『あんぱん』の琴子役で注目 鳴海唯、涙のオーディションでつかんだ2度目の朝ドラ「人生を変えたい」

俳優の鳴海唯は、NHK連続テレビ小説『あんぱん』(毎週月~土曜午前8時)に第14週「幸福よ、どこにいる」から新人新聞記者・小田琴子役で出演している。6年ぶり2回目の朝ドラ、今まで以上に“運命”だと感じた出来事があったという鳴海に、撮影に臨んだ心境や共演者とのエピソードを聞いた。

自身2度目の朝ドラに出演する鳴海唯【写真:増田美咲】
自身2度目の朝ドラに出演する鳴海唯【写真:増田美咲】

朝ドラ『あんぱん』で小田琴子を好演

 俳優の鳴海唯は、NHK連続テレビ小説『あんぱん』(毎週月~土曜午前8時)に第14週「幸福よ、どこにいる」から新人新聞記者・小田琴子役で出演している。6年ぶり2回目の朝ドラ、今まで以上に“運命”だと感じた出来事があったという鳴海に、撮影に臨んだ心境や共演者とのエピソードを聞いた。(取材・文=小田智史)

『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さんをモデルに苦難に面しても夢を忘れず荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでの愛と勇気の物語。鳴海が演じる小田琴子は、戦後、女性初の女性記者としてのぶ(今田美桜)と同期入社した人物だ。

 鳴海にとって朝ドラ出演は、俳優・広瀬すずが演じるヒロインなつの妹・明美役に俳優活動2年目で抜てきされた2019年のNHK連続テレビ小説『なつぞら』以来となる。

「『なつぞら』は初めての朝ドラでもあり、初めてのテレビドラマ出演作品。憧れの先輩方と共演させていただける喜び、緊張感があって、フレッシュな感情が渦巻いていました。当時は共演者の皆さんについて行こうと必死でした。2回目の朝ドラはすごく光栄ですし、『なつぞら』からの6年間で出会ってきた作品、培ってきた経験を生かせたらという思いで臨みました。いつも以上に作品全体を見て、視野を広くして臨むことができたと思います」

 鳴海は『あんぱん』のオーディションシートの自由欄に、「アンパンマンのような人になりたい」と書いたという。ヒロインオーディションの募集は『あんぱん』の制作が発表された2023年10月よりも前に始まっており、“アンパンマン”のフレーズは偶然の産物。チーフ・プロデューサーを務める倉崎憲氏は、「まだ『あんぱん』の企画発表前だったので、『これは運命だ!』と驚いたのが最初の出会いでした」とコメントしているが、鳴海も「倉崎さんが情報漏洩を気にしたとおっしゃるくらいの偶然で、私自身もびっくりしました」と笑う。

「当時のマネジャーさんとビジョンについて話すことがあって、どんな人にこれからなっていきたいかという話し合いをしていた中で、『私は愛と勇気を共有できる人になりたい』と言っていました。それってどんな人だろうと考えた時に、『(『アンパンマン』の主人公の)アンパンマンみたいな人かもしれないね』と。オーディション過程の中で(制作発表があって『あんぱん』だと)知ることになるんですが、その時が一番びっくりしました。仮に知っていたとしたら、あざとすぎるし、怪しい子ですよね(笑)。いつも以上にこの作品にご縁を感じてしまって、『このご縁をなんとかつなげたい』という思いでがむしゃらにオーディションに臨んでいた気がします」

鳴海唯演じる小田琴子(右)と今田美桜演じるのぶ【写真:(C)NHK】
鳴海唯演じる小田琴子(右)と今田美桜演じるのぶ【写真:(C)NHK】

最終オーディションで流した涙の意味

 鳴海は最終オーディションでも、「人生を変えたいです」と涙ながらに語ったという。「がむしゃらにやっていたので、あまり記憶がないんです」と前置きしつつも、「『あんぱん』の制作の方々とご一緒できたら、自分の俳優のキャリアに新しい道が開けていくんじゃないかという予感がしていました」とその発言に至った胸の内を明かした。

 鳴海が演じる小田琴子は、今田が演じるのぶと同期入社の新人記者。役の魅力に、「二面性があること」を挙げる。

「琴子は結婚相手を探すためという、のぶとは全く違った理由で新聞社に入社します。新聞社内の男性陣の前ではすごくおしとやかで、凪のように、波風を立たせないように品のあるたたずまいでいます(笑)。でも、屋台でお酒を飲むと、まるで人が変わったように饒舌にしゃべり出すギャップが彼女のキャラクターとしての魅力だと思います」

