馬場ふみか、初の演技コーチング受け発見した新しい自分「自分のクセ、全然気づいてなかった」

俳優の馬場ふみかが、映画『愛されなくても別に』(7月4日公開、井樫彩監督)で、南沙良が演じる主人公・宮田陽彩との出会いをきっかけに、静かに心を通わせていく同級生役を演じた。馬場は、初めてアクティングコーチの指導を受け、衣装や髪色といった外見にまで踏み込んで役に向き合ったと明かす。

映画『愛されなくても別に』に出演する【写真:藤岡雅樹】
映画『愛されなくても別に』に出演する【写真:藤岡雅樹】

映画『愛されなくても別に』で主人公の同級生役

 俳優の馬場ふみかが、映画『愛されなくても別に』(7月4日公開、井樫彩監督)で、南沙良が演じる主人公・宮田陽彩との出会いをきっかけに、静かに心を通わせていく同級生役を演じた。馬場は、初めてアクティングコーチの指導を受け、衣装や髪色といった外見にまで踏み込んで役に向き合ったと明かす。(取材・文=平辻哲也)

 本作は、武田綾乃氏による同名小説を原作に、若者たちの内に潜む孤独や痛みを描いた青春群像劇。

 主人公・陽彩は、浪費癖のある母と2人で暮らしている。大学に通いながら、朝から晩まで家事とアルバイトに追われる日々。母から暴言や暴力を受けているわけではないが、「愛している」という言葉だけで縛られるようにして、静かに心を蝕まれている。そんな陽彩が、コンビニでのアルバイトを通して出会うのが、馬場演じる江永雅だ。

 金髪にピアス、接客中もイヤホンを手放さない――そんな周囲と距離を取るような雰囲気をまとった雅もまた、家庭に問題を抱え、他人と深く関わることを避けてきた。

「雅は一見冷たく見えるけれど、内面にはすごく優しさがある人だと思いました。劇中では明言されていませんが、高校を中退し、高卒認定を取得して大学に進学したという背景もあります。それはすごくエネルギーのいることだったはずです。自分で道を選び、切り拓いてきた力強さに惹かれました」

 南との共演は今回が初めて。陽彩と雅の関係性と同様、実際の距離感も撮影を通して少しずつ縮まっていったという。

「最初はお互い人見知りだったので、なかなか話しかけられなかったんです。でも共演シーンが多くて、自然と距離が縮まりました。沙良ちゃんは本当に自然体で役に入っていくのがすてきで、『かわいいな』と思う瞬間がたくさんありました」

 自分自身と役柄の共通点について尋ねると、「あまり意識していなかったけれど、近い部分はあるかもしれませんね」と笑った。

「実は結構“雑”なところがあって。たとえば、雨が降っていても傘をさすのが面倒で、そのまま歩いてしまうようなタイプなんです(笑)」

役作りや衣装についても語った【写真:藤岡雅樹】
役作りや衣装についても語った【写真:藤岡雅樹】

“どれだけ忙しいか”を競うような風潮も「口に出すのは控えるようにしています」

 今作では、井樫監督の提案で初めてアクティングコーチの指導を受けた。コーチからは演技中の癖や無意識の動作を指摘され、「自分でも気づいていなかった部分と向き合えた」と話す。

「脚本を受け取ってから撮影に入るまでの準備の流れを、座学で一から学びました。本編には描かれない雅と母親の関係性も演じてみて、その体験が役作りに大きく役立ちました」

 外見に関しても、キャラクターの心情とつながる細部にこだわっている。

「染めたてのきれいな金髪にはしたくなくて、何度も髪色を変えている設定にしました。監督が私の普段のライフスタイルを参考にしてくれた部分もあるようで、実際に私も作品の合間によく髪を金、ピンク、青などに染めてきたので、自然とリンクしていたと思います」

 衣装は井樫監督と相談しながら決めていった。

「どういう服を着ているか、何を持っているかなど、具体的なイメージを共有しながら進めました。雅はダボっとした男っぽいシルエットの服を着ることが多いですが、それは“女性として見られたくない”という気持ちの表れかもしれないですね」

 本作では幸福とは何かがテーマのひとつとして描かれている。SNSにはキラキラした世界があふれ、“自分は不幸だ”と感じてしまう人が少なくない。

「きっと比べてしまうから、そう感じてしまうんですよね。私は、自分のことを幸せだと思っています。“どれだけ忙しいか”を競うような風潮もありますが、それを口に出すのは控えるようにしています」

 多忙な日々の中でも、友人とおいしいものを食べたり、お酒を飲んだりする時間が何よりのリフレッシュになっている。

「これまで、現場で感覚的に役をつかんできましたが、今回は背景からていねいに構築するプロセスを踏むことができました。自分のやり方を見直しつつ、新しい学びもありましたし、これからの作品にも生かしたい」と馬場。役にていねいに向き合った経験は、今後のキャリアに確かな糧となりそうだ。

□馬場ふみか(ばば・ふみか)1995年6月21日生まれ、新潟県出身。映画『パズル』(2014年/内藤瑛亮監督)で女優デビュー。テレビ朝日系『仮面ライダードライブ』(14年)で敵女幹部・メディックを演じて話題となり、映画『黒い暴動』(16年/宇賀那健一監督)で初主演を果たす。映画『恋は光』(22年/小林啓一監督)では演技が評価され、第44回ヨコハマ映画祭にて最優秀新人賞を受賞。主な出演作に、『劇場版 コード・ブルー ‐ドクターヘリ緊急救命‐』(18年/西浦正記監督)、映画『糸』(20年/瀬々敬久監督)、映画『ひとりぼっちじゃない』(23年/伊藤ちひろ監督)、映画『愛に乱暴』(24年/森ガキ侑大監督)などに出演。

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