奨学金約900万円完済も、仕事や結婚の“足かせ”に…54歳独身男性「借金と理解した上で借りたかった」

若者の進学の夢を支える一方、卒業と同時に実質的な借金を背負う奨学金制度が、大きな社会問題になっている。そんななか、SNS上で約900万円もの奨学金を完済したことを報告する投稿が注目を集めている。有利子の第二種奨学金を借り、卒業後は年間60万円の返済を続け、21年目に完済。奨学金が結婚や独立の障壁になったと振り返る投稿者のたぬき(@31ctFzrKld84522)さんに、詳しい話を聞いた。

卒業と同時に実質的な借金を背負う奨学金制度(写真はイメージ)【写真:写真AC】
卒業と同時に実質的な借金を背負う奨学金制度(写真はイメージ)【写真:写真AC】

約900万円の奨学金完済報告に驚きの声が続々

 若者の進学の夢を支える一方、卒業と同時に実質的な借金を背負う奨学金制度が、大きな社会問題になっている。そんななか、SNS上で約900万円もの奨学金を完済したことを報告する投稿が注目を集めている。有利子の第二種奨学金を借り、卒業後は年間60万円の返済を続け、21年目に完済。奨学金が結婚や独立の障壁になったと振り返る投稿者のたぬき(@31ctFzrKld84522)さんに、詳しい話を聞いた。

「地味にキツかったっス」

 先月24日、SNS上に投稿された写真には、「奨学金返還完了のお知らせ」と題された文書と、「9039000円」と記載された貸与・返還額が収められている。

 長年にわたって返済を続けてきた奨学金の完済通知に、ネット上では「うお! 家の頭金レベル!」「恐ろしい。これはやばいですね」「卒業と同時に1千万近い借金背負って精神的にも相当キツかったと思うと尊敬しかない」といった驚きの声が殺到。「奨学金ってとんでもない制度だよね」「右も左も分からない高校生に学生ローン組ませるようなこの制度はいかがなもんかと思うわ」「人生の前借りですね」「政府は留学生ではなく、日本人の学生を支援すべき」など、制度に対する批判的な意見も多く寄せられた。

 54歳の歯科医師という投稿者。返済通知は8年前の2017年のもので、今回、ふと奨学金返済の苦労を思い出し投稿したという。

「経済的な理由で奨学金の中で一番多額に借りられる有利子の第二種を借りました。高卒の公務員と家電営業という両親の収入では、僕が県外の私立大学での生活を支えるのは大変でしたので、奨学金は月に約13万円もらい、加えてアルバイトを月5~8万円。生活費は10万円だけもらって残りは実家に仕送りしてました」と当時の状況を説明する。

 卒業後の生活については「返済は年間60万円でした。奨学金が無ければサラリーマン家庭で私立歯学部への進学は到底不可能でした。後悔と言うより、10代の学生にとって奨学金は借金であるという認識は持てなかったことが残念でした」と振り返る。さらに「卒業後に奨学金返済が足かせとなり、独立自営も大変でしたし、経済的な問題もあり結婚する余裕がなく現在も独身です。借金ときちんと理解した上で覚悟して借りたかったです」と、奨学金が人生設計に与えた影響の大きさを明かした。

 投稿に寄せられた一連の反響について、「予想以上に奨学金を利用されている方が多いこと、皆さん大変な思いで返済されておられること、外国人留学生は奨学金返済義務がないことへの強い憤りを感じました」と投稿者。また「奨学金があると卒業の時点で借金を抱えてのスタートで結婚が遠のく、奨学金を抱えた人との結婚はしたくない」という意見が多数あったことにも触れつつ、「奨学金制度につきましては、まず名称を学資ローンと分かるネーミングにしていただきたいです」と話している。

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