板谷由夏が明かす“夫婦円満”の秘訣 「家庭を営むって修行」も…「楽しむつもりで」

俳優・モデル・キャスターと多彩な道を歩む板谷由夏が東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで23日から出演していた朗読劇『したいとか、したくないとかの話じゃない2025』(新井友香演出)が25日に千秋楽を迎えた。セックスレスをきっかけに夫婦が人生を見つめ直す物語。自身は2児の母でもあり、今作からは人生後半をどう生きるべきかのヒントも受け取ったという。

インタビューに応じた板谷由夏【写真:増田美咲】
インタビューに応じた板谷由夏【写真:増田美咲】

朗読劇で、津田健次郎と熟年夫婦役

 俳優・モデル・キャスターと多彩な道を歩む板谷由夏が東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで23日から出演していた朗読劇『したいとか、したくないとかの話じゃない2025』(新井友香演出)が25日に千秋楽を迎えた。セックスレスをきっかけに夫婦が人生を見つめ直す物語。自身は2児の母でもあり、今作からは人生後半をどう生きるべきかのヒントも受け取ったという。(取材・文=大宮高史)

 作品は、足立紳氏の同名小説が原作で2023年4月に初演された。2年ぶりの再演となった今回は新たに板谷と俳優で声優の津田健次郎が熟年夫婦を演じ、足立氏と新井氏は脚本も担当した。ENCOUNTでは公演前に板谷への取材を行った。

 映画監督として一時はブレークしかけるも、その後鳴かず飛ばずの夫・孝志(津田)と妻で主婦の恭子(板谷)は、一人息子の太郎を育て、表向きは平穏ながらもセックスレスの夫婦。物語はコロナ禍の2020年春に始まる。若い頃に役者を経験し脚本家を夢見る恭子は、夫に内緒で応募したシナリオコンクールで優秀賞を受賞し、さらにドラマ化まで決定。そんな中、脚本の修正作業に追われる恭子のもとに、孝志から一通のLINEが届く。『今晩、久しぶりにしたいです。どうですか……?』。このメッセージをきっかけに、2人は夫婦のあり方や人生を見つめ直していく。

 板谷にとっては2度目の朗読劇となり、「脚本を書かれた足立さんのファンでもあったので、出演のお話を聞いた時『絶対楽しい作品になる!』と思いました」と素直な気持ちを明かす。昨年、前作で孝志を演じた俳優・山崎樹範と舞台共演しており、この作品のことも話題に。さらに「恭子役は同じ子を持つ身としてリアリティーがありすぎて、『うちの場合はどうだったかな……』という思いがよぎったりもしました」と打ち明けた。

――恭子のどのようなところに共感したのでしょうか。

「彼女は家庭に入り母としてしっかり生きていますが、何かをやってみたいという欲求が、家庭で務めを果たしていくうちに芽生えてくるんですね。私の周りでも子育てを終え、次にやりたいこと模索している女性がたくさんいます。そこは共感できました」

――恭子は孝志と結婚して俳優をやめてから、ひそかに脚本家を夢見ていました。板谷さんも、そんな夢を持ったことは。

「エンターテイメントを仕事にしている人なら、どんな職種でも『作品を残したい』という思いは持ち続けています。私も今は演者ではありますが、いつか機会があれば書いてみたいですね」

 2007年に結婚。同年に日本テレビ系情報番組『NEWS ZERO』のキャスターに就任し、18年9月まで11年に渡って務めた。その間、社会問題など自ら現場取材も経験し、人間的にも成長した。まさに公私ともに充実した時期となり、表現者として一皮むけた。

「『もっと社会に目を向けないと』と思った経験でした。結婚した直後に『NEWS ZERO』のお話をいただいて、子育てと並行して出演を続けつつ、世の中を知れました。俳優の仕事をしていても社会に何かを問うことはできるし、そんな作品に携わっていきたいと思います。今も、たくさんのエンタメ作品を見ています」

――ご自身は、結婚や育児を経て、モデルのデビューから30年近く芸能活動を続けてこられました。継続の秘けつを挙げるなら。

「人の縁に助けられてきました。ベースには私自身のエンタメに対する気持ちがありますが、やはり(作品ごとに)声をかけてもらわないと始まらないのが俳優業なので。家庭では夫と一緒に子育てができたから、お互いに『助け合い』という感覚が強くなってきました。よく夫婦って『価値観が合うのが大事』と言われますが、振り返ってみると『本当にそう?』って思います。今でも分かり合えているかどうか(苦笑)。でも考え方の違いを認めた上で、そのすれ違いを埋めようと夫婦ともに努力しているから、一緒にいられたのだと思います」

――夫婦は、歩み寄る姿勢が大切と。

「いつまでも若い新婚カップルの気分ではいられませんから(笑)。家庭を営むって、いいことも悪いことも含めて、修行です。肉体的にも精神的にもこの修行を楽しむつもりでないと、おそらく家族の仲がよくても途中でめげる時が来ると思います」

津田健次郎が熟年夫婦を演じた板谷由夏【写真:増田美咲】
津田健次郎が熟年夫婦を演じた板谷由夏【写真:増田美咲】

女性の精神的強さを実感「自分が人生の主役でいたい」

――今作では「母、妻として務めを果たしてきた女性の自立」もテーマになるかと思います。ご自身の経験から思うことは。

「もともと女性って、強いんです。私も50代が近いですが、そんな年代でも、皆『これから何しようかな』と人生のネクストステージを考えているほどエネルギッシュです。家庭を持っても夢を持てるって、精神的にはとっくに自立しているといえます。ただ、やりたいことを実行するまでのプロセスが大変ですよね」

――日々の生活もあり、簡単ではないということですね。それでも本作をきっかけに知ってほしいことを挙げるとしたら。

「世の中には恭子のように『自分が人生の主役でいたい』とひそかに思っている女性が多くいることに気づいてほしいです。『人生、楽しくないと』が私の信条なんですが、少しでも笑顔で日常を送れる女性が増えるようにと思っています。皆生きるのに必死な時代ですが、恭子のように一念発起するだけでも見える景色が変わるのかなって思います。そこから家族が本気で向き合えば、毎日が好転するきっかけになると信じています」

板谷由夏は2度目の朗読劇となった【写真:増田美咲】
板谷由夏は2度目の朗読劇となった【写真:増田美咲】

――では、最後に今作で俳優として新たに感じたことはありますか。

「2度目の朗読劇でもあり、津田さん、新井さんとも、稽古からキャッチボールを楽しんで作りました。実は私は一つの場所にとどまっていたくない性格なんですが、作品が変わるとまた新しい出会いが生まれるので、私なりにやりがいを感じます。今回もそうですね。今後も続けられる限り、表現に携わっていきたいと思います」

□板谷由夏(いたや・ゆか) 1975年6月22日生まれ。福岡県出身。99年に映画『avec mon mari』で俳優デビュー。その後は俳優業と並行し、2007年から18年まで日本テレビ系『NEWS ZERO』でキャスターを務める。近年は23年に日本テレビ系『ブラックファミリア~新堂家の復讐~』で連続ドラマ初主演を果たしたほか、24年にNHK大河ドラマ『光る君へ』、25年にテレビ朝日系連続ドラマ『いつか、ヒーロー』など、数多くの映像作品に出演している。

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