奥平大兼「自分なんて、と思う気持ちある」 主演映画で重ねた学生時代と“もう一つの高校生活”
俳優の奥平大兼が、映画『か「」く「」し「」ご「」と「』(5月30日公開、中川駿監督)に主演する。本作は、『君の膵臓をたべたい』の住野よる氏の同名小説を原作に、5人の若者たちのすれ違いや葛藤、そして心の交流を描いた青春群像劇だ。奥平は「自分なんて」と引け目を感じている京に、強い共感を持ったという。自身の高校時代の思い出とは……。

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』で主演
俳優の奥平大兼が、映画『か「」く「」し「」ご「」と「』(5月30日公開、中川駿監督)に主演する。本作は、『君の膵臓をたべたい』の住野よる氏の同名小説を原作に、5人の若者たちのすれ違いや葛藤、そして心の交流を描いた青春群像劇だ。奥平は「自分なんて」と引け目を感じている京に、強い共感を持ったという。自身の高校時代の思い出とは……。(取材・文=平辻哲也)
『MOTHER マザー』で鮮烈なスクリーンデビューを飾って以来、映画・ドラマで着実に存在感を高めてきた奥平。最近ではTBS系連続ドラマ『御上先生』で幅広い層に注目された。
「最初に企画をいただいて、原作を読ませてもらったとき、『やりたいな』ってすぐに思いました。人の気持ちが見えるっていう設定はフィクションだけど、キャラクターの感情や行動は現実と地続きのように感じられて。自分の学生時代と重なる部分もあって、きっと多くの人が共感できると思いました」
奥平が演じる京は、クラスの人気者・ミッキー(出口夏希)にひそかに思いを寄せているが、なかなか伝えることができない。さらに、人の感情が見えてしまう特別な力を抱えており、人との関わり方に悩みながら過ごしている。
「積極的に何かをするって、実は難しいことだと思うんです。京くんほど極端じゃなくても、『自分なんて』って思う気持ちって、誰にでもあるんじゃないかな。僕自身も『御上先生』の現場で、大人数の中にいると、引いてしまうことがあって。『出しゃばってるって思われたら嫌だな』とか、考えちゃったりします」
撮影前には、中川監督の演出で、キャスト5人で即興劇(エチュード)を行い、関係性を深める時間が設けられた。役柄を外して「東京の修学旅行でどこに行きたいか?」を語り合い、そのあとで役として同じ話を再現するというユニークなアプローチだった。
「出口さん以外は初対面だったんですけど、話していくうちに、それぞれの立ち位置が自然と見えてきて。この5人で一緒にいるときの空気感がつかめた気がして、すごく印象的な時間になりました」

コロナ禍で学校行事「全部なくなってしまった」
撮影の多くは新潟県内の高校で行われた。ロケ期間中、キャスト陣はまるで“合宿”のような日々を送った。
「ヅカ役の佐野晶哉(Aぇ! group)とは、オフの日も一緒にご飯を食べに行ったりして。撮影がない日でも、誰かしらと食事してましたね」
これまで学校行事に“参加できない側”の役が多かったという奥平にとって、今回のように文化祭や修学旅行を“ちゃんと楽しむ側”のキャラクターを演じたのは新鮮だった。
「『やっとこっち側に来れたな』って素直に思いました(笑)。ちゃんと参加してみると、行事ってこんなに楽しいんだって、今回初めて実感しました」
奥平がとくに印象に残っているのは、5人全員がそろった登下校のシーンや教室でのひとコマだ。
「実は5人全員がそろう場面ってそんなに多くないんです。でも、登下校のシーンとか教室での何気ないやりとりみたいな、ああいう普通の時間が本当に楽しくて。“年相応のわちゃわちゃ感”がちゃんと映っていて、特に気に入ってるシーンです」
学園生活の彩りがたっぷり詰まった本作だが、奥平自身の高校生活はコロナ禍の真っただ中にあった。
「高校2年のときにちょうどコロナが始まって、学校行事が一番多い時期だったのに、ほとんど全部なくなってしまって。修学旅行も、本当はオーストラリアに行く予定だったんです。でも中止になって、友達とも遊びに行けず、家でゲームしたり。まあ、それはそれでいい思い出にはなってますけどね」
そんな背景があるからこそ、今回の作品で“もう一つの高校生活”を体験できたことは、奥平にとってかけがえのない経験になった。
映画『か「」く「」し「」ご「」と「』は、5月30日より全国公開。誰にも言えない“かくしごと”を胸に抱えながら、それでも誰かとつながりたいと願う5人の高校生たちの姿が、見る人の心にもそっと寄り添ってくれる。
□奥平大兼(おくだいら・だいけん) 2003年9月20日、東京都出身。『MOTHER マザー』(20年/監督:大森立嗣)でスクリーンデビューし、数々の映画賞で新人賞を受賞。近年の出演作に、『マイスモールランド』(22年/監督:川和田恵真)、『ヴィレッジ』(23年/監督:藤井道人)、『君は放課後インソムニア』(23年/監督:池田千尋)、『赤羽骨子のボディガード』(24年/監督:石川淳一)、『Cloud クラウド』(24年/監督:黒沢清)、TBS系連続ドラマ『御上先生』(25年)など。
