが勝る。

米つながりで子どももパクパク食べたマレーシア料理のナシゴレン(右)【写真:ENCOUNT編集部】
米つながりで子どももパクパク食べたマレーシア料理のナシゴレン(右)【写真:ENCOUNT編集部】

ドイツ館、フィリピン館が子連れに好評だったワケ

 ボーネルンドの遊び場に立ち寄ると、「フランス館、15分で入れます」との呼び込みが。15分なら、と炎天下の下で並ぶ。館内はアートやブランドの紹介などで、子どもの関心を引くものはなかった。暗いところもあり、「怖かった」とのこと。気温は最高潮に達し、水筒などに無料で水を入れられるウオーターステーションは長蛇の列となっていた。身動きすることが難しくなり、休憩所でひと休み。入場して4時間で、コモンズ館を除けば、まだ2つのパビリオンしか入っていない。

 大屋根リングに上ることにする。上から眺める万博の景色は圧巻だった。各国の個性的なパビリオンに目を奪われる。子どもが急に「トイレ」と言い出しても、大屋根リングの上にもトイレが設置されており、事なきを得た。およそ半周して、当選していたブルーオーシャン・ドームへ。入ってすぐ、水の循環を表した立体アートにくぎ付けになる。NHK Eテレで放送されているピタゴラスイッチをほうふつとさせる水の動きに、興味津々の様子だった。

 夕方になり、暑さがようやく和らいできた。オーストラリア館、ドイツ館、フィリピン館の順で行ってみる。ほとんど並ばなかった。好評だったのは、ドイツ館。サーキュラーと呼ばれるかわいらしいマスコットが一人一人に手渡され、音声案内していく仕組みに大はまり。「ドイツめっちゃよかったね。サーキュラーうちにほしい」とねだっていた。子連れも楽しめると評判だったフィリピン館のリズムに合わせた体験型展示もノリノリで踊っていた。

 夕食はマレーシア館のレストランでテイクアウト。決め手は「やさしい味」と書かれて子どもも食べられそうなダルカレー(豆のカレー、1620円)とナシゴレン カンポン(1728円)だった。ナシゴレンはマレーシアの焼きめしで、チャーハンに近い。席がいっぱいだったので、リュックに携行していたシートを地面に敷いた。今度は子どもも食べてくれ、ほっとした。

帰路のフェリー“ミャクミャク号”【写真:ENCOUNT編集部】
帰路のフェリー“ミャクミャク号”【写真:ENCOUNT編集部】

大人は我慢できても… 注意したい暑さによる体調不良

 残る滞在時間は、1時間ほど。大屋根リングの最上段から先ほどとは逆回りに半周して西ゲート方面に向かうことにする。7月11日に38日ぶりに再開された夜の噴水ショー「アオと夜の虹のパレード」が始まり、リングの上は見物客で鈴なり状態に。じっくり見たかったが、予約していたユニバーサルシティポート行きフェリーの時間に間に合うか怪しくなってきたため、19キロを抱っこしながら速足で急ぐ。噴水ショーはすごい迫力。エスカレーターを降り、最後にコモンズB館でスタンプをもらって、バス乗り場へ。桟橋でフェリー“ミャクミャク号”に乗り換えると、5歳児は疲れからか、すぐに寝落ち。“水の都”の美しい夜景を見届けることなく、朝まで起きることはなかった。

 この日の大阪市の最高気温は、33.9度。猛暑日ではなかったものの、子連れにとってこの暑さは過酷というのが正直な感想だ。特に午前11時から午後4時くらいの間は、いくら備えをしていても相当の忍耐が必要で、立っているだけで焼けるようだった。日焼けで顔が真っ黒になっていた警備員の姿もあった。

 日中は子どもの体調に注意しながら行列が少なく、日陰で待てるようなパビリオンや土産店を回るなど工夫したい。並んでも、「おしっこ漏れそう」で振り出しに戻ることもあり、トイレの位置は確認しておきたいところだ。希望のパビリオンがあれば、スマホを使って当日予約を駆使するのも一つの手。夕方以降はパビリオンからの呼び込みも多くなり、格段に歩き安くなる。また人混みを避けたいなら週の前半(月曜~水曜)が望ましいだろう。一般の来場者は10万人を割ることも珍しくなく、逆に土日は数万人が上乗せされる傾向にある。

 大人同士で行くのとは異なり、5歳とでは展示を落ち着いて見ることはできなかった。ただ、万博が伝える環境へのメッセージは、どれも大切なもの。パビリオンで映像を見て感想を言い合い、世界のさまざまな文化・食事に触れることは、親子にとって素晴らしい学びの体験となるだろう。

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