中居正広氏「再反論」文書の“迷走” 筋違いの主張を元テレ朝法務部長が分析「自分でまいたタネ」
フジテレビ問題に関する第三者委員会(以下、第三者委)の調査報告書をめぐって「場外乱闘」が止まらない。性暴力を認定された元タレント・中居正広氏が今月12日、代理人弁護士を通じて第三者委を批判し証拠開示などを求める文書を送ると、第三者委は22日、「事実認定は適切だった」として要求を全面拒否。これに対し、中居氏側は翌23日、「到底承服できない」という再反論の文書を出した。この展開に元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、「議論が『迷走』を始めているのではないか」と指摘した。

西脇亨輔弁護士「第三者委の内部資料は裁判をしても入手できない可能性が高い」
フジテレビ問題に関する第三者委員会(以下、第三者委)の調査報告書をめぐって「場外乱闘」が止まらない。性暴力を認定された元タレント・中居正広氏が今月12日、代理人弁護士を通じて第三者委を批判し証拠開示などを求める文書を送ると、第三者委は22日、「事実認定は適切だった」として要求を全面拒否。これに対し、中居氏側は翌23日、「到底承服できない」という再反論の文書を出した。この展開に元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、「議論が『迷走』を始めているのではないか」と指摘した。
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「場当たり的」。中居氏側から第三者委への新反論文を読んで、そんな言葉が浮かんだ。
今回、中居氏側は「少なくとも、貴委員会のヒアリングにおける、中居氏の音声データその他関係する反訳書等については、本人に開示できるはずです」として、第三者委に音声データ等の開示を求めた。だが、今月12日に送った最初の文書では第三者委に対し、全ての証人について「一切のヒアリング記録」などを開示しろと要求したはず。それが10日余りでなぜ、「自分のヒアリング資料」だけに減ったのか。最初の要求は「ふっかけた」ものだったのか。突然の変更の理由は今回の文書には書かれていない。また、音声データを要求する理由についても「開示できるはず」とだけ書かれていて、守秘義務や調査資料の処分権などを主張して中居氏側の要求を拒否した第三者委に対する法的な反論はなかった。
そもそも中居氏が今回、自分の音声データを第三者委に要求することになった背景には「自分でまいたタネ」という側面もあると思う。中居氏自身がヒアリングの前に、「自分も録音していいという条件ならヒアリングに出席する」と第三者委に要求していれば、こうした事態にはならなかったはずだからだ。それを今になって「第三者委の内部資料を出せ」と言っても、調査過程の全体について秘密保持義務を負う第三者委は応じないだろう。この先、裁判になったとしても、調査資料は「第三者委が内部で利用する文書」だとして裁判所は提出を命じず、中居氏は入手できない可能性が高いと思う。
また、中居氏が「自分はヒアリングで約6時間しゃべったのに報告書に反映されていない」と不満を述べている点についても「自分でまいたタネ」に思える。第三者委によれば、問題の事案について守秘義務を解除しないと最終的に決断したのは中居氏。そのせいで女性がヒアリングに答えられなくなり、中居氏の話だけを報告書に載せると「不公平」になってしまうので、中居氏の発言が報告書に反映されないことになったと考えられるからだ。
さらに第三者委は、中居氏側から次のような連絡が今年2月に入っていたことも明かしている。
「貴調査委員会が『一昨年になされた女性Aの申出(申告)に対するCX(フジテレビ)の対応の是非』について調査する上では、『一昨年に女性AがCXに申告した内容』が再現できればそれ以上に説明の必要はないのではないかと考えます。守秘義務の全面的な解除まではする必要はないのではないでしょうか」
「王道」の対応は記者会見か文書での説明
これは中居氏側がヒアリングでの守秘義務解除を拒否し、「問題の事案については、中居氏や女性のヒアリングではなく、『女性がフジテレビに申告した内容』をもとに認定してもらって構わない」という意向を示したものではないのか。だとしたら、中居氏のヒアリングが第三者委の認定に反映されないのも「自分でまいたタネ」だ。それを今になって「自分のヒアリングが反映されていないのはおかしい」と批判するのは筋が違うのではないか。
思えば中居氏をめぐっては、今年1月に「示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」と声明を出した。そして、批判を受けるなど、「場当たり的」と思える対応が多くみられた。新しい弁護士のもとで始めた今回の第三者委への反論が大きな展望をもっているのかは分からない。しかし、中居氏が「自分の認識を広く知って欲しい」という目的で動いているのなら、その行動の相手は「第三者委員会」ではないのではないか。まずは女性側と向き合い、守秘義務について話し合った上で、記者会見や文書などの方法でできる限りの説明をする。それが「王道」の対応ではないかと私は考えている。
□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ) 1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。昨年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。