 鳴海はそんな琴子について、「正直、自分とはあまり似ているところはないキャラクターでした(笑)」と話す。それでも、琴子がどんな人物かを自分なりに考え、演技に落とし込んだという。

「人は二面性に限らず、基本的に環境や状況に応じてたくさんの面を持っていると思います。私自身、琴子みたいに分かりやすく変わるスイッチのようなものがないだけで、切り替えている部分はあります。琴子はのぶと崇(北村匠海)の恋の行方にも関係する人物。少しおせっかいというか(笑)、一見なぜここまで2人を応援するんだろうと感じますけど、ここを自分の中で深堀りできたら説得力が増すだろうなと思い、表面的ではないバックボーンをしっかりと考えながら役割を担っていけるように意識しました」

 高知を舞台にした物語の『あんぱん』は、劇中の土佐弁がSNS上で話題を呼んでいる。鳴海も土佐弁を覚えるのには「苦労した」と明かし、「今までにない挑戦でした」と振り返る。

「普段せりふを覚える時は『言葉を覚える』作業ですけど、土佐弁だと『音を覚える』作業も加わるので、いつもの2倍時間をかけないといけませんでした。でも、それはこの作品に参加している皆さんが同じ条件。『みんな一緒に頑張っているんだ』という気持ちで臨んでいました。土佐ことば指導を務める西村(雄正)さんが現場のムードメーカーで、常にいてくださりました。今田さんが方言の練習をされていたので、私も交じって3人で練習して、『このお店の麻辣湯がおいしいよね』って話で盛り上がりました(笑)。今田さんは毎日のお食事を楽しみにされていたので、食事の話はよくしていたと思います」

「自然体」のまま、俳優としてさらなる高みを目指す【写真:増田美咲】
「自然体」のまま、俳優としてさらなる高みを目指す【写真:増田美咲】

「自然体」の今田美桜に感銘

 のぶと同期入社という役柄だけに、主演・今田と過ごす時間が多かったと振り返る鳴海。その目には、今田はどのように映ったのか。

「今田さんはすごく自然体な方でした。出演している皆さん口をそろえて『温かい現場』だとおっしゃっていたんですが、現場の空気が伝染していく雰囲気を肌で感じました。それを作っていらっしゃるのは、中心に立っていらっしゃる今田さんなんだ、と思わせてくださる方でした」

 同じ「高知新報」のメンバーでもある崇を演じる北村については、「(北村が演じる崇のモデルとなった)やなせたかしさんは控えめな人物像ではあるので、出会っていくキャラクターを受け止めていく役割を担っていると思いますが、北村さんはそれを丁寧に体現されていると感じました」と印象を語りつつ、「北村さんは楽屋には戻らず、ずっと前室にいてくださるんです。みんなで作っている、一致団結の空気感を作るためにやっていらっしゃることだと思いますけど、自然と高知新報のメンバーと仲良くなれました」と笑顔を見せた。

 自身の俳優キャリアについて、「ずっと浮き沈みが激しい」と表現する鳴海。2023年はNHK大河ドラマ『どうする家康』、2024年はTBS系連続ドラマ『Eye Love You』やTBS系連続ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』など話題作にも出演してきたが、「人生は上手くいくことばかりではないので」と、目の前の仕事に全身全霊を注ぐ姿勢は崩さない。

「ありがたいことにお仕事を任せていただく機会は増えましたけど、いいことがあると『次に来るのはよくないこと』だと思っちゃうんです(苦笑)。『そんなに浮かれないようにしよう』という思いはあります。調子がいい時も悪い時も常にフラットで、目の前にある作品に一生懸命取り組むということを忘れず、自然体でやっていきたいです」

 朝ドラ出演2回目ながら、“朝ドラ女優”という肩書きには「今の段階ではまだ言えないです」と苦笑いした鳴海。「視聴者の皆さんに作品が届いて行った時に答えが出ると思います。またお会いした時に聞いてください(笑)」と、さらなる成長を見据えていた。

□鳴海唯(なるみ・ゆい)1998年5月16日生まれ。兵庫県出身。2019年にNHK連続テレビ小説『なつぞら』でドラマデビュー。POPEYE“ガールフレンド特集”号の表紙や、ドラマ『Eye Love You』(TBS)、『あのクズを殴ってやりたい』(TBS)、『わかっていても the shapes of love』(ABEMA×Netflix)、サントリー「JIM BEAM」をはじめ多数のドラマやCMに出演。身長156センチ。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください